「ハーフシャドウ」と呼ばれる独特のテクニックで写真撮影をするほか、ショートヘアに黒のレザー姿でオープンカーを乗り回すなど、自由奔放に生きるアストリッド・キルヒャー(Astrid Kirchherr)さんに惹かれていったという、スチュアート・サトクリフ(Stuart Sutcliffe)さんですが、アストリッドさんの強烈な個性は、ほかの「ビートルズ」のメンバーにも多大な影響を与えたといいます。今回は、「ビートルズのミューズ(女神)」と呼ばれたアストリッドさんが、「ビートルズ」に与えた影響などについてご紹介します。
「スチュアート・サトクリフはドイツ人に大人気だった!」からの続き
ビートルズカット(マシュルームカット)
「ビートルズ」といえば、「マシュルームカット」「ビートルズカット」と呼ばれるヘアスタイルが有名ですが、実は、これは、アストリッド・キルヒャー(Astrid Kirchherr)さんが「ビートルズ」に提案したものだったといいます。(正式には、「モップトップヘア」と言うそうです)
ある日、みんなで一緒にプールに行った際、メンバーの髪が前に垂れている状態を見て気に入ったアストリッドさんが、垂れた髪をそのままにするように提案したことがきっかけだったそうで、
特にスチュアートさんは、リーゼントが大嫌いだったこともあり、このヘアスタイルを気に入り、メンバーの中でいち早く取り入れたそうで、
(それまで、「ビートルズ」は全員リーゼントでした)
後にアストリッドさんは、
私の通っていた芸術学校の友人達は、みんないわゆるビートルズのヘアカットが好きだったの。特に、スチュは、とっても気に入っていたわ。ポマードで固めた髪が嫌で、早くカットしてくれって頼んだのは彼が最初だったわ。
と、語っています。
(当初、ジョン・レノンさんは、そんなスチュアートさんの「モップトップヘア」を見て、大笑いしたそうですが、次に、ジョージ・ハリスンさんもこのヘアスタイルにすると、最終的にはジョンさんも含め、(ピート・ベストさん以外)全員、このヘアスタイルになったそうです)
リーゼントだった頃の「ビートルズ」。(左から)スチュアートさん、ジョン・レノンさん、ポール・マッカートニーさん、ピート・ベストさん、ジョージ・ハリスンさん。
襟なしのスーツ
また、アストリッドさんは、襟なしのスーツもスチュアートさんのために仕立てたそうで、これも、最初、メンバーたちは大笑いしたそうですが、最終的には、全員、「ビートルズカット」同様、このスタイルにしたそうです(笑)
(この襟なしのスーツは、デビュー当時、「ビートルズ」が着用しているのですが、大変な話題となったそうです)
襟なしのスーツを着た「ビートルズ」のメンバー。
アストリッド・キルヒャーは「ビートルズ」の憧れの存在だった
そんなアストリッドさんは、当時、若きバンドマンたちの憧れの女性だったそうで、アストリッドさんがクラブに現れると、みんな大喜びし、アストリッドさんから、「モミアゲを少し伸ばしてみたら?」などとアドバイスされると、すぐその通りにし、アストリッドさんからアドバイスされたことを自慢したそうですが、
「ビートルズ」のメンバーも例外ではなく、アストリッドさんの自由な生き方や、ショートヘアに黒のレザー姿でオープンカーを運転する姿は、少し年下の「ビートルズ」のメンバーを惹き付け、強烈なインスピレーションを与えたといいます。
アストリッド・キルヒャーは「ビートルズ」にとって母親や姉のような存在だった
ちなみに、愛情深い性格だったアストリッドさんは、木の枝で装飾された美しい自宅に、たびたび、(当時、まだ貧乏暮らしをしていた)「ビートルズ」のメンバーを招いては、食事をふるまい、世話するなど、まるで母親や姉のように見守り、陰ながら活動を支えていたそうで、
アストリッドさんと親交のあったシュテファニー・ヘンペルさんは、後に、
「ビートルズ」のメンバーは皆、アストリッドに恋をしていました。母親や姉のような愛情と、性的な愛情の両方を持っていたのです
アストリッドはとても美しかったですが、それだけではなく、精神的にも知的にも彼らの面倒を見て、彼らに自分自身についての新しい認識を与えました。
それは、彼らにモップで髪を切ってあげること以上のことでした。実際、彼女はビートルズの美容師として知られることを嫌っていました。
と、語っており、
ジョージ・ハリスンさんも、アストリッドさんが自宅に招いてくれ、甲斐甲斐しく面倒を見てくれたことについて、
20代の若者たちにとって天国のように感じられた
と、語っています。
「スチュアート・サトクリフはポール・マッカートニーにイジメられていた?」に続く