戦場のメリークリスマス」では、当初、ハラ軍曹役とヨノイ役にそれぞれ決まっていた緒形拳さんと滝田栄さんが降板となり、その後キャスティングが難航したことから、一転、素人で行くことにし、ハラ軍曹役にお笑い芸人のビートたけしさんを起用した、大島渚(おおしま なぎさ)さんは、ヨノイ役には、ミュージシャンの坂本龍一さんを起用し、映画の成功を確信したといいます。

「大島渚が「戦メリ」でビートたけしに出演オファーした経緯とは?」からの続き

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坂本龍一の写真を見て気に入りヨノイ役にオファー

ヨノイ役のキャスティングに難航している中、大島さんが、「男の肖像」(集英社)という本をパラパラとめくっていると、ミュージシャンでテクノ・ポップバンド「YMO」で活躍していた坂本龍一さんの写真が掲載されていたそうで、

その佇(たたず)まいが気に入った大島さんは、かれこれ2ヶ月ほど眺めていたそうですが、迷いに迷った末、坂本さんに会いに行ったそうです。

(坂本さんは、正式にオファーを受ける前に、大島さんにキャスティングされているらしいという噂を人づてに聞いて知っていたそうです)

坂本龍一はオファーを即座に了承し映画音楽も申し出ていた

すると、坂本さんは、この申し出を快諾したうえで、映画の音楽もやりたいと申し出たそうで、大島さんは、映画音楽のことは分からなかったそうですが、即座に了承したのだそうです。

ちなみに、坂本さんがオファーを引き受けた理由は二つあるそうで、

まず、一つ目は、坂本さんは、高校在学中、(独立プロの)ATG映画のメイン館である新宿文化に頻繁に通っており、大島さんの作品「新宿泥棒日記」「東京战争戦後秘話」などを観て、

まさに今僕らがやっていることを映画にしている“同伴映画”じゃないか、と思った

と、衝撃を受け、「日本春歌考」に至っては5回も観るなど、大島さんの映画に強烈な影響を受けていた為。

(坂本さんが高校生の時といえば、ちょうど、大島さんが、ATGで「絞死刑」「少年」「儀式」などを製作していた時期)

そして、もう一つは、テレビ出演時、喜怒哀楽を前面に出す大島さんのキャラクターが面白いと思っていたからだそうです。

坂本龍一の殺気と色気に「戦場のメリークリスマス」の成功を確信していた

とはいえ、大島さんには、演技経験のない坂本さんにヨノイ役という大役が務まるのだろうか、という一抹の不安は残っていたそうですが、

1982年7月10日、日本人キャストの衣装合わせが行われた際、初めて軍服を着て真剣を構えた坂本さんを見て、そのなんともいえない殺気と色気を感じ、この映画の成功を確信したそうで、

助監督の伊藤聡さんは、大島さんが、その日の夜、食事に行った中華料理店で、

勝った!俺たちは勝ったぞ!

と、上機嫌で叫んでいたことを証言しています。


「戦場のメリークリスマス」でヨノイに扮する坂本龍一さん。

(一方、坂本さんはというと、撮影開始後、ラッシュで自分の演技を観て、それがあまりにもひどいものだったため、愕然となり、なんとか曲で盛り上げて、必死でごまかそうとしていたのだそうです(笑))

ジョン・ロレンス陸軍中佐役にはイギリス人俳優のトム・コンティ

こうして、ジャック・セリアズ陸軍少佐にデヴィッド・ボウイさん、ハラ軍曹にビートたけしさん、ヨノイ陸軍大尉に坂本龍一さんが決定すると、この3人と並んで重要な役割を担う、もう一人の捕虜のジョン・ロレンス陸軍中佐役には、イギリス人俳優・トム・コンティさんが決定するほか、

内田裕也さん、ジョニー大倉さん、三上博史さん、室田日出男さん、内藤剛志さん、本間優二さんらが脇を固めることになったのですが、

大島さんは、このキャスティングについて、

とにかく『大日本帝国』と『連合艦隊』に出た奴は絶対出さないぞ(「月刊イメージフォーラム」1983年10月号)

と、冗談めかして言っていたそうで、従来の戦争映画に似合う俳優は使いたくなかったようです。


「戦場のメリークリスマス」より。トム・コンティさん(左)とビートたけしさん(右)。

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ジェレミー・アイアンズはオファーを断ったことを後悔していた

ちなみに、ジョン・ロレンス陸軍中佐役には、当初、イギリス人俳優のジェレミー・アイアンズさんにオファーし、断られていたそうですが、

後に、アイアンズさんは、

台本を読んだら、同性愛色が強すぎるような気がして断ったよ。でも完成した映画を観て死ぬほど後悔した

と、語っていたとのことでした(笑)

「大島渚の「戦場のメリークリスマス」には三上博史も端役で出演していた!」に続く

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