「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」ほか数々の名作アニメを世に送り出し、日本のみならず、海外でも高い人気を誇る、宮崎駿(みやざき はやお)さんですが、今回は、今話題沸騰中の「鬼滅の刃」が、日本歴代興行収入第1位を誇る、宮崎さんの監督作品「千と千尋の神隠し」の興行収入に迫る勢いであることについて、宮崎さんがどう考えておられるかご紹介します。
「鬼滅の刃」が「千の千尋の神隠し」の興行収入を抜くのは確実?
今話題沸騰中の、劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」(2020年)ですが、公開からわずか24日で、興行収入が204億円を突破するという快進撃を続けており、
このままの勢いが続けば、日本歴代興行収入第1位である、2001年公開の宮崎さんの監督作品「千と千尋の神隠し」の興行収入308億円超えは確実であると、「週刊FLASH」(2020年11月24日号)が報じました。
「鬼滅の刃」に対する宮崎駿のコメント
そこで、「週刊FLASH」の記者が、宮崎さんに胸中を聞こうと、11月初旬の早朝、自宅周辺のゴミ拾いをしようと自宅から出てきた宮崎さんに(宮崎さんは自宅周辺のゴミ拾いを日課にされています)、
「鬼滅の刃」の興収が「千と千尋の神隠し」に迫っています。どう見ていますか?
と、直撃取材すると、
宮崎さんは、
まあ、僕には関係ないことだと思います。興行成績がどうのこうのということには、あまり関係しないほうが、現場は平和でいいんです。一生懸命作っていりゃあいいんで
と、答えられたそうで、
さらに、記者が、
「鬼滅の刃」はご覧になりましたか?
と、問いかけると、
宮崎さんは、
観ません。ほとんど観てないんです、ほかのものを。テレビも観ないし、映画も観てない。ゴミ拾いをやっている引退じじいです
と、答えられたのですが、
それでも、記者がしつこく、
「千と千尋の神隠」が歴代1位でなくなることを残念がるファンもいます。
と、続けると、
宮崎さんは、
そんなことは、どうでもいいよ。世界はいつもインフレになっているんですから。(それよりも)ゴミを拾わないと……
と、語気を強められたのだそうです。
やはり「鬼滅の刃」は意識している?
ちなみに、アニメ研究家の津堅信之さんは、
「僕には関係ない」と答えたのは本音でしょう。でも同時に、現況を無視するのは難しいのでは
じつは、1986年の「天空の城ラピュタ」や1988年の「となりのトトロ」は興行成績が振るわず、宮崎監督は苦労しました。だから、今でも数字は気になるはずです
「千と千尋の神隠し」が公開されたのは、全国にシネコンができて、劇場の数がどっと増えた時代でした。そして「鬼滅の刃」が公開されている今は、コロナ禍で上映できる新作がなく、空いている劇場が多い状況です。
つまり、両作品とも公開時にたまたま劇場が新作映画に “飢えていた” ため、多くの劇場で上映できた、という共通点があるんです。
でも、「鬼滅の刃」は漫画を原作としており、原作かテレビアニメ版を見ていないと、100%映画を楽しめるようにはできていません。一方「千と千尋の神隠し」は、劇場に行けば誰もが楽しめるオリジナルアニメです。
映画人としては、劇場だけで勝負するジブリ作品が負けてしまうのは、悔しいはずです。宮崎監督も、同じ気持ちではないでしょうか
映画評論家の前田有一さんも、
日本では、アニメ映画は原作よりも製作会社のブランドが重視される傾向が強いんです。これまでも「スタジオジブリ」や「ディズニー・スタジオ」が製作した作品を、「それなら間違いない」と思って観てきた人は多いでしょう。
じつは、「鬼滅の刃」を製作した「ufotable」という製作スタジオも、超人気アニメ「Fate」シリーズを手がけるなど、ファンのあいだではすでに “ブランド化” している存在です。とはいえ、宮崎監督も、まさか「千と千尋の神隠し」の記録を抜かれるとは思っていなかったでしょう
と、語っており、お二方とも、宮崎さんが「鬼滅の刃」を意識しているのは間違いないと語っておられます。
現在は「君たちはどう生きるか」を制作中
さて、前述の取材ですが、最後に記者が、
今は(2017年に製作を発表した)「君たちはどう生きるか」を製作されているようですが、作業は順調ですか?
と、問いかけると、
宮崎さんは、
やっています。僕は引退したまま、やっているんですよ。それについては、東宝を通じて聞いてみてください。僕は全体のことは把握していませんから。ゴミ拾いで回らなくちゃいけないので、これで……
と、力強く答えられたそうで、
記事は、
そう話す宮崎氏の眼光は、“鬼” 気迫る、闘志を感じさせるものだった。
と、無理矢理、「鬼滅の刃」の“鬼”にかけて、締めくくられていました(笑)
ゴミ拾いに精を出す宮崎さん。