1977年10月には、初めての自社ビルを完成させると、その後も、引き続き、不動産業に勤しみ、着実に資産を増やしていったという、千昌夫(せん まさお)さんですが、本業の歌手活動の方も順調で、1977年4月に発売した24枚目のシングル「北国の春」は300万枚を売り上げる大ヒットとなりました。
「千昌夫の最盛期の総資産は2000~3000億円だった!」からの続き
「北国の春」が大ヒット
土地を担保に銀行から融資を受け、新しい事業を始める、というスタイルで、次々と資産を増やしていった千さんですが、歌手活動の方も順調で、
1977年4月5日にリリースした24枚目のシングル「北国の春」は、累計売上300万枚を売り上げる大ヒットとなり、同年末の「第28回NHK紅白歌合戦」にも、1971年(「わが町は緑なりき」)以来、6年ぶりの出場を果たしています。
(以降、「北国の春」はロングヒットとなり、「NHK紅白歌合戦」では、1978年、1979年と、3年連続でこの曲を歌唱しています)
「北国の春」
「北国の春」は作曲家の遠藤実が5分で作曲していた
ちなみに、この「北国の春」は、千さんの師匠で作曲家の遠藤実さんが作曲したそうですが、ものの5分で完成していたそうで、
千さんは、その時の様子を、
荻窪の遠藤先生の家にお邪魔して、いで(はく)先生の詞はできてたけど曲はまだ作ってないと。『2階で作ってくるから待ってて』と言われて、ものの5分ほどで戻ってきて『できたぞ』と。
そんなに簡単に?と思いましたね。もともとできてた曲を止まらずに弾いたかのようにバーッと譜面に書いてきたんです。すごいですよ!
と、語っています。
「北国の春」は千昌夫の直訴で「東京のどこかで」のB面からA面に変更されていた
また、当初、「北国の春」は、「東京のどこかで」のB面だったそうですが、「北国の春」のメロディが覚えやすく、5分くらいですんなり頭に入ったことなどから、
千さんが、レッスンの時に、遠藤さんに、
先生、こっち(北国)がA面ですよね
と、「北国の春」をA面にするように直訴すると、スタッフらの意見も満場一致で、A面になったのだそうです。
(遠藤さんは「俺が作る曲はどっちもA面だ」と言っていたそうですが(笑))
そして、それから約2週間後のレコーディングでは、詩とメロディーの素晴らしさが、千さんの地声とうまく合わさり、5~6回歌っただけで、難なく終了したのだそうです。
(実際、歌い方にテクニックはなく、遠藤さんに指導を受けることもなかったそうです)
「北国の春」を歌唱する際にはよれよれのコートを着るなど独特のスタイルだった
ところで、千さんは、テレビの歌番組でこの「北国の春」を歌唱する際、ファンに親近感を持ってもらおうと、ボタンをひとつかけ違えたよれよれのコートに、帽子、ゴム長靴、使い込んだトランクを手に提げるという出で立ちだったのですが、
このスタイル、千さんが子供の頃、田舎のおじさんが買い物に行く時の正装だったそうで、この「北国の春」を聴いた瞬間、思い浮かび、古道具屋で10万円弱で仕入れたのだそうです。
「北国の春」を歌う千さん。
作曲家・遠藤実の反対に遭うも説得し押し切っていた
ただ、師匠の遠藤さんは、
いくらなんでも、みっともないからそんな馬鹿なカッコはやめてくれ!
こんな格好しないで自信を持って歌え
などと、反対。
それでも、このアイディアに自信があった千さんは、
(普段は、師匠である遠藤さんの言葉には絶対服従だったそうですが)
アイドルと違って、演歌勢はめったにテレビに出られないんです。たまに出演するときぐらいは目立たなくちゃ
今は目からも訴えなきゃいけないんです
と、逆に遠藤さんを説得し、押し切ったのだそうです。
「出稼ぎスタイル」が視聴者にウケる
すると、千さんの目論見(もくろみ)は、見事に大当たり。
この「出稼ぎスタイル」が視聴者にウケて、テレビ番組で歌唱する際には、毎回、テレビ局から、
あの扮装(ふんそう)忘れないで
と、念を押されるほどの人気となったのだそうです。
(後に、遠藤さんは、「いや、恐れ入った。千はたいへん凄いプロデューサーだよ」と話していたそうです)
ちなみに、この「北国の春」は、都会で暮らす男性が、実家から届いた小包で故郷を思い出す、という曲なのですが、千さんは、高校2年生の時に家出同然で、故郷の岩手県から上京した自分自身と重なったそうで、
僕にピッタリの曲です。お袋は『東京じゃ季節が分からないでしょ』と、いろいろ送ってくれた。(作詞家の)いで先生は古里の長野を思い浮かべて、小包は山菜が入ってるイメージをされたそう。
僕も山菜や米かな。実際、僕は東京に行く時に米を1~2升背負ってきたんです。歌を聴いて情景が浮かぶのがヒットにつながった
と、語っています。
「千昌夫は「星影のワルツ」「北国の春」共に粘り強く歌い続け大ヒットさせていた!」に続く