「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」「宇宙海賊キャプテンハーロック」などのアニメを世に送り出し一世を風靡した、漫画家の松本零士(まつもと れいじ)さん。海外、特にフランスでの人気が高く、2012年には、フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章されています。
そんな松本さんが、「盗作」を巡り、
歌手の槇原敬之さんと裁判で争われていますので、
詳しく調べてみました!
盗作疑惑
ことの発端は、2006年10月、
槇原さんが、ユニット「CHEMISTRY」に提供した、
ヒットソング「約束の場所」の歌詞の一部が、
松本さんが、「銀河鉄道999」の中で書いたセリフと、
とてもよく似ていることから、
松本さんが槇原さんに電話をかけて
確認を求めたことから始まります。
問題となったのは、
松本さんのセリフ、
「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」
槇原さんの歌詞、
「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」
の部分で、
松本さんは、槇原さんに、
2度、電話をかけて話しをされると、
最初は、盗作を否定された槇原さんでしたが、
2度目の電話では、
「どこかで聞いたものが、記憶に残っていたのかもしれない」
と、曖昧な返事に変わったそうで、
この時、槇原さんが謝罪されたそうですが、
松本さんが文書で謝罪をしてほしいと言うと、
「できない」とおっしゃったのだそうです。
収束?
その後、松本さんは、
カッとなったのか、メディアで、
「槇原さんが盗作した」
と非難したり、
「槇原さんが電話で盗作を認めて謝罪した」
と、発言。
ただ、この時、松本さんは、著作権侵害をめぐる訴訟や、
CM曲の差し止めなどを求めるつもりはなく、
詞の出典を明らかにしてほしかっただけとのことで、
最終的には、
もともと著作権を争うつもりはなく(歌詞は)
私の作品のセリフだと主張したかった。
これで終わりにしたい。
と、おっしゃると、
槇原さんも、盗作ではないと主張しながらも、
自分からは法廷闘争に持ち込まないと、
おっしゃったのでした。
納得できなかった槇原敬之
しかし、2006年11月、槇原さんが、
突然、自身のホームページに、
「銀河鉄道999」については、私は、
個人的な好みから、一度も読んだことがありません。
今回私が創作した歌詞は全くのオリジナル。松本氏が本当に盗作だとお考えならば、
メディアを使って騒ぎ立てるのではなく、
正々堂々と、裁判で決着していただきたい。
さもなければ、公式な謝罪を頂きたい。今回松本氏が、思い込みにより、一方的に、
槇原が盗作をしたとの主張を始められたにも拘らず、
何の謝罪もなく今回の騒動をまたもや、
一方的に収束なさるおつもりであるのならば、
同氏のそうした態度は大変に不快です。松本氏の一連の態度によって、
盗作者であるとの汚名を着せられたまま、
事態がうやむやになる危険性があると判断しましたので、
今日コメントを発表するに至りました。
と、自分から裁判を起こすつもりはないが、
松本さんの方から、正式に謝罪するか、
文句があるなら裁判を起こすように、
コメントされたのでした。
すると、松本さんは、これに対して、
「どっちが謝らないといけないのか分かっていない」
と、反発し、
「裁判で争う気は毛頭ないが、提訴されたら受けてたつ」
と、ちょっと、
的はずれなコメントを出されます。
そして、松本さんは、
翌年の2007年1月になると、
「放っておいても大丈夫。法的措置?何も考えていない」
と態度を軟化させるのですが・・・
法廷へ
結局、謝罪もされず、
裁判も起こさない松本さんに、
業を煮やした槇原さんは、
2007年3月、盗作した証拠の提出を求める、
「著作権侵害不存在確認等請求」の訴えを、
東京地裁に提起。
さらに、証拠が提示されなかった場合、
仕事上のダメージを受けたとして、
2200万円の損害賠償を求められたのでした。
(名誉を傷つけられたとする訴え)
ちなみに、槇原さんは、
シンガーソングライターにとって最も屈辱的な、
「盗作者」とされたまま、活動を続けるのに納得できなかった。
と、訴えを起こした理由を、
明かされています。
松本零士敗れる
そして、2008年12月、
東京地裁は、
「松本さんの表現に頼って歌詞を作成したとは認められない」
としたうえで、
松本さんがテレビ番組で、
「槇原さんが電話で盗作を認めて謝罪した」
などと話した内容は真実ではないと、名誉毀損を認め、
松本さんに220万円の支払いを命じたのでした。
(ただし、「著作権侵害ではないことの確認」については、
松本さんが損害賠償請求権を放棄したため、棄却されており、
この判決では、著作権侵害がなかったことが確認されたと、
言えるわけではないそうです)
曖昧な点
こうして、松本さんは敗訴してしまったのですが、
曖昧な点をもう少し詳しく調べてみると、
まず、当初、槇原さんが電話で、
「どこかで聞いたものが、記憶に残っていたのかもしれない」
と、謝罪されたのは、
漫画の表現を知らなかったことを謝罪されたもので、
盗作を謝罪されたものではないとのこと、
また、松本さんが、テレビ番組で、
「槇原さんが電話で盗作を認めて謝罪した」
と、発言したことに対して、
名誉毀損が成立したようですが、
松本さんが盗作を指摘したことが、
名誉毀損と判断されたのかどうかは、
報道内容だけでは、はっきりと分かりませんでした。
さて、いかがでしたでしょうか?
2002年には、松本さん原作のTVアニメ
「SPACE PIRATE CAPTAIN HERLOCK」が、
放送されているのですが、
「SPACE PIRATE CAPTAIN HERLOCK」
ユダヤ民族を象徴する「ダビデの星」のデザインを、
敵役の強烈兵器に使用しているシーンには、
激しく抗議し、放送を中止させた松本さん。
このように、松本さんは、第三者によって、
ご自分の創作が意図に反した使われ方をすることには、
厳しい面をお持ちなのですが、
ご自身に対する敬意があり、
無断で使うのでなければ、
他の漫画家、ミュージックビデオ、広告などで、
ご自身のキャラクターが使われることに、とても寛容で、
笑いのネタになるような、パロディ的な引用なども、
快く承諾されるのだそうです。
今回の騒動の背景となったのも、
そんな松本さんの意に反する出来事だったようで、
松本さんと親しい芸能プロダクションの社長は、
松本先生は正義感が強く、喧嘩っ早いところがある。
松本先生の周辺には色んな人がいて
「盗作ではないか」と進言したようだ。それで「俺が作ったフレーズだ!」
とカッとなったのが始まり。賠償金とか欲しいはずはないし、
槇原さん側が「心のどこかにフレーズがあったかなぁ。ゴメン」
で、全てが終わっていたはず。「999のファンです」とでも言おうものなら凄く喜んだはず。
ただ、(槇原さん側の)事務所の対応がまずかった。「銀河鉄道というタイトル・・・※」この発言でややこしくなって、
女性週刊誌などが書いて話が大きくなった。※槇原さんの当時の所属事務所、東芝EMIが、
「そこまで盗作呼ばわりされたら、先生の「銀河鉄道」という、
タイトル自体、先人(宮沢賢治)が作った言葉ではないのか
と言いたくなる」と発言したこと。
と、語っておられます。
少し対応を変えていれば、
仲良くなったかもしれないお二人。
その方が、槇原さんも、
世間に好印象を与えたかもしれないのに・・・
分野は違えど、自分の創作に、
強い愛着とプライドを持つクリエイター同士。
なかなか、そうはいかないのかもしれませんね~