街で圧倒的な存在感を放つ3人のヤクザに遭遇し、ついて行ったところ、そのうちの一人が、「池の二郎」と分かり、初めて、憧れの「池の二郎」を見た、なべおさみさんですが、高校の親友がこの「池の二郎」の弟だったことから、思わぬ別離が訪れることになります。

「なべおさみはヤクザ「池の二郎(銀座の二郎)」に憧れていた!」からの続き

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「池の二郎」への憧れは親友である弟・三郎には内緒にしていた

高校の親友の実のお兄さんが、憧れていた、銀座のスターヤクザ「池の二郎」(直井二郎)だったという、なべさんですが、

その「池の二郎」さんを、偶然、街で見かけ、その存在感に圧倒されると、その後も、二郎さんの縄張りである「東京温泉」に行き、何度か二郎さんを見たそうですが、

その「池の二郎」さんの弟である、親友の直井三郎さんには、(ラグビー一筋で、ヤクザの話を避けていることを知っていたので)二郎さんに憧れていることや、遭遇したことは知らせていなかったそうです。

蟹さんに「池の二郎」のことを話すと・・・

そんな中、元締のヤクザ・蟹さんのもと、銀座三悪のヒーコヤ(=コーヒー屋=喫茶店)の一つ「ダイヤモンド」を取り仕切っていたなべさんは、蟹さんが、ちょうど6時に、その日のパーティ券の売上を集金しに来て、いつものようにハンバーグステーキライスを食べるのを待ち、最後にコーヒーが出てきた時に、売上を差し出すと、

蟹さんは、4本の指を使って(蟹さんは左右の手とも親指と人差指以外ありませんでした)見事に札束を数え、

うーん、 ひょう は、 い あい に あがい が あっ た なあ(うーん、今日は意外に上りがあったなあ)

と言って、千円札を一つにして大雑把に二つに割り、半分を差し出してくれたそうで、

(この頃、なべさんは、蟹さんが言う言葉が理解できるようになっていたそうです)

なべさんが、札を受け取りながら笑顔になると、蟹さんは初めて笑顔を見せたそうです。

(なべさんは、蟹さんと対応する時、常に顔を見たまま、蟹さんの目から目を離さないようにしていたそうですが、この時、札を受け取りながら、笑顔になると、蟹さんも、初めて笑顔を見せたそうで、それを見たなべさんの取り巻きは驚いたそうです)

そして、なべさんが、蟹さんから与えられたお金を、側にいたものに渡しつつ、

皆で分けな

と言って、礼を促し、皆が口々に「ありがとうございます」と感謝の言葉を口にすると、蟹さんは、さらに笑顔で応えたそうで、

なべさんは、頃合い良しと、

兄貴は池の二郎さんを知ってますか?

と、切り出したそうですが・・・

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銀座を出禁に

二郎さんの名を出した途端、さっきまで笑顔だった蟹さんの目が、突然、ギラリと光ったそうです。

それでも構わず、なべさんは、自分は二郎さんの弟と親友で、兄弟と同じ大田区の人間なのだと話すと、その日は何事もなかったのですが、

後日、蟹さんが、苦い顔をしながら現れると、突然、

お前を銀座で遊ばすなと命じられたから、今日限りでここへの出入りは禁じる。他所へも伝達してあるから、もう銀座へは遊びに来るな。

二郎さんは、弟を不良の世界に入れたくないんだよ。お前は大の仲良しだろ。連れ立って遊ばれたら困ると思って心配してるのさ。だから、お前はしっかり大学へ行けと、中から伝わってきてるんだ

という内容のことを言い、

厳しい顔の中に寂しさをにじませながら、

だいあくにいへっては!(大学に行けってさ!)

と、二郎さんの伝言を話したのだそうです。

(二郎さんは、なべさんが弟・三郎さんと仲が良く、一緒に遊んでいることを知っていたのでした)

こうして、なべさんは、蟹さんと大勢の仲間に見送られ、有楽町の改札口で別れたそうですが、

なべさんは、著書「やくざと芸能と 私の愛した日本人」で、

電車に乗っても蟹さんの恐い睨みと凄みが頭から離れなかったが、それよりも最後の最後に交わしたハサミのような感触の握手と、一寸だけ見せた涙が忘れられない。蟹の目にも涙だった。

と、綴られています。

「なべおさみは安藤組幹部の花形敬と出会い足を洗っていた!」に続く


やくざと芸能と 私の愛した日本人

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