敗戦後、満洲では、突然、家に押し入った兵隊4人に、重要人物を5人教えなければシベリアに連行すると脅迫され、翌々日、憲兵隊本部まで来るように言われたという、森繁久彌(もりしげ ひさや)さんは、言われた通り、翌々日、憲兵隊本部に赴くと、いきなり、地下2階の、ソ連兵ばかりが4、5人いる狭い部屋に放り込まれたといいます。

「森繁久彌は敗戦後満洲でシベリアに連行されそうになっていた!」からの続き

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指定された日に憲兵隊本部(かつての放送局の青年寮)に行くと・・・

指定された翌々日となり、森繁さんは、(シベリアに送られ、もう家族に会えないかもしれないと)水盃をして、言葉少なに家族に別れを告げると、

何かを感じとったのか、6歳になる長女が、突然、ワーっと泣き出したそうで、奥さんが慰めるも、今度は、壁に顔をつけ、声も立てずにシャクリあげたそうですが、

森繁さんは、後ろ髪を引かれながらも、振り向かず、冬の日差しの中をスタスタと歩き、かつて、森繁さんが勤務していた放送局の、青年寮として建てられた4階建の建物まで行ったそうです。

すると、ソ連兵が玄関で出迎えていたそうで、憲兵中尉がチラッと森繁さんの方を見たそうですが、森繁さんが温かい格好をしてきたのが分かると、通訳(菓子屋の主人)と2人で何か話をしてさっさと中に消えてしまったそうです。

憲兵隊本部の狭い地下室に放り込まれる

その後、森繁さんは、兵隊に付き添われ、地下に連れて行かれると、地下2階の部屋に、いきなり、放り込まれたそうで、大声で何かをどなる兵隊の声とともに鍵をかけられたそうですが、

(地下には、暖房を焚く満州人の部屋と倉庫しかなかったそうです)

そこは、縦4畳ほどの部屋で、ソ連の兵隊ばかりが4、5人いたそうで、

(そのうちの1人は、ついさっき人殺しをしてきたのか、顔から上半身にかけて返り血を浴び、すごい形相をしていたほか、みな無言で、ただ、森繁さんを睨みつけ、今にも飛びかかってきて、殺されてもおかしくない雰囲気だったそうです)

そのうち、一番大きな、斜視で獰猛そうな大男が森繁さんに近づいてきて、森繁さんの肩に手をかけ、 「パイジョーム(来い)」と言ったのだそうです。

(森繁さんは、その瞬間、身体中の血がサーッと引くのが分かったそうです)

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ソ連兵に敵意がないことは分かるも・・・

そして、その大男は、おもむろに上着を脱ぎ、その裏の縫目のところから吸いかけのタバコを出すと、「お前にやる」と言ってきたそうですが、森繁さんが、「ネナード(不要)」と引きつった声で答えると、全員がドス黒い笑いを浴びせてきたそうです。

すると、もう一人が立ち上がって、(明り取りの小さな)窓を指し、あれを壊してお前と逃げよう、と言い、食べるマネと飲むマネをしたそうで、

森繁さんは、これらのことから、兵隊たちに敵意がないことが分かってきたそうですが、と同時に、急に、ソ連兵特有の動物園のような臭いが鼻をついてきたそうで、気分が悪くなり、思わず、その場にしゃがみこむと、

そんな森繁さんの横で、その兵隊は、じゃあじゃあと臭い小便をしたそうで、そのしぶきが、森繁さんの方へ飛んできたのだそうです。

「森繁久彌が釈放されシベリア行きを免れた理由とは?」に続く

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