若い頃は、数多くの任侠映画で、愚痴や文句を言わず、やるべきことを黙々とやり遂げるヒーローを演じ、絶大な人気を博すと、「東映」退社後は、人間ドラマなどで厚みのある演技を披露し、任俠路線のアウトローからの脱皮に見事成功した、高倉健(たかくら けん)さん。今回は、そんな高倉さんの遺作となった映画「あなたへ」についてご紹介します。

「高倉健のデビューからの出演ドラマ映画を画像で!」からの続き

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映画「あなたへ」は6年ぶりの映画出演

高倉さんは、2012年、北陸の刑務所の指導教官・倉島英二が、亡き愛妻・洋子の生前の真意を知るため、指導教官を辞め、九州まで車で旅をするロードムービー「あなたへ」で、主人公・倉島英二役を演じられているのですが、

高倉さんにとって、この映画は中国映画「単騎、千里を走る。」(2006)以来、実に6年ぶりの映画出演でした。

というのも、高倉さんは、「単騎、千里を走る。」の撮影が終わった時、百何十人といた中国人スタッフが、高倉さんに抱きついて泣く姿を見て、

東映の時は「おい高倉、次は千恵蔵先生の映画だ」「次はひばりの相手役だ」と、言われるままに出ていました。泣いてる暇なんかない。

だから中国の体験は衝撃でした。こんな現場があるのかと。あれは何だったのかと考え込んじゃって、4年ほど仕事が出来ませんでした。

簡単に言えないけど、彼らの仕事はお金の問題じゃないんですね。お金で言えば、僕たちの仕事はCMが一番いい。一応、大学の商学部出てますから、効率的に稼ぐ方がいいことは分かる。

日本人は戦後、効率を求めて走ってきた。でも今、気づき始めたのではないですか。お金がなくちゃ暮らせないが、お金より大切なものがあることを。

と、映画「八甲田山」で賞を獲ってから、ギャラがどんどん上がっていったことに常日頃から違和感を抱えていたことと相まって、映画やCM出演をすべて断っていたからです。

盟友・降旗康男監督と10年ぶりの仕事だった

そんな中、高倉さんは、映画「あなたへ」のオファーを受けると、

もう映画を撮ることなくこのまま死んでしまうのかなと思ったりしました。でも、長年一緒に仕事をしてきた降旗康男(ふるはた やすお)監督と、もう一本やっておきたくて。監督も僕も、人生の大事なことに気がついたというか。

と、盟友・降旗康男監督とは「ホタル」(2001)以来10年だったこともあり、引き受けたそうですが、

(高倉さんと降旗監督は、「鉄道員」「駅 STATION」「ホタル」でタッグを組まれています)

この映画で大滝秀治さんが船頭を演じておられます。彼の言葉に「久しぶりにきれいな海を見た」というのがあって、台本を読んだ時、僕は「つまんないセリフだな」と思った。

しかし、本番で大滝さんがおっしゃったのを聞いて、言葉の深さに気づいた。私たちが住んでいる所はさほど美しいわけじゃない。しかし懸命に生きている。生きているからこそ、この言葉が出たんだ、と。

僕が何十回台本を読んでも何も感じずにいたセリフを、大滝さんが話すと、1字も変えていないのに意味が出てくる。そろそろ役者をやめなきゃいかんな、と考えていた時期でしたが、まだまだ一生懸命やろうと思い直しました。

と、気付いたそうで、

高倉さんにとって、「お金よりも大切なもの」の一つが、この映画の中にはあったのかもしれません。


「あなたへ」より。高倉さんと田中裕子さん。

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「あなたへ」でナインティナイン岡村隆史と初共演

ところで、高倉さんは、この「あなたへ」で、「ナインティナイン」の岡村隆史さんと共演されています。

岡村さんの役どころはというと、高倉さん演じる英二と妻の洋子が大阪で訪れたお好み焼き屋で、テレビの野球中継を見ていて、阪神タイガースが優勝した瞬間、興奮のあまり英二と洋子に乾杯を求めるという、阪神タイガースファンの男の役なのですが、


岡村隆史さん(左)と高倉さん(右)。

実は、2000年、高倉さんが、「鉄道員」での演技で「第23回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞」を受賞し、授賞式に出席した際、岡村さんも、「第23回日本アカデミー賞話題賞」を受賞して、出席しており、

その席で、高倉さんが、

いつか一緒にお仕事しましょうね

と、岡村さんに声をかけていたそうで、

今回、「あなたへ」のキャスティングの際、高倉さんが岡村さんの名前を挙げたため、初共演が実現したのだそうです。

もちろん、岡村さんは、

そんな日が来るわけもないなぁと思っていたのに、今回声をかけていただいて本当に嬉しいです。高倉健さんみたいになりたいです、僕。高倉さんみたいなかっこいい大人になりたいです。

と、コメントされていました♪

「高倉健と元妻・江利チエミの馴れ初めは?」

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