宮崎駿は高畑勲に｢風の谷のナウシカ｣を酷評されていた！

５歳年上でアニメーターとしても先輩の高畑勲さんにサポートされ、アニメーターとして躍進を続けるも、やがて、高畑さんと考え方の相違を感じ始め、１９７９年、「赤毛のアン」を最後に、具体的な作品づくりで深く関わらなかった、宮崎駿（みやざきはやお）さんですが、１９８４年、久々に仕事を共にした、自身の監督映画「風の谷のナウシカ」では、高畑さんに、なかなか、プロデューサーを引き受けてもらえなかったうえ、完成した作品に対しても、超辛口の評価を受けていたといいます。

「宮崎駿と高畑勲は｢母をたずねて三千里｣からすれ違いが生じていた！」からの続き

「風の谷のナウシカ」のプロデュースを高畑勲に断られていた

宮崎さんは、１９８４年、自身の連載漫画「風の谷のナウシカ」（徳間書店発刊のアニメ雑誌「アニメージュ」）をアニメ化された際、高畑勲さんにプロデューサーを依頼されているのですが、実は、すんなりとはいかなかったそうです。

というのも、宮崎さんが、

高畑勲にプロデューサーをやってもらいたい

と、当時、「アニメージュ」の編集者だった鈴木敏夫さんに依頼するも、

鈴木さんが、高畑さんにそのことを伝えると、なんと、高畑さんは、その依頼を頑なに拒否し、しかも、いかに自分がプロデューサーに向いていないかを分析した大学ノートまで見せたそうで、鈴木さんさんは、高畑さんがそこまで嫌がっていることを宮崎さんに報告したそうです。

すると、宮崎さんは、

俺は15年間、高畑勲に青春を捧げた。何にも返してもらってない！

と、飲み屋で日本酒をがぶ飲みして号泣したそうで、

それを見た鈴木さんが、宮崎さんを不憫に思って、再び高畑さんに会いに行き、

友人が困っているのになぜ助けないのか！

と叱責されたそうで、ようやく、高畑さんは承諾されたのだそうです。

高畑勲に「風の谷のナウシカ」を30点と酷評されていた

このように、ひと悶着（もんちゃく）の末、宮崎さんが監督を、高畑さんがプロデューサーを務めた、「風の谷のナウシカ」が完成するのですが・・・

「風の谷のナウシカ」より。

高畑さんは、書籍「ロマンアルバム風の谷のナウシカ」で、

プロデューサーとしては万々歳なんです。ただ、宮さんの友人としての僕自身の評価は、30点なんです。宮さんの実力からいえば30点。

もちろん原作を映画にするという点では、まったく申し分なかったんですが、この映画化をきっかけに宮さんが新しい地点に進むだろうという期待感からすれば、30点ということなんです。

と、宮崎さんに対し、超辛口の評価をされており、

そのことを知った宮崎さんは激怒し、この評価が掲載されていた書籍「ロマンアルバム風の谷のナウシカ」を引きちぎったといいます。

ロマンアルバム風の谷のナウシカ

（ちなみに、１９８８年には、宮崎さんが監督を務められた「となりのトトロ」と、高畑さんが監督を務められた「火垂るの墓」が同時上映で公開されているのですが、冒険活劇とファンタジーを愛する宮崎さんと、リアリティにこだわる高畑さんの、作風の違いが如実に現れています。）

となりのトトロより。

火垂るの墓より。

高畑勲に畏怖の念を抱き続けていた

ただ、宮崎さんは、１９９１年のインタビューで、

必然的にそれぞれの嗜好に合わせて、別れていく時期が来て。けんかはしましたけど、けんか別れはしなかった

と、語るほか、

「千と千尋の神隠し」の制作の際には、（観客の視点が）ずっと主人公・千尋を追うことに対し、

パクさん（高畑）に怒られるな

と、つぶやくなど、常に、高畑さんに対して畏怖の念を抱き続けていたようです。

（高畑さんから、演出の際、これだけは絶対やるなと教わっていたそうです）

「千と千尋の神隠し」より。

高畑勲が求める絵を描けるのは自分しかいないと自負していた

また、鈴木敏夫さんによると、宮崎さんは、高畑さんが、遺作となった「かぐや姫の物語」制作の際、若手アニメーターの絵にダメ出しするところをこっそり盗み見すると、（宮崎さんも、自身の作品「風立ちぬ」で多忙だったにもかかわらず）高畑さんが望む絵を自ら描いて、「こういう絵を描くんだ！」と、その若手アニメーターに見せたこともあったそうで（もちろん、高畑さんのいない所で）、

宮崎さんは、高畑さんが求める絵を描けるのは自分しかいないと、強烈な自負があったようです。

そして、鈴木さんは、