阪神コーチ時代は、星野仙一監督を立てて「黒子」に徹したうえ、「阿吽(あうん)の呼吸」で「怒鳴られ役」も担っていたという、田淵幸一(たぶち こういち)さんは、技術面でも、「うねり打法」という打撃理論で、濱中おさむ選手や関本健太郎選手などを指導し、2003年のリーグ優勝に貢献します。
「田淵幸一の阪神コーチ時代は星野仙一監督の「怒鳴られ役」も担っていた!」からの続き
2003年には18年ぶりのリーグ優勝を飾る
阪神コーチ就任1年目の2002年、チーフ打撃コーチとして、打撃陣の全てを任された田淵さんは、和田豊打撃コーチとタッグを組んで、打線強化に専念すると、チーム打率は、前年の2割4分3厘から、2割5分3厘と上がったそうですが、
さらに、2年目の2003年、個人的にダイエーのコーチ・手塚一志さんに手伝ってもらい、「うねり打法」という打撃理論で、濱中おさむ選手や関本健太郎選手などを指導すると、チーム打率は、なんと、最終的には、2割8分7厘の成績に。
すると、チームも開幕から首位を独走し、7月終了時点で、2位の中日に17.5ゲーム差をつけたそうで、8月6日から8月24日までの「ロード」では4勝11敗と大きく負け越すも、8月27日に甲子園に帰り、7連勝して再び勢いを取り戻すと、その勢いは最後まで衰えず、9月15日、中日に14.5ゲーム差をつけ、最終成績87勝51敗2分でリーグ優勝を果たしています。
(1985年以来18年ぶり8度目のリーグ優勝。ただ、王貞治監督率いるダイエーとの日本シリーズでは、2連敗から3連勝して先に王手をかけるも、最終的には3勝4敗で日本一を逃しています)
超満員の甲子園で星野仙一と抱き合って泣いていた
ちなみに、田淵さんは、9月15日、超満員の甲子園球場で星野さんを胴上げした後、大観衆が見守る中で、星野さんと抱き合い、星野さんの体に顔を埋めているのですが、
小刻みに震える背番号「88」(田淵さん)の背中を優しくポンポンと叩いた星野さんの顔もまた、涙で濡れていたそうです。
星野さん(右)と抱き合う田淵さん(左)。
星野仙一は田淵幸一を優勝監督にさせてやりたいと語っていた
また、18年ぶりのリーグ優勝を決めた時、星野さんは、取材に対し、
(次の目標は)田淵を優勝監督にしてやることかな。どこのチームでもいい。あいつはダイエーで傷ついたからなぁ。汚名をそそがせてやりたいんだ。そのためならオレはヘッドコーチでも投手コーチでもなんでもやるよ
と、大真面目に言っているのですが、
隣で聞いていた田淵さんは、
そういう優しさがあるんだよ。だからついていける。もっともオレは監督の器じゃないけどね
と、うれしそうに笑っていたそうです。
「田淵幸一は星野仙一と共に阪神タイガースを退団していた!」に続く