小学生の頃から、テキヤの口上のモノマネが得意で、コメディアンに憧れていた、小松政夫(こまつ まさお)さんですが、貧しい家計を支えるために働き始めたアルバイト先で意外な能力を発揮します。

「小松政夫の生い立ちは?少年時代からテキヤの口上をマネしていた!」からの続き

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和菓子店「石村萬盛堂」で住み込みで働く

中学1年生の時、お父さんが「結核」で他界すると、その後は、貧しい家計を支えるため、和菓子店「石村萬盛堂」でアルバイトをするようになった小松さんですが、

やがて、六畳と四畳半2間という狭いアパートに家族6人(しかも、小松さん以外全員女性)が暮らすという境遇に耐えきれなくなり、思い切って、社長の奥さんに相談したところ、

社長の奥さんが、

店の2階が空いている。ご飯はうちで食べればいい。

と、言ってくれたため、住み込みで働くことになったそうで、思春期で多感な時期だった小松さんは、心底ありがたく感じたそうです。

貧しくも楽しい日々の中で役者を夢見る

とはいえ、お給料はそのまま実家の生活費になるという、相変わらず、貧しい生活を送られていた小松さんですが、

それでも、「石村萬盛堂」は、小松さんのような若い人にも市長が列席するような新社屋の落成式を取り仕切らせてくれたそうで、

小松さんは、看板を作ったり、会場を色とりどりの輪飾りで演出するほか、司会進行役も務めるなど、重役を任されたそうで、信頼してもらっていることが、何よりもうれしく、楽しい毎日だったそうです。

また、学校の体育祭では、応援団長を務めるほか、クラス全員が出演できる劇をすべて自身で企画して上演したこともあったそうで、

とにかく目立ちたがり屋で熱中するととことん入れ込むタイプだった小松さんは、いつしか、銀幕に映し出される自身の姿を夢見るようになっていったのだそうです。

正社員を断るも餞別として1万円もらう

そして、高校卒業を控えたある日のこと、「石村萬盛堂」から社員登用の打診があったそうですが、

小松さんは、

役者になりに東京へ行く

と、喜劇役者への夢が捨てきれず、この話を断られたそうです。

にもかかわらず、小松さんが、

東京に出て日本一の役者になりたい。ついては給料を1ヶ月分ほど前借りさせてください。

と、厚かましくも、社長の奥さんに頭を下げたところ、

社長の奥さんは、

辞める人が前借りはおかしいよ。そういうのは前借りじゃなくてお餞別というのよ。

と、笑い飛ばし、ラーメンが1杯30円の時代に、なんと、100円札で1万円分も持たせてくれたそうで、

小松さんは、一つ一つの和菓子を売って稼いだ、働く人の汗がしみこんだお金を見て、声を上げて泣いたのだそうです。

アルバイトを転々

こうして、小松さんは、高校卒業後の1961年、会社の人や同級生たちが、博多の駅と小倉の駅で万歳三唱をして盛大に見送ってくれる中、夜行列車に乗り、6歳年上のお兄さんを頼って横浜に向けて出発すると、

上京後は、いくつかの劇団を受験し、そのうちの一つ、「俳優座」に合格するも、入学金と月謝が高額だったため、断念。

その後は、すし店、マグロ問屋、花屋、ケーキ店、ハンコ屋、事務機器のセールスマンなど、様々なアルバイトを転々としたそうです。

ハンコ屋では社長の娘に惚れられる

そして、ハンコ屋では、ゴム印の注文を取ってきて、職人さんが彫ったハンコを配達する、という仕事をされていたそうですが、職人さんがハンコを彫っているのを、見よう見まねでやってみたところ、できてしまったそうで、

それを見た社長から、

配達に行かなくていいからハンコを作れ

と言われ、職人さんの仲間入りをすることになったそうです。

すると、その社長には娘がおり、その娘が社員食堂を切り盛りしていたのですが(お相撲さんみたいに丸々と太っていて、眉毛が太く、みつあみをしていたそうです)、

その娘は、いつも、小松さんにだけ、おかずをおまけしてくれたそうで、

ある時、

博多弁で好きって何て言うの?

と、聞かれたため、

好(す)いとーですかね

と、答えたところ、

それ以来、毎日、小松さんの耳元で、

好いとー、好いとー

と、言われるようになったそうで、

小松さんは、

ああ、これはもうここにはいられないなあ

と、思ったそうです(笑)

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ハンコ屋を退職

そして、ほどなくして、社長から、

娘が君に惚れ込んでいるから結婚しないかね。会社を持たせるから、うちを継いでくれ

と、言われたそうですが、

小松さんは、

私には大望がありまして、お金をためたら世界各国を巡って見聞を広める。そういう青年になりたい。

と、言って、ハンコ屋を辞められたのだそうです。

「小松政夫は昔は優秀な営業マンで横浜トヨペットに引き抜かれていた!」に続く

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