打撃コーチ・荒川博さんの自宅に毎晩のように押しかけ、荒川さんの指導のもと、肉体の鍛錬のため走り込むほか、合気道の「氣」の考え方を取り入れたスイングなど猛練習をしていた、王貞治(おう さだはる)さんは、そんな中、荒川さん考案の「一本足打法」というバッティングをやってみることになったそうです。

「王貞治は合気道の「氣」を取り入れた素振練習をしていた!」からの続き

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「一本足打法」は荒川博のアイディアだった

王さんは、1961年の秋季キャンプから、新しく打撃コーチに就任した荒川博さんの、合気道の「氣」の考えを取り入れた練習方法で、猛特訓を続けていたのですが、

翌年1962年の春季キャンプでは、荒川さんに、「バックスイングに入る始動が遅いから、打つ時にバットの出が遅れるんだ」と指摘され、それを修正するため、(徹底的に基礎を磨きつつ)タイミングの取り方を工夫する中で、「一本足打法」というアイディアが出されたそうです。

「一本足打法」は合気道の理論の裏付けがあった

ちなみに、王さんは、著書「もっと遠くへ 私の履歴書(日本経済新聞出版)」で、「一本足打法」に至った経緯について、

「荒川日誌」によると昭和三十七年(1962年)の春季キャンプ中の二月十二日のことだった。私のスイングは右足のステップのタイミングに対し、上半身の動きが遅すぎた。つまり上下バラバラ。これを連動させるのが一本足だった。

と、綴っているのですが、

実は、誰が見ても不安定に見えた「一本足」には、合気道による理論的な裏付けがあったそうで、荒川さんとともに合気道を学んでいたという広岡達朗さんによると、師匠・藤平光一先生に、

二本足で立っても一本足で立っても、人間の重心の在りかは一緒である。まっすぐ立っているという状態がまさにそういうことだから、一本足でもいけるはずだ

ボールを打ちに行くから、かわされる。ボールはいずれ『来る』んだろう?それならすーっと立って待って、ストライクをぽーんと打ちゃいいんだ

と、ヒントを与えてもらい、

「一本足」というのは、そもそも、決して反動をつけるためではなく、相手のモーションに合わせて、待てるようにするための工夫なのだと、理解したのだそうです。

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「一本足打法」は当初はイメージトレーニングとして活用していた

こうして、荒川さんは、この考えが精神的支柱となったそうで、

大下(弘さん・西鉄ライオンズ)や 、うちの監督(川上哲治さん)も、場合によっては一本足をやっていたんだ

と、言ったそうですが、

王さんにとっては、雲をつかむような話で、この「一本足打法」に取り組むも、なかなか感じがつかめず、当初は、実践で使うものではなく、イメージトレーニングのようなものだったそうです。

(大下さんや川上さんら往年の名選手も、調子が崩れた時に、足を高く上げるということはやっていたそうですが、それはあくまで気分転換的なもので、王さんのように、常時足を上げてその体勢のままじっと待つ、という打法ではなかったそうです)

「王貞治は荒川博の大見得で一本足打法で打つことになっていた!」に続く


荒川博さんから「一本足打法」の指導を受ける王さん。

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