18歳の時、「熱海殺人事件」「蒲田行進曲」を観て以来、つかこうへいさんの熱心なファンとなると、趣味で上演したつかこうへいさんの「広島に原爆を落とす日」が人気を博し、なんと、つかこうへいさん本人から呼び出しを受けたという、岡村俊一(おかむら しゅんいち)さん。

そんな中、つかこうへいさんから次にやる公演は何がいいか聞かれ、「飛龍伝’90」と提案すると、大ヒットとなり、以来、つかこうへいさんから厚く信頼されるようになったといいます。

今回は、岡村俊一さんの、つかこうへいさんとの出会い、つかこうへいさんの右腕になるまでの経緯などをエピソードを交えながらご紹介します。

岡村俊一

「岡村俊一(演出家)の若い頃から現在までの演出舞台ドラマ映画は?」からの続き

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岡村俊一は18歳の時に初めてつかこうへいの「熱海殺人事件」「蒲田行進曲」を観て圧倒されていた

岡村俊一さんが初めてつかこうへいさんの作品を観たのは、18歳ぐらいの時で、

「熱海殺人事件」(風間杜夫さんほか)か「蒲田行進曲」(柄本明さん、加藤健一さんほか)、どちらが先かは覚えていないそうですが、

同じ演劇部の一つ先輩だったマキノノゾミさんに連れて行かれる形で、初めてつかこうへいさんのお芝居を観た際には、

その素晴らしさに圧倒され、感激のあまり、

すごいっすね!すごいっすね!

と、連呼したそうで、

岡村俊一さんは、

当時はつかこうへいさんは圧倒的にブームでした。演劇雑誌は「新劇」「テアトロ」の2誌がありました。この「新劇」に掲載される人たちってすごい人たちだった、そのすごい人がつかこうへいさんや唐十郎さん。

イチ演劇部員の目から見たら「すごいものが世の中にあるんだ」って(笑)。この頃の「新劇」や「テアトロ」は権威として存在していましたね。

と、語っています。

岡村俊一は西武百貨店の店員から銀座セゾン劇場の社員へと劇的なキャリアアップを果たしていた

こうして、つかこうへいさんの作品の虜(とりこ)になったという岡村俊一さんは、大学卒業後は劇場の仕事に携わりたいと思ったそうですが、あえて西武百貨店に入社したそうで、

最初はワイシャツ売り場からのスタートだったそうですが、虎視眈々とチャンスをうかがい、着実に実績を重ねると、やがては、念願叶い、「銀座セゾン劇場」に勤務することができたといいます。

(当時は、企業の文化事業が盛んだったバブル期で、あらゆる会社が劇場運営に乗り出していたそうで、そんな時代だからこそ、売り場から劇場というジャンルの異なるルートも実現可能だったそうです)

岡村俊一は趣味で「広島に原爆を落とす日」の公演を行って人気を博しつかこうへいから呼び出されていた

そんな岡村俊一さんは、「銀座セゾン劇場」に勤務する中、趣味として、「駅前劇場」などで、渡辺いっけいさんや筧利夫さんと、下北沢辺りでお芝居をやっていたそうで、

1989年末には、3日間だけ人を集めてイベント的な公演をやろうと考え、本多劇場でつかこうへいさんの「広島に原爆を落とす日」というお芝居を上演したそうですが、

(出演メンバーは、池田成志さん、筧利夫さん、加納幸和さん、羽場裕一さんほか)

なんと、その年(1989年)の演劇専門誌「演劇ぶっく」の人気投票では、この「広島に原爆を落とす日」が2位となったのだそうです。

すると、つかこうへいさんに呼びだされたそうで、岡村俊一さんは、怒られるのかと思い、ドキドキしながらつかこうへいさんに呼ばれた場所に行ったそうですが、

(この時、岡村俊一さんは、初めてつかこうへいさんと会ったそうです)

つかこうへいさんには、いきなり、

おい、お前、俺が次に何やるか、お前が決めろ

と、言われたのだそうです。

実は、つかこうへいさんは、この時、「幕末純情伝」をパルコでロングラン公演していたのですが、それにもかかわらず、岡村俊一さんらが上演した「広島に原爆を落とす日」が「演劇ぶっく」の人気投票で2位となっていたため、

(1位は、「夢の遊眠社」か「劇団四季」だったそうです)

「(「幕末純情伝」を)抜いている奴がいる!」となり、「これを作っている奴を探せ」とスタッフに命じて岡村俊一さんを探し当てたのだそうです。

岡村俊一がつかこうへいに提案した「飛龍伝’90」はロングラン上演となる大ヒットとなっていた

すると、その後、タイミング良く、岡村俊一さんが勤務していた「銀座セゾン劇場」で翌1990年11月に予定していた別の演目がキャンセルとなったそうで、

岡村俊一さんが、神の啓示に違いないと思い、つかこうへいさんに、「飛龍伝’90」を上演することを提案すると、

つかこうへいさんは、

わかった、それでやる

と、即答したそうで、

(2秒で決定したそうです)

