自動車販売会社「横浜トヨペット」で、営業成績ナンバーワンのトップセールスマンとして活躍していた、小松政夫(こまつ まさお)さんですが、ひょんなことから、当時、人気絶頂で、大ファンだった植木等さんの付き人募集の広告を見つけます。

「小松政夫は昔は優秀な営業マンで横浜トヨペットに引き抜かれていた!」からの続き

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植木等の付き人募集広告を目にする

役者になるという夢はいつしかあきらめ、自動車販売会社「横浜トヨペット」のトップセールスマンとしてがむしゃらに働く日々の中、日曜日にビアホールで、「てなもんや三度笠」「シャボン玉ホリデー」をテレビで観るのが唯一の息抜きとなっていた小松さんですが、

ある日曜日のこと、いつもの日曜日と同様、ビアホールで「てなもんや三度笠」「シャボン玉ホリデー」を観ていたところ、誰かが忘れていった芸能週刊誌が、ふと目に入ったそうです。

すると、そこには、

植木等の付き人兼運転手募集。やる気があるなら面倒見るよ~~~~~ん

と、囲みで書かれてあったそうで、

(当時、植木等さんは、「クレイジーキャッツ」のメンバーとして大ブレイク中でした)


(左から)安田伸さん、犬塚弘さん、谷啓さん、植木等さん、ハナ肇さん、
桜井センリさん、石橋エータローさん。

小松さんは、営業で成功するも、肝心の役者への道はすっかりあきらめてしまっていた現状への不満と、植木等さんの大ファンだったことから、

これだ!

と、応募したくてたまらなくなり、

(まるで、大草原のなかで四葉のクローバーが「おいでおいで」をしているような感覚だったとか)

その日以来、履歴書の締切に間に合わせようと、毎日ソワソワして仕事どころではなくなったのだそうです。

植木等の付き人募集に応募

ただ、小松さんは、自分を「横浜トヨペット」に引き抜いてくれた営業部長にどう伝えようかと悩まれていたのですが、

思い切って正直に伝えたところ、営業部長は、最初とてもびっくりするも、

そっちのほうが向いているかもしれない

と、背中を押してくれたそうです。

一方、周囲からは、

バカじゃねえか。トップセールスマンと言われる奴が、今さら芸人のカバン持ちがいいだと?

と、言われたそうですが、

小松さんは、

俺はそのつもりで東京に来たんだ

と、気にせず応募されたのでした。

植木等と初めて会う

そして、いざ面接の日、小松さんは、急な仕事が入ってしまい、2時間遅刻されたそうですが、面接に行く途中、必死に電話をかけながら駆けつけたそうで、

それまで、すごい弁護士や医者ほかどんなに偉い人に会っても緊張したことがなかったそうですが、

さすがに、実際に植木さんに会われた時は、それはもう、神様に会ったような感じで、しどろもどろになってしまったそうです。

そんな小松さんに、植木さんは、

松崎(小松さんの本名)君ですか。植木です。よろしくね。

と、映画やテレビのテンションとは違う、静かな語り口調であいさつされ、

植木さんから、

(履歴書を見て)車のセールスをやって優秀だと書いてあるけど、トップセールスマンがなんでまた私のところにきたんだね?

と、尋ねられたそうで、

小松さんは、

今やってる仕事と植木先生とどっちがいいかって言ったらこっちがいいと思って

と、答えられると、

植木さんは、

俺もそうなんだ。お坊さんになるかミュージシャンになるかって色々考えた時、どちがいいかっていったら、こっちがいいから、こっちに入ったんだ。同じだなあ。

と、答えれてくれたのだそうです。

(植木さんのお父さんは、僧侶だったそうです)

植木等を本当の父親だと思う

実は、小松さんが「植木先生」と言ったあと、

植木さんは、

さっき先生と言ったけどな、ああいう呼び方はやめてくれ。君はお父さんを早くに亡くされたそうだから、私のことをオヤジと思えばいい。

と、言ってくれたそうで、

(小松さんは、この言葉で、この人に一生ついていこうと感動されたそうです)

そこで、

オヤジさんと呼んでいいですか?

と、恐る恐る尋ねると、植木さんは、

それはいいな

と、目を細めて喜んでくれたのだそうです。

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600人の応募者の中から採用されていた

ちなみに、小松さん、実は、600人もの応募者の中から、植木等さんの付き人に採用されているのですが、

今の時代だとニートと呼ばれているような人とか、楽器をちょっといじっているやつとか、そういうあんちゃんが、頭ボサボサで膝がやぶけたジーンズ履いているような連中が来ているなかで、私だけパリっとしているわけですよ。

履歴書に写真も貼って出していますからね。毎日365日床屋に毎朝行ってセットしてもらって、顔をそって、超一流の仕立ておろしのスーツを着て、靴もあつらえたのを履いている。

だからもう早いうちに決まっていたんじゃないかな。面接は5分もかかりませんでした。私は何か試験があると思っていたんですよ。だからタイツとか、色々な小道具も持っていっちゃったくらいですからね。

何か芸をやるんだと思って(笑)。何のことはない。向こうはただ運転手が欲しかっただけだったんです

それは汚いやつより清潔なほうがいいに決まっていますしね。天下の植木等ですもん。だから植木が1番驚いたんじゃないですか。

病気上がりでからだも疲れているし、運転手を雇ってくれって渡辺プロに言って、募集したら600人もの人間が集まってね。それで私の経歴を見て「なんでこいつがくるんだろう?」と思っちゃったんじゃないですか(笑)

と、その理由を推測されていました。

「小松政夫と植木等の親子のような師弟愛が泣ける!」に続く


左端が植木等さん、その後ろが小松さん。

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