佐倉一高が開校以来初めて、南関東大会で千葉県代表となり、周囲が盛りあがっている中、チームの中で自分の家族だけが応援に来れないことを知り、がっかりするも、試合当日には、思い直し、センターバックスクリーンに超特大ホームランを放った、長嶋茂雄(ながしま しげお)さんは、帰宅後、実は、仕事で来れなかったはずのお父さんが球場に応援に来てくれていたことを知ったといいます。
「長嶋茂雄は高3のとき南関東大会で超特大ホームランを放っていた!」からの続き
父親に超特大ホームランを見て欲しかったと思っていた
南関東大会第1回戦の熊谷高校戦では、チームの中で自分だけ家族が応援に来てくれない中、センターバックスクリーンに特大ホームランを放った長嶋さんですが、
ベースを回りながら、これでお父さんにも胸を張って話ができると、ふと、色白のお父さんの顔を思い浮かべるも、やはり、この超特大の一撃をお父さんに見てほしかったという気持ちになったそうです。
(試合は1対4で負けたそうです)
父親は内緒で大宮球場に応援に来てくれていた
ただ、長嶋さんが自宅に帰ると、お父さんが笑顔で迎えてくれ、長嶋さんの顔を見るなり、
シゲのきょうのホームラン、えらく大きかったな
と、言ったそうで、
長嶋さんが驚いて、
・・・大きかった、というけど、父さん、見に行った人に聞いたの?
と、尋ねると、
お父さんは、ニコニコしながら首を横に振ったそうで、
長嶋さんが、ハッとし、
長嶋さん:じゃ、父さんは?
と、聞くと、
お父さんは、
そうだよ、茂雄ががんばるところを見たくて、父さんはこっそり大宮の球場へ行ってたんだよ
と、言ったそうです。
実は父親は外野の隅で声を張り上げて応援してくれていた
実は、長嶋さんは、お父さんが「ひょっとしたら来てくれているんじゃないか」とかすかな望みを抱いて、何度も何度も、一塁側のベンチの上の応援団席へ探しに行っていたそうで、
選手の保護者がひとかたまりになっている場所にはもちろん、色白のお父さんの姿はどこにも見つからなかったことから、
えっ。で、父さんはどこにいたの?
と、聞くと、
お父さんは(照れくさそうに耳のあたりをゴシゴシかきながら)、
・・・父さんか?外野のずっと隅っこのほうで見てたんだよ。茂雄が元気いっぱいやっているのを、そこから見てて、ときどき、「長嶋アーッ!」って声を出してたんだ
・・・だけど、きょうのホームランは、ほんとうに大きかったなあ。よかったな、茂雄・・・
と、言ったそうで、
長嶋さんは、その時のことを、著書「燃えた、打った、走った!」で、
ぼくは急に鼻の奥がツーンとしてきた。なんという親父なんだろう。ほかの父兄たちといっしょに応援に行っても、ちっともおかしくはないのに、わざわざ目立たない場所に潜り込んで、声をはりあげていた親父・・・
そして、息子のぼくを大事な試合の前にできるだけ緊張させないよう、ごくさりげなく「仕事があるから・・・」と姿を見せないふりをしたおやじ。
たとえ息子に対してでも、そういう一種のケジメをつけ、こまやかに気をくばるおやじだった。おやじにとって、野球の試合を見るのはあとにも先にも、この時ただ一回だけ。僕が超特大のホームランを飛ばしたあの大会が、おやじの最初で最後の観戦となるとは、ぼくはもちろん考えもしなかった。
と、綴っています。
「長嶋茂雄は巨人軍からスカウトされるも父親から反対されていた!」に続く