2005年には、シェイクスピアの戯曲「十二夜」を歌舞伎化した「NINAGAWA十二夜」、2019年には、長編漫画「風の谷のナウシカ」を歌舞伎化し、好評を博した、五代目尾上菊之助(ごだいめ おのえ きくのすけ)さんは、2023年には、世界的に大ヒットしたゲーム「ファイナルファンタジーX」も新作歌舞伎として上演すると、歌舞伎ファンのみならず、ゲームファンからも好評を博しています。
「尾上菊之助(5代目)の若い頃は「平成の三之助」と呼ばれ人気を博していた!」からの続き
「ファイナルファンタジーX」を新作歌舞伎として企画したのはコロナ禍がきっかけだった
菊之助さんは、2023年には、ゲーム「ファイナルファンタジーX」を新作歌舞伎として企画・演出を担い、主人公・ティーダ役で出演しているのですが、
発案は、コロナ禍がきっかけだったそうで、
歌舞伎の公演が中止になり、ステイホームを余儀なくされました。その時にゲームをする機会がありまして。もともとゲームが好きだったんですが、仕事が忙しくなるにつれてゲームからは離れていました。
改めて「ゲームをやろう」と思った時に最も心に残っていた作品として浮かび上がったのが、『ファイナルファンタジーX』だったのです。映像の美しさに抱いた感動やゲームのキャラクターの心情に共感した記憶がよみがえりました。
世界を破壊し続ける「シン」という強大な敵に立ち向かうヒロインの「ユウナ」の元に共に戦う仲間が集まるんですが、最初は皆の気持ちがバラバラです。
それがストーリーが進むにつれて各自が抱えていた葛藤を乗り越えて、互いに心を通わせていく。そして新しい価値観を共有してシンに挑みます。
コロナ禍で落ち込んでいたのですが、前向きで決して諦めないキャラクターたちの姿に励まされました。このゲームを歌舞伎にすれば、コロナ禍で同じように落ち込んでいる人々を元気づける作品に必ずなる。そう考えました。
と、コロナ禍で「自分だからこそできることは何か」を考える中で、今まで様々な新作歌舞伎をつくってきた経験とFFX(「ファイナルファンタジーX」)が繋がり、新作歌舞伎をつくろうと考えたのだそうです。
「ファイナルファンタジーX」より。ティーダに扮する菊之助さん(左)とシーモアに扮する尾上松也(右)さん。
(物語は8幕構成、公演時間は途中の休憩を挟んで前後編合わせて約7時間という超大作で、出演者も、菊之助さんのほか、中村獅童さん、尾上松也さん、坂東彌十郎さんなど、錚々(そうそう)たる顔ぶれです)
新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」はゲームファン・歌舞伎ファン共に好評を博していた
こうして、菊之助さんは、すぐに権利元のスクウェア・エニックスにビデオレターと企画書を送り、新作歌舞伎の実現へと至ったそうですが、
3月4日から4月12日まで上演されると、ゲームと歌舞伎の融合は世界初の試みだったため、当初は、ファンタジーの世界観に歌舞伎との相性を心配する声もあったそうですが、ゲームファンからも歌舞伎ファンからも好評を博し、無事に千穐楽(せんしゅうらく)を迎えています。
(歌舞伎では、千秋楽のことを「千穐楽」と書くそうです)
「風の谷のナウシカ」「ファイナルファンタジーX」の歌舞伎化は新規客層を獲得し歌舞伎界からも一目置かれていた
ちなみに、某歌舞伎関係者は、
2019年には、ジブリの名作映画『風の谷のナウシカ』を歌舞伎化。伝統芸能である歌舞伎の演目では、主人公・ナウシカのように“自立した女性像”が描かれることが少ない中で、ナウシカの内に秘めた強さを描き評価されました。
新規客層を獲得できる菊之助の仕事ぶりは、歌舞伎界からも一目置かれています
と、語っています。
(「ファイナルファンタジーX」は、2001年に発売されると、続編を含め、世界累計出荷・DL販売本数2110万本以上(2022年3月末時点)と、シリーズ屈指の人気作で、国内外の多くのゲーム愛好家を虜にしています)
「尾上菊之助(5代目)の出演舞台ドラマ映画を画像で!」に続く