阪急とのオープン戦では、内角高めを攻められ、全く打つことができずに終わるも、取材に対しては、笑顔で答えるなど、余裕を見せていた、田淵幸一(たぶち こういち)さんは、3月26日、ロッテとのオープン戦で(60打席目)、ついに初ホームランを放ったそうです。

「田淵幸一は阪神入団直後のオープン戦では内角を攻められ打てなかった!」からの続き

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久しぶりの快音も大ファウル

キャンプで内角高めに弱点があることが発覚すると、瞬く間に他球団にその情報が知れ渡り、対戦する全球団から内角攻めに遭っていたという田淵さんですが、

1969年3月8日、南海戦で、7番・捕手として出場すると、2回、先発・皆川睦夫投手から、初球、いきなり、内角低めのストレートを叩いた打球は左翼ポールの左へ飛んでいき、場外へ飛び出す大ファウルとなったそうです。

(久しぶりの快音だったそうです)

しかし、喜びも束の間、内角シュートが左手に当たってデッドボールになると、結局、この日は、3打数1安打2三振1死球に終わったのだそうです。

南海の野村克也が田淵がホームランを打てない原因を解説していた

そんな(ホームランが打てない)田淵さんを、当時、南海の兼任コーチだった野村克也さんは、サンケイ新聞(3月13日付)で、

今の田淵は「打とう」という意識が強すぎる。そのせいで上体が早く出過ぎる。ウチとの試合(8日)で皆川の内角球を左手に当てたが、このコースのタマを避け切れないのが田淵の「悪い癖」を端的に物語っている。

もっとタマを引きつけなければいけない。そうすれば簡単に避けられるコースだった。このため、うまくミートしてもただバットに当てているだけで、これでは打球にドライブがかかるしホームランにはならない。バットにタマがへばり付くぐらいの感じで持っていかないとダメだ。

結局、打てないことから来る「焦り」が一番大きい。じっくりボールを引きつけ、バットを最短距離で振れれば、打てるようになる

と、解説していたのですが・・・

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オープン戦60打席目でプロ初ホームラン

田淵さんは、3月26日、東京球場で行われたロッテとのオープン戦に6番捕手として先発出場すると、第1打席は、先発・成田投手の外角低めのスライダーをバットの先に当てて浅い中飛、第2打席は、内角低めに落ちるフォークボールを空振り三振、第3打席は、2番・妻島(ぶすじま)投手にも、内角を攻められ三ゴロと、相変わらず、パッとしなかったのですが、

9回、第4打席では、妻島投手の初球・外角高めのストレートを捉えると、打球は左中間スタンドの最上段へライナーで飛び込み、実に、オープン戦60打席目にして、プロ初ホームランを放ったのでした。

ちなみに、田淵さんは、試合後、取材に対し、

外角のストレート・・・長かったです

とコメントしているのですが、

「ホームランが出るまで?」の記者の質問に対し、

いや、違います。ホームランを打ってベースを一周する距離がです。こんな気持ちでベースを回ったのは初めてです。

センターフライや三振のときスタンドから浴びせられた野次なんか耳にビンビン響いたのに、ホームランの時は頭が真っ白で、まだ二塁ベースか、ホームベースはまだか-って気持ちでした

と、答えています。

「田淵幸一の初ホームランはロッテバッテリーの温情によるものだった!」に続く

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