天覧試合では、天皇・皇后両陛下の期待を一身に背負い、４番打者の重圧を感じながらも、５回裏、長嶋茂雄（ながしま しげお）さんが同点ホームランを放つと、続く５番の坂崎さんもホームランを放ち、２対１と一気に逆転した巨人ですが、直後の６回表には、巨人のエース・藤田さんが肩を痛めていたこともあり、２対４と再逆転されてしまったそうで、長嶋さんは、７回裏の打席では、焦りから阪神のエース・小山さんにたちまち追い込まれ、２-２から見逃しの三振を喫してしまったといいます。
「長嶋茂雄は天覧試合ではサヨナラ本塁打の前に同点本塁打も打っていた！」からの続き
巨人のエース・藤田が次々と打たれる
天覧試合の阪神戦では、５回裏、４番の長嶋さんが同点ホームランを放つと、続く５番の坂崎一彦さんもホームランを放ち、あっという間に阪神を逆転した巨人ですが、
６回表には、まず、阪神の吉田義男さん（「牛若丸」の異名を取る素晴らしい遊撃手だったそうです）がセンター前にはじき返すと、一塁キャンパスでスパイク靴のかかとを打ち合わせ、リードをとったそうで、
続く鎌田実さんがカウントを追い込まれ、藤田さんのウエストボールをとてつもない大根切りで空振りすると、「ストライク・スリー」と球審の右手があがったそうですが（三振）、
ランナーの吉田さんは軽快な身のこなしでセカンドベースに滑り込みセーフとなったそうで、吉田さんは、また、スパイク靴のかかとを打ち合わせたそうです。
（鎌田さんの空振三振は、吉田さんの盗塁を援護するためだったそうです）
巨人のエース・藤田は肩を痛めていた
この時、長嶋さんがマウンドの藤田さんに目を向けると、藤田さんは顔色一つ変えなかったそうですが、前年に肩を痛めつつも、連投につぐ連投で疲労が色濃く残っていることを、長嶋さんは気づいていたそうで、
（その疲労がたたってか、この天覧試合の翌年には、肩の激痛のため寝返りも打てず、アンダーシャツの右肩部分の下に分厚いタオルを忍ばせるも、風がしみ、どうしようもなくなるほどだったそうです）
続く３番の三宅秀史さんの打球は、レフトの前へ飛び、吉田さんがホームインして同点に追いつかれてしまったそうです。
それでも、藤田さんは、首をちょっと右側に傾けるポーズ（癖）でマウンドに立ち続け、顔色一つ変えなかったそうですが、この日の異常なムードの中で、藤田さんの疲れ切った腕は、いつもの球のキレを失っていたそうで、
続く４番の藤本勝巳さんには初球をいきなり左中間スタンドに叩き込まれ（２ランホームラン）、２対４と逆転されると、ついに、藤田さんは、初めてマウンドの上でくちびるを噛んだそうです。
阪神に逆転された焦りから見逃しの三振していた
しかし、巨人の水原監督は、ベンチで腕組みしたまま身じろぎもせずに藤田さんをじっと見つめ、ついには何も言わなかったそうで、
（水原監督は、どんな時でも嫌な顔ひとつせず黙々とマウンドに立っていたエース・藤田さんに、この日もすべてを託し、代えるつもりはなかったのだそうです）
そのまま、試合は阪神に２点差をつけられたまま７回に入ると、長嶋さんは、「なんとかしなくては・・・」と、焦り始めたそうですが、この焦りがいけなかったようで、この回の打席は、小山さんの絶妙なコントロールで、たちまちカウントを追い込まれると、２-２から見逃しの三振を喫してしまったのだそうです。
（ただ、続く５番の坂崎さんは、小山さんの速球を狙いすましたように、ライト前へライナーを打つと、手首を腰に当てた独特のスタイルでファーストを駆け抜け、５回のホームランに続く連続ヒットとなったそうで、カクテル光線の下、坂崎さんの白い歯が光ったのがチラッと見えたそうです）
「長嶋茂雄だけでなく王貞治も天覧試合で同点ホームランを放っていた！」に続く
