1973年には「国盗り物語」で明智光秀役、1978年には「黄金の日日」で石田三成役と、いずれもこれまでイメージの良くなかった人物を、NHK大河ドラマで魅力的に演じ、高い評価を得た、近藤正臣(こんどう まさおみ)さんですが、2016年には、NHK大河ドラマ「真田丸」で、これまたイメージの良くなかった徳川家康の参謀・本多正信役を、人間的魅力あふれる人物として演じ、原作者で脚本家の三谷幸喜さんに絶賛されています。
「近藤正臣の若い頃は明智光秀役で二枚目俳優の地位を確立!」からの続き
「真田丸」で本多正信役
近藤さんは、2016年、戦国時代の最後の名将・真田信繁(幸村)の生涯を描いたNHK大河ドラマ「真田丸」で、徳川家康の名参謀・本多正信役を演じられているのですが、
近藤さんは、本多正信について、
あんまりよう知りませんでしたが、名前は知っていました。私も名前に「正」がつきますから。ちなみに、「あさが来た」(2015年の朝ドラ)では正吉です。「ごちそうさん」(2013年の朝ドラ)のときは、正蔵でした!
と、あまり馴染みがなかったことを明かしつつも、
「真田丸」に登場する、他の多くの参謀とは雰囲気の異なる正信について、
機敏な頭脳に見えない方がいいな、と思ってやってます。昼寝しているという感覚です。あんまり一生懸命にならないでいこう、と思ってるんですよ。
と、語っておられます。
また、
今やっているのは、天下取りゲームではなく、生き残りゲームの最中です。軍師はゲームプレーヤーです。ただ、軍師もいい駒を持たないと、ゲームには勝てない。だから、殿(家康)にはどんどんスキルアップしてほしいんです。
正信の立場は、家康を「悪い評判」から守ることだと思ってます。悪い評判は正信が引き受けないと、良いコマは傷だらけのコマになり、使い物になりませんから。
と、近藤さん独特の解釈で演じられたことを明かされています。
「真田丸」より。徳川家康に扮する内野聖陽さん(左)と本多正信に扮する近藤さん(右)。
実は真田十勇士側の人物を演じたかった
ただ、近藤さんとしては、本音を言えば、
せめてそっち(真田十勇士)側に。
子供のころに「真田十勇士」と「黄金バット」を紙芝居で見た世代ですから。立川文庫もよく読んでいました。それらの影響が大きいようですね。
と、「真田十勇士」側の人物を演じたかったそうで、
冷静に考えてみたら、年が合わないんだよ。こんな老人は、十勇士の中にはいない。俺ができるとすれば、この役どころ(正信)なのだな、と妙に納得してます。
と、納得しつつも、
(真田十勇士側を演じられなかったことに)悔しいです。歳がどうにもならんじゃないですか(笑)。
と、やはり、あきらめきれないようで、悔しさをにじませていました(笑)
三谷幸喜が近藤正臣の本多正信を絶賛
さておき、近藤さん扮する本多正信は、「真田丸」最終回のラストシーンで、主人公・真田信繁(堺雅人さん)が死んだ後、兄弟で敵味方に別れ、徳川家康方についた、真田信繁の兄・真田信之(大泉洋さん)を大坂から自身の領地である玉縄(相模国)へ連れていき、
戦と同じ。人の心を読むのが肝要で。領民には無理をさせず、というて、楽もさせず、年貢だけはきっちりと取る。その上で、領主たるものは決して贅沢をしてはならん。これでござりまするよ
と、国造りの根本を教えて、最後の最後で真田家の存続に手を貸す、という重要なシーンを演じられているのですが、
「真田丸」の作者で脚本家の三谷幸喜さんは、
僕はいろいろな軍師の中でも本多正信が一番好きなのですが、近藤さんが演じられることで、すごく人間味に深みが出てきました。セリフを書くのが楽しくて仕方なかったです。
(近藤さん扮する正信の)イメージがどんどん膨らんで『もしかしたら“真田丸”は本多正信で終わるんじゃないか』と、ふと思ったんです。
正信は何となく悪い人のイメージがありますが、地元では逆のイメージを持たれていることもあると思い、調べてみると『百姓は生かさず殺さず』という有名な言葉に行き着きました。
その言葉も悪いイメージで捉えることもできますが、逆の意味で考えると、すごく領民のことを考えていて、領主としての見本のような人だったのではないかなと感じたんです。
それが信之に影響を与え、その後の(真田家の)礎を築いていくということにつながるのではないかと思い、そのあたりから、だんだん最終回のラストシーンが見えてきましたね。
正信が信之と一緒に大坂から帰ってくるという設定にうまく結びつけることができました
と、近藤さんを絶賛。三谷さんにとって、近藤さんは、正信を演じる唯一無二の役者だったようです。
「真田丸」の最終回より。本多正信に扮する近藤さん(左)と真田信之に扮する大泉洋さん(右)。
三谷幸喜は近藤正臣の大ファンだった
というのも、三谷さんは、もともと、近藤さんの大ファンだったそうで、
それもこれも全部、近藤さんが正信を演じられたからこそです。そうじゃなかったら、僕はこの結末にしなかったと思います。ラストも、近藤さんがすごくいい表情をされたんです。
大坂城が落城したという知らせを聞いて、何も言わずに大泉さん(真田信繁の兄・真田信之)と目線で何かを交わす、というすごくいいお芝居でした。
もともと近藤さんが大好きで、『国盗り物語』(1973年NHK大河ドラマ)の明智光秀と『黄金の日日』(1978年NHK大河ドラマ)の石田三成は僕の中の“ベスト”。近藤さんに最終的な形を締めてもらえて本当にうれしかったです
と、コメントされているのですが、
三谷さんは、子どもの頃からNHK大河ドラマの大ファンでもあり、特に、小学生の時に見た大河ドラマ「国盗り物語」で、明智光秀役を演じた近藤さんに強い印象を受けたことを折に触れ語っていたほか、本多正信についても、自分のいちばん好きな軍師であることを公言されていたことから、今回、「真田丸」で近藤さんに本多正信を演じてもらったことが、よほど嬉しかったようです♪
「近藤正臣と玉木宏は師弟のような深い絆で結ばれていた!」に続く