劇団「民藝」で華々しく女優デビューを果すも、内心、悶々とした日々を過ごしていた、吉行和子(よしゆき かずこ)さんですが、唐十郎さんらに誘われ、「少女仮面」に出演すると、初めてお芝居の楽しさに目覚めます。
唐十郎の舞台で芝居の楽しさに目覚める
唐十郎さんらから誘われたのをきっかけに、ついに、劇団「民藝」を辞めた吉行さんは、唐十郎さんらの舞台「少女仮面」に出演されるのですが、
実は、その舞台は、「民藝」時代よりずっと小さく、観客も行儀が悪い人たちばかりだったことから、観に来てくれた「民藝」時代のお客さんからは、
あなた、みじめねえ
と、言われたそうです。
それでも、吉行さんは、
ここからもう一度青春が始まる
と、逆に、とても晴れやかな気持ちだったといいます。
というのも、吉行さんは、この時、初めてお芝居の楽しさを知ったそうで、実際、それ以降は、自分がやりたい演目を探し、スタッフを集め、舞台を上演する、というスタイルで、お芝居を続けられたそうで、
後に、吉行さんは、
父は、新しい小説が書きたくてダダイストの道を選んだ作家。兄もそう評したように、私にはそうした父の血が最も濃く流れている、このころからずっと、そう感じていました。
と、語っておられました。
「少女仮面」より。
一人芝居「MITSUKO」
そんな吉行さんは、1992年には、生の舞台を観たことのない人たちに観てもらいたい思いで、「MITSUKO」という一人芝居をスタート。
すると、その後、このお芝居は13年続くのですが、その頃には、舞台がどんなものか、自分なりに答えが出たように思えたそうで、この「MITSUKO」を終えたら、次作を最後に舞台から降りようと考えられたそうです。
舞台からの引退を表明
そして、2008年、夫に先立たれ、1人になったことのショックから記憶喪失になった女性が、やっと一人でいることを受け入れ、生きていく姿を描いた舞台「アプサンス〜ある不在〜」に出演されると、
ああ、これで私も舞台から不在になる、タイトルもぴったりだわ(笑)
と、舞台からの引退を表明されるのですが・・・
吉行さんの心境とぴったりだったせいか、この舞台は好評を博し、2009年にはアンコール公演が決定。
そのため、2009年、トーク番組「徹子の部屋」に出演された際には、今度こそ、この「アプサンス〜ある不在〜」のアンコール公演をもって、舞台から引退しようという考えと、その撤回も考えていると、その複雑な胸の胸中を語り、
舞台は、「人間が作っている」という要素が非常に大きいし、それをしっかりと感じられる場所です。今の時代は、人間のぬくもりや鼓動、そうしたものと関係なく進んでいる事柄のほうが多い。
だけど舞台はいまだに手作り。丁寧に糸をつむげる場所です。そうした、作る面白さと、お客さまと一緒に過ごす楽しさ、大勢の方からもらうエネルギー、その2つともが大きな魅力で、とてもぜいたくな喜びが得られるのが舞台。だから、長い間なかなか離れられなかったんです。
と、その理由も明かされているのですが、
最後には、
でも、これからは一女優として芝居することだけにエネルギーを注ぎ込みたいと、それはそれで違う楽しみができました。
と、あらためて、舞台から引退し、映画やテレビドラマに専念することを表明されたのでした。