銀座三悪のヒーコヤ(=コーヒー屋=喫茶店)の一つ「ダイヤモンド」を取り仕切る若者をやっつけたことから、元締のヤクザ・蟹さんに見初められ、「ダイヤモンド」を取り仕切ることになったなべさんですが、このことをきっかけに裏社会に足を踏み入れ、銀座のスターヤクザ「池の二郎」さんに憧れるようになります。

「なべおさみは高1の時ヤクザのもと銀座三悪のヒーコヤを仕切っていた!」からの続き

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ダイヤモンドの渡辺

あいまいな笑顔でうなずいたことで、銀座三悪のヒーコヤ(=コーヒー屋=喫茶店)の一つ「ダイヤモンド」を引き継ぐことになったなべさんですが、

残り二つのヒーコヤ「トレアドル」「ロア」からも、それぞれ取り仕切る若者が挨拶にくるなど、引くに引けないまま数ヶ月が過ぎて行ったそうで、

特に、土曜日や日曜日は、銀座で女の子をナンパしたい大学生達(大抵は良家のお金持ちの息子で有名大学に通うプレイボーイ)が、不良に因縁をつけられた際、「ダイヤモンドの渡辺(なべさんのこと)」の名前を出せば何事もなく過ごせたことから、その保証を買いにひっきりなしにやって来たそうで、なべさんは大忙しだったそうです。

(蟹さん達ヤクザは、これらの若者をターゲットに金儲けをしていたそうで、「ダイヤモンド」「トレアドル」「ロア」の3つのヒーコヤでは、それぞれの責任者が陣取り、店をトラブルから守る代わりに、「パー券」と呼ばれる「パーティー券」を若者に買わせ、「1枚100円のパー券を5~10枚買ったら、銀座でのトラブルから除外される」というシステムになっていたのだそうです)

なべおさみはどのグループにも属さず独立独歩だった

ところで、1955年頃の銀座には、「銀柳会」「銀星会」という二派の不良少年グループが存在していたそうですが、なべさんは、独りであれば身を引くのも簡単だろうと、どちらのグループにも所属しなかったそうです。

また、銀座の不良少年グループは、ほとんどがヤクザの予備軍ではなく、ある時期が来ると、さっと正常な道に戻っていく、ちょっと悪いことに憧れる普通の少年たちだったそうで、

戦後に頭角を現していった銀座の本物のヤクザというのは、ほとんどが(不良少年ではなく)しっかりした家庭の子供で、きちんと教育を受けている者が多かったのだそうです。

(そのため、戦後の銀座には、旧来の戦前のヤクザと、戦後に頭角を現したインテリヤクザとのせめぎ合いがあったのだそうです)

銀座のスターヤクザ「池の二郎」に憧れる

さておき、なべさんは、高校で直井三郎さんという人と親友になったそうですが、実は、この三郎さんの実のお兄さんは、少し不良っぽい道に興味を持った若者であれば誰でも憧れる、銀座のスターヤクザ「池の二郎」(直井二郎)だったそうで、

(二郎さんは、牛乳屋を手広く営む家庭に生まれ育った明治大学出身のインテリヤクザで、後に、「銀座の二郎」と呼ばれるようになったそうです)

二郎さんに会ったことがない者でも、つい、

昨日会って話して、お茶を飲んだよ

と、言ってしまいたくなるほどの人気の人物だったそうで、

なべさんもその例に漏れず、二郎さんに憧れる若者の一人だったそうです。

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「池の二郎」の存在感に圧倒される

そんなある時、なべさんが取り仕切るヒーコヤ「ダイヤモンド」に、元締のヤクザ・蟹さんが6時に集金に来ると、珍しく、食事もせずに飛んで帰ったことから、なべさんは、久しぶりにお気に入りのジャズ喫茶「テネシー」にでも寄ろうかと思いながら街に出かけたそうですが、

「みゆき通り」を歩いている時、背広をピシッときめた3人のヤクザが十字路を横切ったため(その姿は他を圧倒する存在感を放っていたそうです)、なべさんは思わず後をついていったそうです。

すると、鈴屋の先の歩道に靴磨き屋が出ていたそうで、一人のヤクザが丸椅子に座ると、あとの二人は後に控えたそうで、靴磨き屋が手際よく靴磨きを終えると、そのヤクザは千円札が投げ入れ、「釣りはいらないよ」と声をかけたそうですが、

(なべさんは、少し離れて、洋品店のウィンドウを眺めるふりをしながらその様子を見ていたそうです)

その時、靴磨き屋が、

二郎兄さん、毎度どうも!

と、言ったそうで、

この時、なべさんは、初めて「池の二郎」さんを見たのでした。

ちなみに、なべさんは、著書「やくざと芸能と 私の愛した日本人」で、

薄茶色の、白に近い麻の背抜きの夏服が踊って、こちらに戻ってきた。二人が従った。日本人にはめずらしい面体で、外国の血が流れている風情が、側をゆっくり歩いて行った。「東京温泉で一汗流そうや」と聞こえた。

これが二郎さんとの初対面だった。私は不思議な気分に支配され、親友の顔が浮かんだ。二郎さんも三郎も、よく似た兄弟で、私には羨ましい美男子だった。

と、憧れの人に会えた喜びが綴られています。

(※「東京温泉」とは二郎さんの縄張り内の有名な店)

「なべおさみは高校生の時ヤクザ「池の二郎」に銀座を出禁にされていた!」に続く


やくざと芸能と 私の愛した日本人

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