作詞した、新人歌手・水原弘さんのデビュー曲「黒い花びら」がミリオンセラーとなった、永六輔(えい ろくすけ)さんですが、実は、この「黒い花びら」、当初はB面扱いで、しかも、一旦、お蔵入りになっていたといいます。

「永六輔が若い頃は水原弘に作詞した「黒い花びら」がミリオンセラーになっていた!」からの続き

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「黒い花びら」は「ネリカン・ブルース」のB面で発売予定もお蔵入りとなっていた

実は、水原弘さんのデビュー曲「黒い花びら」は、同じプロダクションの先輩歌手・山下敬二郎さんの「ネリカン・ブルース」のB面で発売される予定だったそうですが、

(当時、新人歌手の楽曲は先輩歌手のB面として発売されるのが一般的だったそうです)

山下さんの「ネリカン・ブルース」の歌詞が公序良俗に反すると問題視されて、レコード製作基準管理委員会から発売禁止の処分を受けてしまい、一度、お蔵入りとなっていたのだそうです。

「ネリカン・ブルース(練鑑ブルース)」はもともとは少年鑑別所で歌われていた歌だった

もともと、「ネリカン・ブルース(練鑑ブルース)」は、東京練馬区にある少年鑑別所で、代々、口から口へと歌い継がれてきていた作者不詳の俗謡だったそうですが、

(「練鑑」とは、練馬区少年鑑別所の略)

1959年、東宝映画「檻の中の野郎たち」の主題歌に抜擢されると、映画がヒットしたことから、レコード各社は、レコードを売り出そうとしたそうで、

(メロディーを採譜してアレンジしたのは、この映画で音楽監督を務めていた中村八大さん、歌唱したのは、新人のロカビリー歌手・守屋浩さん)

「コロムビアム」が、映画と同じタイトル「檻の中の野郎たち」で発売することとすると、

(歌詞は、鑑別所で歌い継がれてきたものでは差し障りがあると考え、映画の脚本を書いた関沢新一さんによって、当たり障りのない内容に書き換えられたそうです)

「ビクター」は、タイトルを「野郎たちのブルース」と変えて、まだ無名だった坂本九さんによってリリースする企画を立て、

「東芝レコード」もまた、「コロムビアム」と「ビクター」に対抗するかのように、タイトルをそのものずばりの「ネリカン・ブルース」として、山下敬二郎さん歌唱でレコード化することとし、

こうして、「ネリカン・ブルース」は、3社による競作として発売されることになったのですが・・・

毎日新聞が厳しく糾弾したことから「ネリカン・ブルース(練鑑ブルース)」の発売は中止に

1959年6月30日、毎日新聞が、社会面で、青少年の非行防止運動を阻害するとして、大きく取り上げ、

(毎日新聞は、青少年不良化防止キャンペーンを連載し、少年鑑別所で歌い継がれてきた「練鑑ブルース」を「日陰の歌」として紹介したそうです)

同年7月1日の社説でも、

発売をとりやめるようにすすめると同時に、商売のために、流行歌を邪道へそれさせているレコード会社に警告する

この機会に言いたいのは流行歌を作る人達の、ものの考え方の浅さについてである。

ヤクザを否定すればヤクザを取り扱っても問題はない、というのがヤクザの歌をはやらせる口実になっているが、実際には、ヤクザを否定することで、感傷的気分をそそっているため、かえってヤクザを好ましいものに感じさせている。

ぐれた女性の感傷を主題にして、やはり同様の気分を、世間に与えている傾向もあるし、愚劣低級な歌の数々で、一般の娯楽に暗い影を作りすぎていることを、反省してみてはどうだろう。

と、厳しく糾弾すると、

法務省からもストップがかかり、その結果、「コロムビアム」「ビクター」「東芝レコード」の3社のレコード会社は発売中止を余儀なくされたのだそうです。

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「ネリカン・ブルース(練鑑ブルース)」の歌詞とは

ちなみに、その「ネリカン・ブルース(練鑑ブルース)」の歌詞は、

人里離れた塀の中 この世に地獄があろうとは 夢にも知らない娑婆の人
知らなきゃ甥らが教えようか 身から出ました錆びゆえに

厭なポリ公にぱくられて 手錠かけられ意見され
着いた所は裁判所 鬼の検事に蛇の判事 付いた罪名は傷害罪

廊下に聞こえる足音は 地獄極楽分かれ道 青いバスに乗せられて
揺られ揺られて行く先は その名も高き練馬区の 東京少年鑑別所

薄い青テン着せられて 硬いベッドに寝かされて
三度の飯も麦しゃりで 食っちゃ寝、食っちゃ寝の鑑別所

格子の窓から空見れば 鳥はさえずり花さえも
二度とここへは来るなよと 俺に言うように論すように

新入り新入りと馬鹿にされ 便所掃除や床掃除
三度の食事も二度、一度 夜は涙で頬濡らす

余りの辛さに耐えかねて ぶくろの駅までずらかれば
張り込み看守にぱくられて もとの練馬に逆戻り

一年三月の刑終えて やっとの思いで娑婆に出りゃ
かわいいスケちゃん人の妻

おいら一人で男泣き 父さん母さん許してね
これからまじめになりますと 誓った言葉も上の空
またも踏み入る馬鹿の道

といった内容だそうで、

大阪堺市にある大阪少年鑑別所でも、若干違う歌詞で歌い継がれているたとのことです。

「永六輔が作詞した「黒い花びら」は当初ヒットを予想されていなかった!」に続く

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