キャッチャーから負担の少ないファーストに転向し、本来の打棒を取り戻しつつあった中、フロントの現場介入で、再び、キャッチャーに戻され、落胆していたという、田淵幸一(たぶち こういち)さんですが、そんな中、ファン投票ダントツ1位でオールスターに選出されると、金田正一さんに激励されたことをきっかけに、レフトスタンドへ同点ホームランを放ったといいます。

「田淵幸一はルーキーのとき捕手から一塁手に転向し本塁打を量産するも・・・」からの続き

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ルーキーにもかかわらずオールスターのファン投票ではダントツの1位

キャッチャー(リード)から開放され、ファーストで本来の打棒を取り戻し始めたところ、フロント(野田誠三オーナー)による突然の現場介入により、再びキャッチャーに戻され、落胆したという田淵さんですが、

そんな中、オールスター出場者を決めるファン投票が行われると、田淵さんは、2位の森昌彦さん(巨人)に約6千票もの差をつける得票数6万6892票のダントツ1位で選出されたそうで、

田淵さんは、

新人なのに・・・。ファンのみなさんのおかげ。それだけでボクは幸せです

と、語っており、

この結果が救いになったそうです。

オールスターのベンチで金田正一から真ん中に座るよう言われていた

そして、1969年7月19日、オールスター第1戦(東京球場)では、ベンチの中央に、長嶋茂雄さん、王貞治さん、金田正一さんがドカッっと陣取り、その横に、中日の江藤慎一さんらが座っている中、初出場の田淵さんは、その長身を縮めて隅っこに座っていたそうですが、

突然、金田正一さんから、

こら、田淵、こっちに来んかい!

と、大きな声で呼ばれ、

言われるがままに、金田さんの横(ベンチの真ん中)に座ると、

ワシが投げてるときに感じたんやが、お前は調子が悪いとまるで元気がないやないか。打ったろ-という気迫が足りん。

打てんときには守備で、守備がアカンときにはバッティングで頑張らにゃあ。どっちもダメならせめて気迫だけでも見せろ。それがプロの選手や

と、言われたのだそうです。

(この時、金田さんは、プロ生活20年目で、17回目のオールスター出場でした)

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金田正一の実弟・金田留広からレフトスタンドに同点ホームラン

そこで、田淵さんは、金田さんの期待に応えたいと思ったそうですが、4対5とパ・リーグに1点リードされて迎えた6回には、なんと、東映フライヤーズの金田留広投手(金田正一さんの実弟)の内角高めの速球をレフトスタンドに同点ホームランを放ったそうで、ベンチ前では、各チームのスター選手から握手攻めとなったそうですが、

金田さんからは、

なにも弟から打たんでもええじゃないか

と、おどけながら手を差し出されたことから、田淵さんは逃げ出したそうですが、

金田さん:こらぁ、握手せんかい。アホ!
田淵さん:だって、弟さんからホームラン打ったって怒ってるんじゃ

という、やりとりに、セ・リーグのベンチは笑いの渦に包まれたそうで、

田淵さんは、

金田さんのおかげで新人なのにベンチの真ん中に座れた。ボクにとってそれがどれだけのプラスになったか

と、語っています。

(ちなみに、金田さんは、これが現役最後のオールスターだと悟り、後輩に何かを伝えておきたいと思っていたそうで、そこで選ばれたのがルーキーの田淵さんだったのだそうです)

「田淵幸一の新人王は9月中旬の時点では絶望視されていた!」に続く

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