憧れのヤクザ「池の二郎」の実弟と親友だったことから、銀座を出禁になり、銀座三悪のヒーコヤ(=コーヒー屋=喫茶店)の一つである「ダイヤモンド」の取り仕切りもクビになったなべおさみさんは、今度は、渋谷に新天地を見出そうとするのですが・・・安藤組の大幹部・花形敬と出会い、人生が一変することになります。

「なべおさみは高校生の時ヤクザ「池の二郎」に銀座を出禁にされていた!」からの続き

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銀座を出禁になった後は渋谷に新天地を見出そうとしていた

銀座を出禁となったなべさんは、しばらくは、行き慣れたジャズ喫茶「テネシー」に通っていたそうですが、血気盛んだったことから、燃えたぎる血を抑えることができず、やがては、新天地を求め、渋谷を目指したそうで、

小柄だったなべさんは、パッと見ではナメてかかられるため、これを逆手にとって、一度、大ゲンカをして自分の強さを見せつけたらナメられないだろうと、

スクランブル交差点の角地にあった麻雀店に乱入し、そこにたむろする高校生くらいの不良少年グループに目をつけると、わざわざヤジを飛ばしてケンカを売ったそうです。

刃傷沙汰になりそうになるも・・・

すると、その時、すっと二人の男が声もなく近寄ってきたそうで、

(その静かな気配には、有無を言わさぬ圧力があり、半端な男たちではないと直感したそうです)

映画館「渋谷キャピタル座」の裏に連れて行かれると、もう一人、別の男が割って入ってきて、電灯が一つもなく月明かりだけの中、その男の合図でケンカをすることに。

そして、なべさんとその相手は、お互い歩を取って向き合い、短刀を構えたそうですが・・・

もし此処で、刺されたとしたらどうだろう。刺したとしたらどうなるだろう。どんな騒ぎになるだろう。親が警察に呼ばれるだろうな。学校はどうなるのかな

という考えが脳裏によぎり、動けなくなってしまったのだそうです。

「安藤組」幹部の花形敬に刃傷沙汰を止めてもらっていた

また、相手も、そんななべさんと同じことを考えているのか、こちらを見たまま動かない状態で、しばらく、お互い固まっていたそうですが・・・

突然、

それまで!

と、言う声が聞こえると、

なべさんの右手の短刀があっという間の素早さで取り上げられていたそうで、

なべさんは、著書「やくざと芸能と 私の愛した日本人」で、その時のことを、

気がつくと、首領の前に立たされていた。一気に月光が、その大男を照らした。その時、はっきり私は男の目を見たのだ。細い目の奥から鋭い光が放たれてきた。それが眼光だと理解出来て、足下から凍り付いた。

と、綴られています。

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「安藤組」幹部の花形敬にも大学進学を勧められていた

すると、なべさんは、その人から、

お前、ヤッパで斬ったら、事件になっちゃうな・・・って思ったろ?

もし相手を傷つけたら、父親が警察へ呼ばれ、家族にも迷惑を掛けちゃうなって・・・そう思ったろ?

学校は、首になっちゃうかなって、そう思ったよな!

と、矢継ぎ早に尋ねられたそうで、

どれも図星だったことから、返事をすることも、コクリとうなずくこともできずにいると、

その人は、続けて、

おれ達の稼業に入って来る男はな、そんな事が浮かんじゃこない奴ばかりなんだ。お前等、育ちが良いんだよ。いいか、おまえ達、上の学校へ行け!

と、言ったのだそうです。

そして、

遊びたくなったら、渋谷へ来い。お前等の性格じゃ揉めることもあるだろう。そうしたら俺の名前出していいよ。俺はな、安藤組の花形って言うんだ

いいか、学生!大学行くんだぞ!

と、言い残し、後ろ姿を見せて消えたそうで、

なべさんは、この言葉で、「ヤクザ」ではなく、幼い頃に憧れた「ヤクシャ」を目指そうと決心されたのだそうです。

(ちなみに、この花形と名乗った人物は、渋谷を牛耳る「安藤組」の大幹部で、「安藤組」組長の安藤昇さんに最も信頼された花形敬さんだったそうですが、奇しくも、先般、なべさんに大学進学を勧めた「池の二郎」(直井二郎)さんも、この花形敬さんも、共に明治大学の出身だったそうです)

「なべおさみは大学時代に放送作家としてデビューしていた!」に続く

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