追いつ追われつのシーソーゲームとなった天覧試合で、9回裏、打席が回ってきた、長嶋茂雄(ながしま しげお)さんは、阪神のピッチャー・村山実さんが投じた5球目のストレートを強振すると、ライナーでレフトポール際に入るサヨナラ本塁打となります。

「長嶋茂雄は天覧試合の前夜は村山実に抑え込まれていた!」からの続き

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9回裏の5球目が最後の勝負だと確信していた

9回裏の村山実さんとの対決では、4球目でカウントが2-2となり、次の5球目こそ最後の勝負だと、長嶋さんは、打席をはずし、指二本分だけバットを短く持ち直したそうで、

長嶋さんは、著書「燃えた、打った、走った!」で、

村山は、この場で逃げを打つような男ではない。かならず強気で攻めてくる。それが、プロフェッショナルのプライドというものである。

力と力。男と男の真っ向からのぶつかりあいだった。

村山よ、真っ向から投げ込んでこい、オレも真っ向から打っていこうじゃないか・・・

と、綴っています。


燃えた、打った、走った!

村山実から決勝のサヨナラホームランを放つ

すると、5球目、村山さんがグローブをグイと頭の上に上げ、左足を勢いよく上げて投げたボールは、インコース高目のストレートだったそうで、

長嶋さんが強振すると、打球は凄まじいライナーとなってレフトのポール際へ飛んで行ったことから、長嶋さんは、その打球を見ながら駆け出し、レフトの線審をチラッと見ると、富沢線審がぐるぐる手を回していたそうで、決勝のサヨナラ・ホームランとなったのだそうです。

(一塁ベースを回るとき、監督の水原さんが見えたそうですが、たとえ日本シリーズで劇的な一発が出ようと、むしろ冷ややかなほど静かな姿勢を崩さなかった水原さんが、両足をそろえて、まるで子供のように飛び跳ねていたそうです)

ロイヤルボックスを見上げ再び足が震えるのを感じていた

そして、長嶋さんは、大歓声の中、笑顔で三塁ベースを蹴り、ベンチの前で出迎えるチームメートたちの輪のなかに飛び込んだそうですが、

その後、初めてロイヤルボックスを見上げると、明るく輝くボックスにおぼろげな人影が見えたそうで、それが両陛下の姿かは定かではなかったそうですが、再び、小刻みに足が震えてくるのを感じたそうです。

ただ、この震えは、緊張からのものではなく、力の限り戦った後の、何ともいえない爽やかな充実感からくるものだったそうで、長嶋さんは、幸せな気持ちに浸ったのだそうです。

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ボール半個分の狂いが明暗を分けていた

ちなみに、阪神のピッチャー・村山さんの狙いは、この5球目にシュートを投げてファウルさせた後、6球目にファークボールを投げ、三振を取ることだったそうですが、5球目のシュートがうまくかからずストレートとなってインコースに入っていったそうで、

もし、あとボール半個分でもインコースに寄っていたら、確かに村山さんが狙った通り、長嶋さんの打球はレフト線を切れるファウルになっていたかもしれませんでした。

(ちなみに、マウンドの村山さんは、長嶋さんに打たれた瞬間、反射的にニタっと笑ったそうですが、村山さんの長い投手生活で、負けて笑ったのは、この瞬間が最初で最後だったそうです)


1959年に行われた天覧試合で決勝のサヨナラホームランを放つ長嶋さん。

「長嶋茂雄は川上哲治監督から事実上の引退勧告を受けていた!」に続く

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