1902年、ドイツのギンゲンという町で、世界で初めて、手足が動き、首が回る、高価なモヘアで作られた、くまのぬいぐるみが誕生しました。ただ、当初ヨーロッパでは見向きもされず、この試みは失敗したと思われていました。


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ドイツからアメリカへ

しかし、ちょうどその頃、アメリカでは、
テディベアへの関心が高まっており、

1903年に、
ライプチヒで行われた見本市では、

アメリカ人バイヤーの目に止まり、
3000体がアメリカに輸出。

シュタイフ社のくまのぬいぐるみは、
アメリカで大ブレイクしたのでした。

それ以来、110年の歴史を持つ、
テディベアの老舗メーカー「シュタイフ社」とは、
どんな会社なのでしょうか?

ご紹介しましょう!

創始者はマルガレーテ・シュタイフ

さて、この会社を興したのは、
マルガレーテ・シュタイフという人で、

子どもの頃、小児マヒを患い、
一生を車いすで過ごした女性です。

もともと負けず嫌いだった彼女は、
小児マヒというハンデがありながら、

洋裁学校に通い、
針仕事をマスターするまでになります。

そして、地元ギンゲンで、
ミシンを姉と共同で購入。

右手が不自由だったマルガレーテは、
最初は、うまくミシンを扱うことができませんでしたが、

ミシンを逆さにすることを思いつき、
自由の利く左手で操作できるようになると、
裁縫の腕をどんどん磨いていき、

1880年、30歳の時、

将来、娘が自立できるようにという、
両親の取り計らいと、家族に支えられ、

フェルト製のペチコートや洋服を販売する、
フェルト専門店「フェルト・メールオーダー・カンパニー」
を設立したのでした。

ゾウの針刺しでブレイク

そんなある日、マルガレーテは、
雑誌に載っていたゾウのイラストをヒントに、
フェルトでゾウの針刺しを作ります。

これを試しに売ってみたところ、
かわいいと評判になり、

その年のクリスマスには、
店に行列ができるほど売れたのでした。

そして、翌年のクリスマスも売れるのではないかと、
弟の助言を受けたマルガレーテは、

次のクリスマスに向けて、
あらかじめ多くのゾウを作っておきます。

当時は、注文を受けてから制作する、
注文生産が主流でしたが、
見込み生産を試してみたのです。

すると、翌年のクリスマスも、
ゾウは飛ぶように売れたのでした!

世界で初のぬいぐるみ専門店へ

マルガレーテは、1882年には、
ゾウ以外にも、ブタやウマ、ラクダなどのぬいぐるみを作り、

1885年には、ぬいぐるみの総生産量は、
5000体を超えるほど、事業を拡大します。

そして、1893年には、
おもちゃ部門「フェルト・トイ・カンパニー」を、
設立するまでになったのでした。

画期的なくまのぬいぐるみを開発

その後も、マルガレーテは、
弟達や甥達と共に、
会社を大きくしていき、

1902年には、甥のリチャードが、
現在のテディベアの原型となる、

手足が動き、首が回る、
ふかふかのモヘアを使った、
くまのぬいぐるみを開発します。

35PB

そして、1903年、
ライプチヒで行われた見本市で、
このくまのぬいぐるみを発表するのですが、

「高価すぎる」
「デザインが悪い」

など、評価は散々な結果に。

しかし、見本市の最終日に、
ニューヨークのバイヤー、
ハーマン・バーグの目に留まり、
その場で3000体が注文されたのです!

バーグによると、

ヨーロッパでは受け入れられなくても、
こういったクマのぬいぐるみこそ、
アメリカの子ども達が抱いて眠りたいものなのだ。

とのこと。

そして、バーグの言ったとおり、
シュタイフのくまのぬいぐるみは、

アメリカでのテディベアブームに乗り、
大旋風を巻き起こしたのでした。

黄金時代

そして、シュタイフ社は、
1903年から1908年の間に、

3度も工場を拡大しなければならないほど、
売上は順調に伸び、

この時期のテディべアの生産数は、
なんと、97万5千体だったとのこと!

(1906年に、社名を、
有限会社マルガレーテ・シュタイフ社に変更)

この記録は、未だに、どこのメーカーにも、
破られていないのだそうです。

その後、シュタイフ社は、
さらに、世界にテディベア市場を拡大。

パリやニューヨークにショールームを設置し、
世界各国に代理店を置くようになったのでした。

大打撃

こうして、世界的に有名になった、
シュタイフ社でしたが、

第一次世界大戦と第二次世界大戦の、
戦中戦後は、材料不足に苦しみます。

1950年代に入り、ようやく、
本来の品質の良さを取り戻しますが、

1970年代に入ると、欧米の出生率の低下や、
東アジアからの安い輸入品との競争などから、
大打撃を受けてしまうのでした。

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コレクターズベア!

しかし、1980年代になると、
アメリカでテディベアブームが再来。

シュタイフ社は、
初期の頃のテディベアのレプリカを、

限定で製造し始め、
新たな市場を開拓したのでした。

さて、現在、シュタイフ社は、
8割がぬいぐるみ(くま以外の動物)、
2割がテディベアの製造ということで、

テディベアの老舗メーカーとしては、
ちょっと意外ですが、

100年以上も会社が存続していること自体が、
素晴らしいですね!

今日も、シュタイフ社のくまたちは、
テディベアブランドとしての誇りを胸に、
世界中へと旅立っています♪

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