WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2次リーグでは、アメリカと韓国に敗れて1勝2敗となり、2次リーグ通過が絶望的だったにもかかわらず、メキシコがアメリカを2対1で破ったことで、アメリカ、メキシコ、日本が共に1勝2敗で並び、失点率の差で、奇跡的に準決勝進出を決めた、王貞治(おう さだはる)さんは、準決勝では韓国を圧倒すると、決勝のキューバ戦も圧勝し、見事、世界一に輝きます。
「王貞治はWBCで奇跡的に準決勝に進出していた!」からの続き
準決勝の韓国戦は代打・福留孝介の2ランホームランを皮切りに6対0で完封勝ち
迎えた準決勝の韓国戦では、6回まで0対0と張り詰めた投手戦だったのですが、7回表、先頭打者の松中信彦選手がライト線に二塁打を放つと、
韓国は、次に、多村仁(仁志)選手、今江敏晃選手と右打者が続くのをにらみ、右横手投げの金炳賢投手を登板させるのですが、
王さんが、今江選手の代打として、左打ちの福留孝介選手を起用すると、なんと、福留選手がライトスタンドへ2ランホームラン。
(福留選手は、それまで打率1割5厘と不振が続き、この試合では控えに回っていました)
これが口火となり、日本代表チームは、その後、1死球4安打で3点を追加し、5対0とすると、8回表には、多村選手のソロホームランも飛び出すほか、上原浩治投手、薮田安彦投手、大塚晶文投手が、韓国を0点に抑え、完封勝ちで決勝進出を決めます。
2ランホームランを放つ福留孝介選手(タップでyoutube)
決勝のキューバ戦は5回まで6対1でリードも8回には6対5と追い上げられていた
そして、決勝のキューバ戦では、初回、1死球2死球3安打でいきなり4点を先制すると、先発の松坂大輔投手が先頭打者ホームランは浴びるも、4回1失点と好投(4対1)。その後、5回表には、2点を追加して、6対1とリードを広げるのですが・・・
6回裏には、守備の乱れなども絡み、2点を奪われると、8回には、フレデリク・セペダ外野手に2ランホームランを喫し、6対5と1点差まで追い上げられてしまいます。
(日本は、6回7回8回と3イニング連続で3者凡退しており、試合の流れはキューバに傾いていました)
イチローのライト前ヒットを皮切りに4点を追加してキューバに勝利し世界一に
しかし、9回表、代打の金城龍彦選手がサードのエラーで出塁すると、次の川崎宗則選手はサードゴロも(ホースアウトでランナーが入れ替わります)、西岡選手が投手と一塁手の間に絶妙なプッシュバントし、一死一、二塁のチャンス。
ここで打席に立ったイチロー選手が一二塁間を破る鮮やかなライト前ヒットを放つと、二塁走者の川崎選手が一気にホームベースを回ってホームインし7対5とリードを広げます。
(キューバの好返球で、タイミングはアウトだったのですが、川崎選手が紙一重で捕手のタッチをかいくぐり、右手でホームベースを触ってセーフとなっており、「神の手」と呼ばれました)
さらには、この後、松中選手が敬遠されるも、代打の福留選手のタイムリーヒットで9対5、その後、里崎智也選手が四球を選んだ後、小笠原選手の犠牲フライで10対5とすると、
大塚投手がツーベースとヒットで1点を失うも、最後はグリエル選手を三振に斬ってとり、キューバに勝利。日本は、見事、世界一に輝いたのでした。
松坂大輔選手の談話
ちなみに、MVPは3勝無敗、防御率1.38と圧倒的な投球を見せた松坂投手が受賞しているのですが、
松坂投手は、
最初に味方が4点も取ってくれた。球数制限(95球)も頭にあったから、何とか長い回を投げられたらと思ってしまった
と、語っており、最初は、打たせて取ろうとしていたといいます。
それが、いきなり、先頭打者ホームランを打たれてスイッチが入ったようで、
オールスターゲームでもあんなに飛ばしたことがない
キューバは速球に強いと言われるけど、そう言われれば言われるほど僕はストレートで勝負したくなる。真ん中でもいいと思って、立ち向かった
と、当初の予定を変更。
結果、球種はほとんどストレートで、飛ばしに飛ばして150キロ台を連発し、先頭打者ホームランの後は、4回を2安打に抑え、5三振を奪ったのでした。
松坂大輔投手
イチロー選手の談話
また、全8試合にフル出場して全試合でヒットを打ち、大会ベストナインにも選ばれたイチロー選手も、
今日でつぶれるわけにはいかないけど、そんな気持ちで戦った
今日は体から何かが出ていた。みんなも、これまでと違っていた
このチームと今日で別れなければいけない寂しさも、優勝の喜びと同時にわいてきた
と、いつになく、熱い言葉を発しています。
(祝賀会のシャンパンかけでは、期せずして「イチロー・コール」がわき起こったそうです)
イチロー選手
川崎宗則選手の談話
そして、6対5と1点差に迫られていた9回表、イチロー選手のヒットで二塁から生還した川崎宗則選手ですが、アウトのタイミングでセーフとなっていたのは、捨て身のプレーのたまものでした。
実は、この時、キャッチャーがブロックしていてホームベースが見えない状態だったそうで、右側から滑り込み、左手でベースに触れようとしたそうですが、瞬時に、間に合わないと判断し、キャッチャーの膝下から無理やり右手を突っ込んだそうで、
(最悪、右腕が折れる、ギリギリのプレーでした)
危険だということは分かっていたが、夢中だった
と、語っています。
川崎宗則選手
打率、本塁打、盗塁でナンバーワンの成績
そんな熱い選手たちに、王さんは、
君たちは最高だ
と、声をかけたそうですが、
実際、日本は、攻撃では、大技、小技を織り交ぜ、打率、本塁打、盗塁でナンバーワンの成績(打率3割1分1厘、10本塁打、13盗塁)を残したほか、投手陣も、防御率2.49と好成績を残したのでした。
胴上げされる王監督。