映画館帰りの電車の中で、サラリーマンが朝鮮戦争による「金へん・糸へん景気」の会話をしているのを聞き、鉄屑がお金になることを知ったなべおさみさんは、まだ、小学校5年生だったにもかかわらず、早速、近所に住む鉄屑屋さんに金属類を買ってもらう約束を取り付けると、ひたすら金属類を集めることに没頭します。

「なべおさみは小5にして「金偏糸偏景気」の噂から鉄屑集めを思いついていた!」からの続き

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小5にして金属屑がお金になると知り近所の工場跡地で水道の蛇口(カラン)を集める

たとえ鉄クズだとしても金属類がお金になると知ったなべさんは、近所にある工場跡地と自分のところの工場の敷地に鉄屑があることを思いついたそうで、

まずは、なべさんら子ども達の遊び場だった、爆撃を受けて破壊され、砕けたタイルの床や大きな浴槽が無残な姿をさらしていた近所の工場跡地に行き、何十と並んでいる水道の蛇口(カラン)を、近所の鉄屑屋さん(金井さん)に借りたとても大きく重たい金槌で首を飛ばしていき、

さらには、正面玄関前にあった横並びの水飲み場からも、同様に蛇口を失敬したそうで、リヤカーいっぱいになった蛇口の山を金井さんのところまで運んだそうです。

小5にして金属屑を売って大枚の百円札を稼ぐ

すると、金井さんは、

これは真鍮だから高いよ!

いいこと教えてやろう!

と、大枚の百円札をなべさんに渡しながら台所に連れていってくれ、

これ、見てみろ!

と、流しに取り付けられた水道管がむき出しになった水道を見せてくれたそうで、

金井さんは、その蛇行して家の地面を這っている管を示しながら、

細工しやすいように、家の中への引き込みは、やわらかい鉛管を使うんだ。まけ(曲げ)やすいからさ

と、明日からもう一度、カランに入ってくるまでの鉛管を探してみるように教えてくれたのだそうです。

(金井さんは、子どものなべさんにも、ごまかさずに正当に払ってくれたそうです)

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小5にして水道管の鉛管を掘り出すのに夢中に

そこで、なべさんは、次の日、さっそく学校を早引けして、もう一度工場跡地に行き、作業に没頭したそうですが、正門から浴場へは広いコンクリートの床が敷き詰められ、水飲み場までもしっかりとコンクリートが敷き詰められていたため、子どもであるなべさんの手には負えず。

ただ、その時、浴場が壁面で仕切られた角地にあったことを思い出したそうで、そのコンクリートの区切れの地面を掘っていくと、ついには、カチンと何か硬いものに当たった音がし、

思わず、

やったあ!

と、声を上げたのだそうです。

(この時、午後7時頃で、どこの家庭も夕飯が終わる頃だったそうですが、なべさんは夢中で作業が止められず、汗だくになりながら、壁面に沿って何メートルもシャベルで掘り続けていたのだそうです。)

ちなみに、後になべさんは、この時のことを振り返り、

姿を現した管に行き当たった喜び、シャベルで打ち込むと簡単に切り込めて鉛管だと分かった驚き、さらに言えば、掘り出した部分が重くて持ち出せず、一度埋めて隠して、あくる日にぶつ切りにしてリヤカーで金井さんのところに運んだこと等、全てが昨日の事のように心に刻まれているのです。

この時、手にした金銭は、子ども心には天下を取ったように思えた額で、これがかなりの長期間にわたり私の映画館通いを助けてくれたのですから。

と、明かされています。

「なべおさみが小5で稼いだお金は映画館通いにつぎ込んでいた!」に続く

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