「戦場のメリークリスマス」では、ビートたけしさん、坂本龍一さんという、本来、俳優ではない人を日本人のメインキャストに起用した、大島渚(おおしま なぎさ)さんですが、映画「日本の黒幕」で主人公の少年テロリスト役を演じる予定が、大島さんが脚本の最終段階で降板したためお流れとなった三上博史さんも、脇役ながら起用したといいます。
「大島渚は坂本龍一で「戦場のメリークリスマス」の成功を確信していた!」からの続き
「戦場のメリークリスマス」には三上博史も一兵卒役(端役)で出演していた
映画「戦場のメリークリスマス」には、後に、「君の瞳をタイホする!」「君が嘘をついた」「世界で一番君が好き!」などのトレンディドラマで一躍人気俳優となった、三上博史さんも、一兵卒役(端役)で出演しているのですが、
実は、三上さんは、3年前の1979年、17歳の時、大島さんが監督をする予定だった映画「日本の黒幕」(東映)で、主人公の少年テロリスト役に抜擢されていたのですが、大島さんが、東映の岡田茂社長とシナリオを巡って意見が対立し、降板したため、出演が叶わなかったという経緯がありました。
(三上さんは、その前年の1978年には、寺山修司さん監督の映画「草迷宮」に出演しており、それに続き、大島さんの映画に主演するという幸運をつかみかけるところでした)
三上博史は「戦場のメリークリスマス」のオーディションに一瞬で合格するも・・・
そんな経緯があったことから、「戦場のメリークリスマス」で大島さんからオーディションの知らせを受けた三上さんは、喜び勇んでオーディション会場に行くと、すぐに軍服を着るように言われたそうで、これに従い、軍服に着替えたところ、合格。
(オーディションは、たった、それだけだったそうです)
しかし、脚本をもらい、その足で喫茶店へと向かい、脚本を貪(むさぼ)るように読むも、三上さんの役はというと、映画の最後の方で、デヴィッド・ボウイさん演じるイギリス人捕虜のジャック・セリアズに飛びかかる一兵卒という小さな役だったのだそうです。
(脚本にして、たった1行の役だったそうです)
三上博史は端役に納得行かず大島渚に直談判していた
これには、三上さんは納得がいかず、大島さんに直談判するため、大島さんの事務所へ向かったそうですが、誰もいなかったため、部屋の外で待っていると、夜になり、ようやく酔った大島さんがスタッフを連れて帰って来たそうで、
大島さんから、
何をしている?
と、問われたそうですが、
三上さんは興奮して、うまく言葉で説明できなかったそうです。
すると、大島さんから、とにかく中に入れと言われ、これに従い、勧められるままにビールを飲んだそうで、少し落ち着いたところで、訥々(とつとつ)と不満を述べたそうですが・・・
一通り話を聞き終わった大島さんからは、
君にはこの役しか向かないだろう
と言われたそうで、三上さんはこの言葉に返す言葉がなかったのだそうです。
三上博史は寺山修司に背中を押され端役でも「戦場のメリークリスマス」への出演を決意
こうして、三上さんは、悶々(もんもん)としたまま、事務所を出たそうですが、そのまま帰ることもできず、今度は、寺山修司さんを訪ねたそうで、
寺山さんに脚本を見せながら不満を述べると、寺山さんから慰められ、
何もすることがないなら、ニュージーランドへ行くのもいいんじゃないか
と、言われたそうで、三上さんは、この言葉に納得。
こうして、三上さんは、この数秒のシーンを全身全霊で演じようと、決意したのだそうです。
三上博史は「戦場のメリークリスマス」出演をきっかけに俳優として飛躍していた
ちなみに、三上さんは、その後、ロケ地であるニュージーランドのラロトンガ島に向かい、この一瞬のシーンのために3週間待ち続け、その間、ひたすら撮影現場をじっと観察していたそうですが、
ある時、ロレンス役を演じるトム・コンティさんの演技を観ていると、
大島さんから、
勉強になるだろう。日本の役者さんはなかなかこういうスマートな芝居が出来ない
と、話しかけられたことがあったそうで、
三上さんは、後に、この時の撮影について、
すごく楽しかった。あれを越える現場ってのは味わったことがない
と、語っており、
当時、まだ俳優としてやっていく覚悟ができていなかったところ、「戦場のメリークリスマス」への出演をきっかけに、俳優として大きく飛躍したのだそうです。
(三上さんはこの撮影の後、自費でニュージーランドを旅したそうです)
「大島渚の「戦メリ」での揺れるキスシーンは機材トラブルだった!」に続く
「戦場のメリークリスマス」出演時の三上博史さん。