1971年7月17日、オールスター第1戦(阪急西宮球場)に登板した、江夏豊(えなつ ゆたか)さんは、大会記録となる、9者連続奪三振を達成しているのですが、実は、その年はあまり調子が良くなく、そんな中、ファン投票で選ばれていたそうで、親しくしていた日刊スポーツの記者に、「お客さんが喜ぶようなことをやらないといかん」と、ハッパをかけられていたといいます。

「江夏豊は王貞治から354個目の三振を奪うも尊敬の念を抱いていた!」からの続き

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オールスターでは観客を喜ばせようと「奪三振」を思いつく

江夏さんは、1971年、オールスターのファン投票で1位となり、セ・リーグ代表として選出されるのですが、この年、オールスターまでの成績は、26試合に登板して6勝9敗、防御率は3.12と、本調子ではなかったことから、

(前年の1970年は、21勝17敗、防御率2.13、340奪三振(奪三振王)と素晴らしい成績を残しています)

親しくしていた日刊スポーツの記者・水本義政さんに、

ようそんな成績でオールスターに出てきたな。ちょっとお客さんが喜ぶようなことをやらないといかん

と、ハッパをかけられたそうで、

考えたところ、自分がお客さんを喜ばせるとしたら、三振しかないと「奪三振」を思いついたそうです。

(当時のオールスターの奪三振記録は、前年に江夏さん自身が記録した8個だったそうですが、連続ではなく、また、安打を許し、点も取られていたため、自分の記録を抜いてやろうと思ったのだそうです)

オールスターでは打者としてホームランも打っていた

こうして、迎えたオールスター第1戦、セ・リーグの先発として登板した江夏さんは、1回裏、先頭打者のロッテ・有藤通世さんを変化球で三振、続く西鉄の基満男さんも空振り三振、そして、最も警戒していた阪急の長池徳二さんもフォークで空振り三振と、3者連続三振に仕留めると、

バッターとしても、2回表、阪急の米田哲也さんから、ライトスタンド中段に突き刺さる特大3ランホームランを放ち、

続く、2回裏も、ロッテの江藤慎一さん、近鉄の土井正博さん、西鉄の東田正義さんを三振に仕留めます。

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9人目の加藤秀司を空振り三振で打ち取り9者連続奪三振を達成

そして、ラストなる3回裏(最長3イニングと定められていました)も、先頭打者の阪本敏三さん(阪急)を見逃し三振、続く岡村浩二さん(阪急)も空振り三振に仕留めると、9人目の打者は、途中から出場していた加藤秀司さん(阪急)だったそうですが、

江夏さんは、

警戒していた張本(勲・東映フライヤーズ)さんや野村(克也・南海)さんがまだベンチにいた。けど、出てきたのは加藤。

『これはいける』と思ったね。晩年の彼はミートがうまい巧打者だったけど、1年目の当時は豪快に振り回すバッターだったから

と、思ったそうで、

その通り、加藤さんも空振り三振に仕留め、オールスター史上初の9者連続三振を達成したのでした。

(加藤さんは、江夏さんと同学年だったそうですが、PL学園卒業後、社会人の松下電器を経てプロ入りしたため、この年がレギュラー1年目で、当時の加藤さんには、まだ、後年のような技術はなく、ブンブン振り回すタイプだったそうです)


燃えよ左腕: 江夏豊という人生

「江夏豊は球宴で田淵幸一にフライを「捕るな」とは言ってなかった!」に続く


加藤秀司さんから三振を取り、9者連続三振を達成した江夏さん。

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