居候先の家の主人に鶏の世話を命じられると、やがて、鶏にたくさん餌をやっては卵を生ませ、内緒でその卵を売りさばき、稼いだお金をお母さんのために貯金をしていたという、愛川欽也(あいかわ きんや)さんですが、ある予期せぬ出来事からバレてしまうことに。ただ、これを契機に、安宿をやっていた友達の親に頼み、一番安い部屋を貸してもらうことになったといいます。

「愛川欽也が終戦後に居候していた部屋は激臭だった!」からの続き

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鶏泥棒を追いかけるも・・・

ある夜更けのこと、愛川さんは、鶏の鳴き声で目が覚めたそうで、そっと裏の戸を開けて鶏小屋に向かうと、大きな男が、両手の指の間に鶏の羽を一枚ずつ挟み、10羽以上の鶏をぶら下げて飛び出してきたそうで、男は愛川さんを見ると一気に走って逃げたそうです。

そこで、愛川さんが、(恐ろしさのあまり、声は出なかったそうですが)無我夢中で男を追うと、途中、男は、1羽、2羽と鶏を落としつつ、雄物川(おものがわ)の土手に登ったことから、愛川さんも男を追いかけて登ると、

男は立ち止まり、急に仁王立ちになって、愛川さんを睨みつけ、

ばかやろう、このガキん子、おめえ、殺すぞ

と、言って、手の中に残っていた数羽の鶏を、数日前の大雨で水かさが増して濁った雄物川に投げ入れたそうで、

鶏はバタバタと羽を羽ばたかせながら落ち、川の流れにもがきながら川下に消えていったそうですが、愛川さんが振り返ると、男はもういなかったそうです。

卵を売っていたことがバレてますます肩身の狭い思いをすることに

そして、夜が明けると、おじさんからは、

きちんと戸を閉めていなかったんだろう。聞いたぞ。お前卵盗んで、どこかに売って歩いているそうじゃないか。今から泥棒続けりゃ、今に立派な大泥棒になれるぞ

と、言われたそうで、

愛川さんは何も言えず下を向くことしかできなかったそうです。

(お母さんはオロオロするだけで愛川さんには何も聞かず、愛川さんは、貯金していたお金をお母さんに渡すこともできなかったそうです)

宿屋を営んでいる友達の親から部屋を借りることに成功する

こうして、自らの不注意で鶏を失い、お母さんのためとはいえ、卵を売っていることがバレ、ますます肩身の狭い思いをすることになった愛川さんですが、

学校の成績は優秀だったため、時折、友達の親に頼まれて勉強を教えており、その中の一人に、「松屋」という安宿をやっている家の子がいたことから、その子の親に、一番安い部屋を貸してもらえないかと頼むと、

その子の親は、都会から来た小学生(11歳)である愛川さんのきちんとした話し方に感心し、また、自分の子が勉強を教えてもらうのに便利だと考えたのか、部屋を貸してくれることになったそうで、

愛川さんは、生まれて初めて、お母さんと二人だけの住まいを探したことが誇らしく、得意気になって、お母さんに報告したそうですが、お母さんは、眼に涙を浮かべながら喜んでくれたのだそうです。

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ようやく親子水入らずの生活を手に入れる

そこで、早速、愛川さんは、貸してくれることになった部屋を、お母さんと一緒に見に行くと、その部屋は、もともとは布団部屋として使われていたことから、窓がなく、日が当たらず、暗くて酸っぱい匂いがしたそうですが、それでも、お母さんは、嬉しそうに、「明日、引っ越そう」と言ってくれたそうで、

(とにかく部屋代が安ければいいとお願いしていたそうです)

翌日には、リヤカーを借りて、いくつかの行李と大切な着物が入った長持ち、家財道具、布団、枕を積んで、この部屋に引っ越し、ようやく、貧しくとも、二人だけの生活をすることができたのだそうです。

(お母さんは、貧しい中でも、安いお米を手に入れ、小さな鍋で二人分のご飯を炊いてくれるなど、決して愛川さんにひもじい思いをさせなかったそうです)

「愛川欽也の高校入学当初は成績優秀で弁護士になろうと思っていた!」に続く

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