「俳優養成所」の試験では、朗読とパントマイムがうまくできず、不合格を確信したという、愛川欽也(あいかわ きんや)さんは、時間が経つにつれ、自分の容姿など、自分の意思ではどうすることもできないことばかりがクローズアップされ、大きな絶望感や虚無感に見舞われたといいます。

「愛川欽也は「俳優養成所」のパントマイムの試験で不合格を確信していた!」からの続き

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自分の容姿を恨む気持ちが湧いていた

「俳優養成所」の試験を全て終え、試験会場から出た愛川さんは、東京に映画や芝居を観に行った帰りには必ず寄っていた「渋谷食堂」に立ち寄り、好物の「かた焼きそば」を注文したそうですが、

料理が運ばれてくるまでの間、たった今受けてきたばかりの試験について、いろいろ思い返すと、ハンサムでもなく、身長も高くない自分が、あの100人もの受験生の中で目立つはずもないと思え、誰と並んでも埋もれてしまうような、パッとしない自分の容姿を恨みに思う気持ちがこみ上げてきたそうです。

(ただ、恨んでみてもこの事実は変えようがないことは分かっていたそうですが)

俳優養成所の受験なんかしなければよかったと思っていた

そして、中学の時、担任の先生が、「人はみな平等だ」と言っていたことが思い出され、それまでは愛川さんもそう思っていたそうですが、この日ばかりは、「人は平等ではない」と身にしみて思い、「俳優養成所」の試験に合格するなんて、自分にはしょせん無理なことだったんだと、絶望感に襲われたそうで、

その後、高校へ行っても、どの授業も上の空となり、あれほど夢中になっていた映画館通いもやめてしまったそうで、

俳優養成所の受験なんかしなければよかった

とまで思うようになり、大きな虚無感に襲われたのだそうです。

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自分の力ではどうすることもできないことばかりがクローズアップされていた

ちなみに、愛川さんは、物心がついたばかりの幼い頃から、近所の男の子たちがメンコ・ビー玉・けん玉をして遊んでいる中、愛川さんだけは、一人、喫茶店でコーヒーを飲み、足を組んで新聞を読んだりするなど、自分の意思をきちんと持ち、人は人、自分は自分、という生き方をしてきていたのですが、

今回のことで、容姿のこと、戦争のこと、疎開のこと、貧しさのことなど、自分の力ではどうすることもできないことばかりがクローズアップされ、

いつか見た、疎開先の秋田の雄物川(おものがわ)を流れていたボロ布や、泥棒が川に捨てた鶏と同じように、自分も、行く先の知らない小さな船に乗せられて流されているような気がして、

自分の意思では決めることのできない旅はやがていったいどこへ行くのだろう

と、不安を感じるようになったのだそうです。

(「俳優養成所」の試験が終わった直後は、来年か再来年にもう一度挑戦してみようと思っていたそうですが、1週間経った頃には、何か別の新しい夢を見つけようとしていたそうで、そう思うことで少し気持ちが落ち着いていったのだそうです)

「愛川欽也は「俳優養成所」で千田是也に可愛がられていた!」に続く

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