国立劇場から、坂東玉三郎(ばんどう たまさぶろう)さんをスターとして売り出すという、個人プロジェクトを開始した伊藤信夫さんは、まずは、坂東さんの養父で14代目守田勘弥さんにオファーするも、勘弥さんには何か裏があるのではと疑われたことから、プロジェクトの計画を正直に打ち明けたといいます。

「坂東玉三郎の「時鳥」役抜擢を養父・守田勘弥は疑っていた!」からの続き

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伊藤信夫が坂東玉三郎を売り出すための計画を14代目守田勘弥に打ち明ける

12月の国立劇場での公演「曾我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)」で、(勘弥さんの養子の)坂東さんを「時鳥」役に抜擢したい旨を伝えるも、何か裏があるのではと勘弥さんに疑われた伊藤信夫さんは、

玉三郎さんを国立劇場売り出しの俳優第一号にしたいんです

と、ストレートに切り出したそうです。

すると、勘弥さんは、半信半疑で、

国立劇場がそうしてくれるんですか

と、聞いてきたそうです。

14代目守田勘弥が坂東玉三郎の「時鳥」役へのオファーを引き受ける

そこで、伊藤さんが、正直に、

いや、私です

と、言うと、

勘弥さん:あんたが
伊藤さん:はい
勘弥さん:(伊藤さんの上司で制作室長の)加賀山さんは知っているのか
伊藤さん:知りません

という、やり取りとなったそうで、

伊藤さんは、さらに、

菊之助さんや辰之助さんを貸して欲しいと松竹に申し入れても、なかなか貸してくれません。国立劇場では 一年以上 も、歌舞伎界で売り出しの若いスターを使えないんです。

だから、国立劇場で独自に育てたスターを作ってみたい。それで、玉三郎さんに目をつけたんです。その売り出しの役として、時鳥はいいんじゃないですか

と、正直に本音を明かしたのだそうです。

(勘弥さんと信頼関係を結ぶことが一番大事だと考えていたため)

すると、勘弥さんは、納得しつつも、加賀山さんに黙って決めていいのか心配したそうで、

伊藤さんが、さらに、

あなたが百合の方を引き受ける条件として、玉三郎さんを時鳥にと言ったことにします。そうすれば、 加賀山さんはいやとは言えません

と、計画を打ち明けると、

勘弥さんは、

あんたは怖い

と、言いつつ、全てを引き受けてくれたのだそうです。

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伊藤信夫が14代目守田勘弥との坂東玉三郎売出しの密約に成功

また、勘弥さんからは、これから(坂東さんを)どうするつもりなのかと聞かれたそうで、伊藤さんが、国立劇場にはスターを売り出すための予算がないため、歯がゆい話ではあるものの、できる限り、国立劇場に出てもらいたいこと、その都度、坂東さんに良い役をつけていくつもりであることを説明すると、

勘弥さんは、快諾して、

ありがとう。歌舞伎座に用のない月はいつでも出します。私も一緒に出して

と、言ったのだそうです。

(それでもやはり、勘弥さんにとっては、歌舞伎座での公演が優先だったそうです)

そして、最語に、伊藤さんが、

この件は内密に

と、頼むと、

勘弥さんも、

この世界はどんな妨害が入るか知れませんからね

と、これに同意したのだそうです。

「坂東玉三郎の「時鳥」役抜擢に14代目守田勘弥は心配でならなかった!」に続く

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