主役としても、主役を光らせるバイプレイヤーとしても、テレビドラマや映画に引っ張りだこの、岸部一徳(きしべ いっとく)さん。今回は、岸部さんにオファーが殺到する理由をスタッフの証言を交えながらご紹介します。

「岸部一徳は俳優転身後は樹木希林の事務所に所属していた!」からの続き

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「しんがり~山一證券 最後の聖戦~」では有原泰蔵役

岸部さんは、2015年、テレビドラマ「しんがり~山一證券 最後の聖戦~」で、県会議員の参謀役として会計上の不正を働き、山一證券廃業の原因となった会長・有原泰蔵を演じられているのですが、


「しんがり~山一證券 最後の聖戦~」で、主人公(江口洋介さん)に立ちはだかる岸部さん演じる有原泰蔵

若松節朗監督によると、撮影日数は4日ほどだったそうですが、岸部さんは、撮影の1週間前から自主的に、ロケ地・長野県松本市に入り、現地の人がどういう生活をしているのか、ということを体になじませてから、撮影に臨んでおられたそうで、

岸部さんは若い頃、音楽の世界で頂点を極め、注目を浴びましたが、反面、役者としては遅れをとっている、という謙虚な気持ちも持っていらっしゃる。その不器用な部分のよさが、俳優・岸部さんの魅力にプラスアルファされていると思います。

と、岸部さんが陰で努力されていることを明かしつつ、

’90年代の金融業界は、いくら大損しても一発当てれば取り返せるという考え方で経営していたと思うんです。有原は巨悪の元締ですが、同時に、単なる悪役ではない部分を出す必要があった。

2600億円もの簿外債務を隠してきたのは、1万人の社員を守るためだ、という経営者なりの言い分がありましたから。その大物感を出せる役者として、岸部さんが適役だと思った。

背が高く、声が野太く、貫禄があり、相手を飲みこんでしまう包容力がある。岸部さんが演じることによって、その役のキャラクターをひとつに限定しない、懐の深さを出せるんです。

と、岸部さんの俳優としての存在感を絶賛。

脚本を務められた戸田山雅司さんも、

昨今は情報化社会となり、行儀のいい役者さんが多くなりました。カメラ付き携帯電話やツイッターの普及により、一般人が街で役者を見かけたりすれば、すぐに情報が広まってしまうため、私生活でも羽目を外せなくなってしまった。

でも、昔の役者さんは「銀幕のスター」と言われたように、一般社会からかけ離れた場所にいた。岸部さんも血気盛んな20歳代前半で社会現象となったバンドの一員として、人々の渦の中心にいた。

その壮絶な体験が生み出すオーラは、誰も持ち合わせていない。岸部さんは、作品ごとに全然違う一面を見せてくれるので、まだいろんな「色」が隠されている、と思わせてくれるのです

と、岸部さんにオファーが殺到する理由を明かされています。

「ドクターX~外科医・大門未知子~」では米倉涼子の精神的支えに

また、岸部さんは、2012~2019年には、テレビドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」で、大門未知子(米倉涼子さん)らフリーランスの医者が所属する「神原名医紹介所」の所長で、大門の精神的支えともなっている、神原晶役を演じておられるのですが、


「ドクターX~外科医・大門未知子~」より。岸部さんと米倉涼子さん

番組スタッフは、撮影中の岸部さんについて、

一徳さんは、瞬時に台本に自分なりのアドリブを加え、主役を光らせ、相手の心を開かせることができる人です。

米倉さんは、そんな一徳さんの大ファンになりましたね。時間があくと、2人でよく話し込んでいました。一徳さんは見た目が怖く、寡黙なイメージですが、もともと京都の人なので、関西弁でダジャレが飛び出すほど、よくしゃべる。ソフトなしゃべり方が、安心感を与えているんです。

米倉さんが「笑いジワができるから、本番前は笑わせないで」と真顔でお願いするほど、打ち解けていました。

と、明かされており、

米倉涼子さんも、

(2012年にドラマシリーズが開始した頃は)岸部さんはすごくミステリアスな方なので、私のことを認めていただけるかどうか、とても不安で……

でも、今ではすべてを吸い込んでくれる、大きな一徳さんにすごく甘えていて、他界した実の父以上に慕っているかもしれない、と思うほどなんです。

と、ドラマ上だけではなく、現実の世界でも、岸部さんに絶大な信頼を寄せられていることを明かされていました。

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岸部一徳の自然体の演技の秘訣は?

そんな岸部さんですが、岸部さんご自身はというと、

家にいても、誰かの役を演じているような気がすることがあるんです。いったい、何をしている自分が本当の自分なのか、わからなくて混乱する。演技をしていない素の自分に自信がないからかもしれないのですが……

よく自然体って言われますが、そのとらえ方も難しい。ただ、しっかりとした作品に出て一つのイメージが固まってくると、はじけた役をしてそれを壊したくなります。正体不明でいたほうが、いろんな人の日常にすっと入っていけますから。

と、語っておられ、素の自分に自信がないという謙虚さが、岸部さんが独特のミステリアスなオーラを放つ理由の一つなのかもしれませんね。

「岸部一徳のデビューからの出演ドラマ映画を画像で!」に続く

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