子どもたちのために懸命に働くお母さんとは正反対に、お酒を飲んでは暴れるお父さんを嫌っていた、武田鉄矢(たけだ てつや)さんですが、自身の経験から、父親、母親、それぞれに、親孝行の方法が違うことを発見されたといいます。果たしてその方法とは?
「武田鉄矢の父親との悲しい関係とは?」からの続き
著書「私塾・坂本竜馬」が文庫化
武田さんは、2010年に、著書「私塾・坂本竜馬」を出版されているのですが、2015年に文庫化された際、自身の体験と反省に基づき、上手な親子関係の築き方と親孝行の方法について、語っておられます。
父親に対する親孝行の方法
武田さんによると、父親と母親はそれぞれ親孝行の仕方が違って良い、というより、むしろ違っていたほうが良いそうで、
まず、お父さんについて、「威厳がなければ父親ではない」と思う人が多いなか、実際には、その正反対で、「かっこ悪い父親であることこそ幸せ」だというのです。
というのも、最後まで尊敬に値する父親たろうとする男たちの晩年は、「あまり幸せじゃない」という気がするそうで、
実際、武田さんのお父さんは、晩年、ガンで入院されている時、武田さんがお見舞いに行っても、
おれはいい。隣の人が死にかかってるから、お前がひと声かけて、サインでもしてやれ。元気が出るから。
と、一生懸命かっこいいところを見せようとしていたそうですが、
武田さんが帰ろうとすると、
もう帰るとか
と、うっすら目に涙をためていたそうで、
武田さんは、そんなお父さんの姿から、
本当は「もっといてほしい」「さびしい」と、親父は言いたかったかもしれない。親父は「強い父親像」を守ろうとしていて、無理したまま亡くなったんだと思います。
そういう親の心を、ぼくはどこかわかっていながら、認めず放っておいた。いまだにぼくは息子として親孝行ができなかったと悔いています。
じゃあ、何が親孝行か。ぼくは父親がさびしさや悲しさを少しでも出したときに、否定せず認めることだと思うんだ。だから、みなさんは強がっている父親の威厳をなくしてあげてください。
と、お父さんへの親孝行の仕方を伝授されています。
母親に対する親孝行の方法
その一方で、お母さんに対しては、お父さんと違って、決して敗者にさせてはならないそうです。
というのも、お母さんが亡くなる数ヶ月前、お母さんは、武田さんに車を買ってあげると言ってくれていたのですが、武田さんは、お金を使わせるのは忍びないと、断ったそうです。
すると、お母さんは、娘たち(武田さんの姉たち)に、
鉄矢はかわい気がない
と、こぼしていたそうで、
武田さんは、そんなお母さんの姿から、
ぼくは母に母親であることをまっとうさせてあげられなかった。 それを経験して、母親に働かせないとか、楽をさせようとかって思うと、逆に、それが母親の役を取り上げることになるんだと学びました。
ずうっと子供でいること、それがいちばんの母親孝行だと思います。
と、お母さんへの親孝行の仕方を伝授されています。
つまりは、
父には、敗者として認めてあげる、母親とは「今日も引き分け」だった。
という風に両親に接すれば、親も子も幸せになれるのではないか、とのことでした。
「武田鉄矢は20年間ウツだった!救われたユングの言葉とは?」に続く