1990年11月、「銀座セゾン劇場」で「飛龍伝’90」を上演すると、連続上演(ロングラン上演)となる大ヒットとなったのだそうです。

岡村俊一はつかこうへいの復活に大きく貢献していた

こうして、「銀座セゾン劇場」はとてつもない大成功を収めたそうですが、実は、この大ヒットで、つかこうへいさんも起死回生の復活を遂げていたといいます。

というのも、つかこうへいさんは、1970年代に「つかブーム」を巻き起こし、演劇界の頂点に立つも、1982年に、突然、「つかこうへい劇団」の解散(滅亡宣言)を発表して、演劇活動を休止すると、

以来、演劇界から距離を置いて、小説家としての活動に専念し、”隠遁”に近い状態にあったそうで、演劇界においては、つかこうへいさんのスタイルは”過去の遺物”になりかけていたのだそうです。

そんな中、1990年11月に上演された「飛龍伝’90」は、演劇界レジェンド(つかこうへいさん)が再び最前線へと返り咲くための、一世一代の勝負であり、もう一度、今の時代(1990年)に自分の演劇が通用することを証明しなければならない、崖っぷちの再挑戦だったというのです。

この成功で、岡村俊一さんは、毎日、つかこうへいさんに呼ばれるようになったそうで、

岡村俊一さんは、その時の様子を、

若手役者の友達がいたんで、つかさんが「そいつ、連れてこい」みたいな。当時、若手の小劇場畑の人間を連れてくる係みたいに、それですぐに・・・当時は毎日、呼ばれていましたので(笑)、

「飛龍伝’90」のヒットのこともあったし、ちょっと神がかり的な成功だったので・・・いや、ちょっとどころじゃない、セゾン劇場にとってとんでもない成功、つかこうへいさんにとってもこの公演は起死回生。

「絶対的なヒット作」っていうのが突然できてしまいましたので、当時は毎日、一緒にいまして、毎日、焼肉食って(笑)「第2次つかブーム」みたいな感じでした。

と、語っています。

岡村俊一はつかこうへい作品を数多く演出

以降、岡村俊一さんは、長い間、つかこうへいさんに信頼され、つかこうへいさんの作品を次々と演出しているのですが、

2010年につかこうへいさんが他界された後も、つかこうへいさんの命日に合わせて追悼公演や代表作の上演をしており、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌といった節目に大規模な公演を精力的に続けています。

ちなみに、代表作の定期公演、記念公演には、

  • 「熱海殺人事件」・・・「つかこうへい復活祭」として、キャストや演出を時代に合わせてアップデートしながら(例:「Battle Royal」「LAST GENERATION」など)、毎年のように上演されています。
    「熱海殺人事件」
    「熱海殺人事件」の会見より。(左から)今泉佑唯さん、味方良介さん、石田明さん、佐藤友祐さん。
  • 「飛龍伝」・・・岡村俊一さんが「銀座セゾン劇場」時代に復活させた思い入れの強い作品のため、「初級革命講座 飛龍伝」などの原型を含め、繰り返し上演しています。
    「初級革命講座  飛龍伝」
    「初級革命講座 飛龍伝」より。吉田智則さんと佐々木ありささん。
  • 「つか版忠臣蔵」(2012年)・・・「三回忌」
    「つか版忠臣蔵」
    「つか版忠臣蔵」
  • 「幕末純情伝」(2016年)・・・「七回忌特別公演」などで上演しており、桐谷美玲さんや松井玲奈さんなど、その時々の旬な女優をヒロインに迎える、岡村俊一さんらしいキャスティングが特徴です。
    「新・幕末純情伝」
    「新・幕末純情伝」より。松井玲奈さんと石田明さん。
  • 「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」(2022年)・・・「十三回忌追悼公演」
    「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」
    「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」舞台挨拶より。(左から)高橋龍輝さん、北野日奈子さん、味方良介さん、石田明さん、佐々木ありささん。
  • 「熱海殺人事件 ラストメッセージ」(2026年)・・・「十七回忌特別公演」
    「熱海殺人事件 ラストメッセージ」
    「熱海殺人事件 ラストメッセージ」

などがあります。

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岡村俊一は「つかこうへい Triple Impact」として3作品を同時上演していた

また、岡村俊一さんは、2015年には、つかこうへいさんの作品で、全く違う切り口の以下の3作品も、「つかこうへい Triple Impact」として、同時上演しています。

  • 「いつも心に太陽を」
  • 「初級革命講座 飛龍伝」
  • 「ロマンス2015」

「つかこうへい Triple Impact」
「つかこうへい Triple Impact」

「岡村俊一の妻・藤谷美和子との馴れ初めは?結婚後の夫婦関係は?子供は?」に続く

お読みいただきありがとうございました

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