「東洋劇場」に入団するも、極度のあがり症でお芝居のセリフがまともに言えず、才能がないからとクビを宣告されてしまった、萩本欽一(はぎもと きんいち)さんですが、思いもよらないことでクビが撤回されます。

「萩本欽一の若い頃は東洋劇場を3ヶ月でクビ?」からの続き

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「はい!」でクビが撤回?

「東洋劇場」に入団したものの、たった3ヶ月でクビを宣告された萩本さんは、しばらくショックでぼーっとしていたそうですが、

(萩本さんは、「悪いけど、お前は芽が出ないよ」と言われて、すかさず、「僕もそう思います!」と答えてしまったそうで、さすがに先生も苦笑いしていたそうです)

師匠筋の池信一さんが、

先生が通っていったけど、何かあったのか?

と、聞いてくれたそうで、

ちょうど今、クビになったところです

と、答えると、

お前はそれで納得しているのか?

と、聞かれ、

自分に才能がないことは分かっていたため、納得はしているが、何をやるにも人一倍時間がかかるタイプなので、3ヶ月といわず、もう少し長いスパンで見てほしい気持ちもあったことを、池さんに伝えると、

池さんは、

そうか、わかった

と、だけ言って、先生のところに向かっていったそうで、

なんと、それから1分も経たないうちに、クビが撤回されたことを伝えられたのでした。

というのも、池さんは、先生に、

たしかにあいつは何もできない男です。ただ、あんなに気持ちのいい「はい!」という返事はそうそうない。あの「はい!」に免じて残してくれないか。

と、言ってくれたそうで、

その後、萩本さんは、先生から、改めて、

この仕事は誰かに応援されて初めて成立する。お前のように下手クソで才能もない奴を応援する人がいるということに俺は驚いた。ひょっとすると、お前は何者かになれるかもしれない。いいか、絶対に辞めるなよ。

と、言われたというのです。

ちなみに、萩本さんは、後に、

「はい!」という声が大きかったのは、中学のときの先生の影響もあるわけでしょうし。それもあるし、レストランでアルバイトしていた経験もあるかな。

大声で返事しないと、厨房まで聞こえないような店だったから。不思議なもので、人生って全部が繋がっているんだよね。ある意味、無駄なことなんてないというかさ。

と、語っておられます。

地方巡業で腕を磨く

こうして萩本さんは、「東洋劇場」で、2年3ヶ月、芸人修行を積むと、その後、先輩芸人から、地方での仕事はいい腕試しになると勧められ、1年間、地方巡業に出ることに。

ただ、地方巡業では、お客さんはヌードを観に来ており、そのショーの合間に萩本さんが一人でコントをするため、

男を観に来たんじゃないんだ、引っ込んでろ!

と、野次を飛ばされます。

それでも、

萩本さん:ダメなの!

客:何でだよ!

萩本さん:これをやらないと、ギャラの800円がもらえないの!

と、お客さんとやり取りすると、客席は大ウケしたそうで、

萩本さんは、このようなドサ周りですっかり舞台に立つ度胸がつき、それから1年後、浅草に戻ると、「東洋劇場」の支配人から、「東洋劇場」と同じ建物にあり、「東洋劇場」よりも格上の「フランス座」に行くことを勧められたのでした。

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坂上二郎との出会いは最悪だった

実は、この頃、「フランス座」では、舞台で笑い出したり、思いつきで劇と関係ないアドリブを入れたりしている芸人が多く、フロントが、現場の雰囲気を引き締めるため、若手で成長著しい萩本さんを主役に抜擢するという趣旨だったそうで、

1959年のある日、萩本さんは、主役待遇で「フランス座」を訪れるのですが、

格下の「東洋劇場」からやってきた若造が主役待遇ということがおもしろくない「フランス座」の芸人たちは、「よけいな者が来やがって!」と誰も口を聞いてくれず、

さらには、舞台の上でも、突然、台本にないセリフを言われるなど、イジメの標的にされてしまいます。

中でも一番ひどくイジメてきたのが、坂上二郎さんだったそうで、二人が初めて、踊り子のショータイムの幕間コントで組んだ時には、

坂上さんは、わざと台本通りに行わずに萩本さんを慌てさせ、舞台をメチャクチャにしたそうで、これには萩本さんも、悔してく悔しくて楽屋で号泣。

ただ、次の共演では、萩本さんもムキになり、

セリフの終わった坂上さんが舞台から立ち去ろうとしたところを、

ちょっと待った!

と、アドリブで絡み、

坂上さんも、負けじと、

この野郎!

と、絡んできたそうで、

なんと、30分近くやりあったそうですが、これがお客さんには大ウケしたのだそうです。

「萩本欽一の初TVCMは19回連続NGで自殺を考えていた!」に続く

坂上二郎(左)さんと萩本さん(右)。

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