天覧試合で阪神タイガースの村山実さんから逆転サヨナラ本塁打を放ったことが、あまりにも有名な、長嶋茂雄(ながしま しげお)さんですが、実は、村山さんは前夜の巨人戦にもリリーフとして4イニング投げ、巨人打線をシャットアウトに抑えていたそうで、長嶋さんも2打席凡退となっていたといいます。
「長嶋茂雄だけでなく王貞治も天覧試合で同点ホームランを放っていた!」からの続き
阪神はルーキーの村山実がリリーフとして登板していた
天覧試合は追いつ追われつのシーソーゲームとなり、7回裏には再び振り出しに戻ると、阪神は8回、村山実さんがリリーフとして登板したそうですが、
村山さんは、ウォーム・アップからいきなり全力投球だったそうで、ブルペンでかなり肩を作ってきていたのか、顔は一面ギラギラと汗に濡れ、帽子のひさしには白い塩のようなものがこびりつき、ユニフォームは染み出した汗が黒いダンダラ模様を描き出していたそうです。
(村山さんは、この年、関西大学からプロ野球入りしたばかりのルーキーで、汗を飛ばしながら全身を使って投げ込むダイナミックなピッチング(ザトペック投法)が持ち味だったそうです)
前夜は村山実に抑え込まれていた
実は、村山さんは、前夜の巨人戦でもリリーフで登板していたそうで、4イニングをピシャリと抑え、この間、5連続三振を含む7三振の放れ技をやってのけていたそうで、
長嶋さんは、村山さんの凄まじい気迫に押され、ピッチャーゴロと三振に片付けられていたのだそうです。
9回裏の打席が最後のチャンスと思っていた
さておき、8回は両軍共に得点はなく、いよいよ、9回裏、4対4のタイ・スコアのまま、長嶋さんに打席が回ってきたそうですが、
長嶋さんは、
たぶん、この打席がぼくにとって最後のチャンスとなるはずだ。この回、ぼくの打順はトップ。もしここで点をとれなければ、延長にもつれこんで、ぼくの打席がもう一度まわってくるまでに決着がついてしまうだろう。
と、思いながら、大きく息を吸い込み、大股でバッターボックスに向かうと、
バッターボックスに入ってから、もう一度、深々と息を吸い込み、下腹に力を入れてマウンドの村山さんを見たそうですが、
村山さんは、目はギラギラと光るも、疲れのせいか、その目の下には黒いクマができていたそうで、悲壮感が漂っていたそうです。
9回裏の村山実との対決の詳細
こうして、迎えた村山さんとの対決ですが、
第一球目は、ボールで、ホームプレートにかぶさるように構えていた長嶋さんは、際どいところでこの球を見送ると、
村山さんが、「うっ!」という独特のうなり声と共に投げ込んできた二球目は、ぐぐっと大きく落ちるフォーク・ボールで、前夜、長嶋さんが引っかかったのは、この「魔球」ともいえる球で、今回も手が出ず、球審が高々と右手を上げ、ストライク。
三球目は、素晴らしくスピードの乗ったストレートで、待ち構えていた長嶋さんは、体ごと叩きつけるようにして振るも、ホップする速球にわずかに狙いがはずれ、ファウル。
そして、四球目はボールで、カウント2-2になると・・・
「長嶋茂雄は天覧試合で村山実からサヨナラ本塁打を放っていた!」に続く