NPB(日本プロ野球)とMLB(メジャーリーグ)で通算28シーズンもの間プレーし、NPBでは7年連続首位打者、MLBでも、シーズン最多安打記録(262安打)を更新するほか、メジャーデビューから10年連続3割以上200安打以上を記録したイチローさんですが、そんなイチローさんにも、スランプで打撃不振に陥った時があったといいます。
今回は、イチローさんがスランプに陥っていた時期と、イチローさんがスランプで打撃不振に陥った時、脱出するため何を考えどのように対処していたのかををご紹介します。
「イチローはMLB移籍当初はファンからもブーイングを浴びせられていた!」からの続き
イチローはオリックス入団5年目の1996年から8年目の1999年4月11日までスランプに陥っていた
イチローさんは、NPB(日本プロ野球)では、オリックス入団3年目の1994年から9年目の2000年まで、7年連続首位打者となっているのですが、
それでも、入団5年目の1996年シーズンから1999年4月11日までスランプに陥り、特に、1998年は深刻なスランプを感じていたそうで、
様々なインタビューで、
5年目の僕は、スランプ状態に陥っていたんです。だけど結果が出てしまう。その感触が何とも気持ち悪かった
僕が日本一になった年、1996年。僕はその1年スランプだった。スランプだったけど、なぜか首位打者になるし、MVPにもなるし、変な感じだった。スランプでこの結果はおかしいよなって考えるようになった。
その年に初めて日米野球を経験して「ああ、すごいのいるな」と初めて自分の皮膚感覚で感じた。アメリカに行ったら、日本と同じような結果を出せないなと思った。
それが実は(メジャーを目指した)最初の動機。おかしいでしょ。おかしいですよね、憧れとかじゃない。
と、語っています。
(実際、イチローさんは、1998年は21併殺打しており、5月にはパ・リーグワーストタイ記録となる4試合連続併殺打を記録しているのですが、そんな中、1996年は打率3割5分6厘、193安打、1997年は打率3割4分5厘、185安打、1998年は打率3割5分8厘、181安打、1999年は3割4分3厘、141安打と、全てのシーズンで首位打者を獲得しています)
ちなみに、あるカメラマンが、イチローさんの打撃の写真を撮る時には、シャッタースピードを遅くしても、顔がきれいに写っていたのが(体の軸がぶれない理想的な打撃フォームをしているため)、1999年春のキャンプでは、「今年は、彼の顔がぼやけて写る」と首をかしげていたそうで、
イチローさんはこの時、肉眼では確認できないほどのわずかな軸のズレが原因で、スランプに苦しんでいたのかもしれません。
イチローはMLBで10年連続3割200本継続中も2ヶ月以上2割台が6シーズンあった
また、イチローさんは、MLB(メジャーリーグ)でも、移籍1年目の2001年から10年目の2010年まで、10年連続で3割以上200安打以上しているのですが、
毎年、必ず、2割台の月があったほか、2ヶ月以上連続して2割台だった年も6シーズンあったそうで、長期に渡って打撃不振に陥っていたそうです。
ただ、イチローさんは、いずれも、シーズンをまたぐことなく打撃不振から脱出しており、
2004年には、3~4月と6月の2回、2割台となるも、MLBシーズン最多安打記録を塗り替えているほか、
2015年には、夏の時期に、自身ワースト34打席無安打という打撃不振に陥るも、7月8日、35打席ぶりにヒットが出ると、7月20日の試合では3安打を記録し、スランプから抜け出しています。
イチローのスランプ脱出方法
そんなイチローさんは、スランプに陥った時、どう考え、どのように対処していたのでしょうか。
イチローさんは、スランプの対処法を聞かれると、
対処しないことです。辛くてもそのままやってください
と、答えています。
つまり、イチローさんは、スランプの時、いきなりベストの状態に戻そうとはせず、良くも悪くもない普通の状態(中間地点)を修正の参考にしているのだそうです。
一般的には、選手はスランプの時、好調時の打撃フォームをビデオで見て、現在どこが問題かどこを修正すれば元に戻るかを考えるそうですが、イチローさんはというと、一番良い状態を思い出そうとすると、理想の状態と現実のギャップを感じて余計に苦しくなるのだそうです。
イチローは準備(毎日同じルーティーンを淡々とこなすこと)を重要視することで結果に一喜一憂せずスランプを脱出していた
また、イチローさんは、自分をコントロールするのに重要なことは、(試合に至るまでの)「準備」だと考えており、その準備というのが、「毎日同じルーティーンを淡々とこなす」ことなのだそうです。
つまり、その結果、凡打を打ったとしても、一喜一憂せずに冷静に受け止めることができ、スランプを脱出することができるのだそうです。
例えば、イチローさんは、現役時代、毎朝、欠かさずカレーを食べていたそうですが、その理由について、
朝起きて試合が終わるまで、余計なことを考えたくないし、ストレスを感じたくないわけですよね。例えば、毎日違うもの食べてると、当たり外れがありますよね。
「うわ、うまい!」とか「うわ、いまいちだな」とか。そういうことを試合前に思いたくないということですね。だからそこは毎日同じにしているのではないでしょうか。
試合のために行う練習は準備であり、準備は言い訳を排除するものである
と、語っています。
また、イチローさんは、
同じものを毎日食べ続けているとわずかな違いに気付くようになる。うまくなるためには小さい違いに気付ける感覚がすごく大事
と、ルーティーンの大切さを語っています。
(イチローさんのルーティーンはほかにもあり、試合でバッターボックスに立った際には、毎回、同じようにバットを構えていたほか、試合後は必ず自分でグローブを磨いていたそうです)
ちなみに、イチローさんが、”毎朝欠かさずカレーを食べている”という話は、都市伝説のように語られていたのですが、
講演会の後、サインをお願いされた選手から
今でも毎日カレーを食べていらっしゃるのですか?
と、聞かれると、
イチローさんは、「それを話し始めると長くなる」と前置きしつつ、
ホームゲームで家にいた時だけだから。1シーズン162試合のうち半分だから、MAX81回になるけれど、そこまでは食べていない。ビジターの時はハンバーガーとか食べていたよ
と、詳しく明かしています。
イチローは「スランプの時こそ絶好調」と考えていた
そして、イチローさんは、「スランプの時こそ絶好調」という考え方をしていたそうで、
5打数ノーヒットの時ほど面白い
とも、発言しています。
つまり、もし5打数5安打ならば、そこから得るものは少ないが、5打数ノーヒットなら、どうしたら打てるかを考え抜くことで、頭が冴えわたるというのです。
(それがヒットを量産できた秘訣なのだそうです)
イチローさんの、準備(毎日のルーティーン)を粛々とこなし、「スランプの時こそ絶好調」という考え方は、凡人でも参考になるかもしれません。
「イチローは第1回WBCでは強いリーダーシップで日本を世界一に導いていた!」に続く