1966年6月24日から7月4日まで、西ドイツ、日本、フィリピンを回るツアーを行うも、フィリピンでは命を狙われるという予想だにしなった危機に見舞われた、「The Beatles」でしたが、受難はまだまだ続きます。

「ビートルズがフィリピンで殺されそうになったイメルダ事件とは?」からの続き

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ジョンレノンがキリストを冒涜したと暴動

フィリピンでメンバーの命が狙われるという最悪の事態に直面したことで、「The Beatles」のマネージャーであるブライアン・エプスタインさんは、1966年8月の全米ツアーを最後に今後のツアー計画を白紙にすることにを決定したのですが・・・

そのアメリカでも、「The Beatles」はさらなる批判を浴びることに。

実は、ツアーが始まる前の1966年3月、コラムニストのモーリン・グリーブさんによるジョン・レノンさんのインタビュー記事が「ロンドン・イブニング・スタンダード」誌(英語版)に掲載されていたのですが、

この記事の一部が、8月から始まる全米ツアー間際に、アメリカのティーン雑誌「デイトブック」に転載。

ただ、元の記事が、紙面にして2ページという量だったにもかかわらず、「デイトブック」は、

キリスト教はダメになっていくだろう。消え去るか、弱小化するはずさ。それに関しては、議論の余地がない。僕は正しいんだし、その正しさはいつか証明されるだろう。今は、僕たちのほうがイエスより有名なんだ。

という発言だけを抽出して掲載。

これが、キリスト教への冒涜だとして、ラジオを中心にジョンさんを非難する声が上がり始め、「The Beatles」の、レコード、ブロマイド、ポスターといったグッズが組織的に破棄・焼却されるほか、「The Beatles」」の楽曲の放送を禁止するなど、瞬く間に抗議活動が広まったのです。


笑顔で「The Beatles」のグッズを燃やす人々。

誤解だったが・・・

これに対し、インタビュアーを務めた、モーリン・グリーブさんは、

ジョンの言葉が私の記事から文脈を無視して引用され、あんなふうに 誤って解釈されるなんて、驚きました。

彼はただ、ビートルズのほうが多くの人間に知られているということを客観的に述べたにすぎないのです。しかも、そういう状況をよしと思うのでなく、嘆いていました。

と、ジョンさんがキリスト教を冒涜したというのは全くの誤解であると、ジョンさんを擁護したのですが・・・

死の恐怖の中で全米ツアー

ジョンさんは、全米ツアー初日の前日である8月11日に、釈明(謝罪)会見を開いたのですが、翌8月12日から始まった全米ツアーでは、メンバーたちはいつ誰に殺されるかわからないという恐怖の中、大衆の前で演奏しなければならず、大きな精神的な負担を強いられます。

そして、釈明(謝罪)会見の効果もあってか、北部では何事もなくライブは無事に終了したのですが、バイブル・ベルト(アメリカ合衆国の中西部から南東部にかけて複数の州にまたがって広がる地域で、非常に信仰心の厚い地域)に到着した際には、乗っているバスの窓が群衆によって叩かれるなど危険な事態に。

テネシー州のメンフィスでは、公演当日に脅迫の電話が入っていたほか、本番中には発砲音らしき音が鳴り響いたそうで、

ステージ脇にいた私たちとステージにいたビートルズの3人は、みんな即座にジョン・レノンのほうを見たよ。そのとき彼が倒れるのを見ても、きっと驚かなかっただろう。

と、ツアーに同行していた広報担当のトニー・バーロウさんは、自分も他のメンバーも、ジョンさんが撃たれたのかと思ったと、語っておられます。

(この音の正体は、爆竹だったそうです)

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ツアーは二度としなかった

こうした状況下に、「The Beatles」のメンバーは、いつどこで殺されるか分からない恐怖と、休みのないハードスケジュールが重なり、心身ともに限界を迎えつつあったそうで、

8月29日、ツアー最終日となるサンフランシスコへの道中では、ポール・マッカートニーさんが、これを自分達の最後のライブにしようと思ったのか、

テープレコーダーを持ってるんだろう?今夜のを録ってくれないか?今夜のを録音してくれよ

と、広報のトニーさんに提案しているほか、

ジョージ・ハリスンさんは、コンサート終了後の帰りの飛行機の中で、

さあ、終わったぞ。僕はもうビートルズじゃないんだ!

と、つぶやいており、

実際、「The Beatles」は、その後、スタジオでの創作活動に没頭し、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(1967)、「ホワイト・アルバム」(1968)などの傑作アルバムを次々と生み出すも、ツアーをすることは二度となかったのでした。


サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド


ホワイト・アルバム

「ポールマッカートニーは昔ビートルズに裁判を起こしていた!」に続く

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