プロレスの実況が嫌で嫌でたまらず、アナウンサーを辞めることも考えるほどだったという、徳光和夫(とくみつ かずお)さんですが、初めて生でジャイアント馬場さんを見て衝撃を受けると、その後は、馬場さんの魅力に惹かれ、嫌々ながらも、プロレス実況を続けられたといいます。
「徳光和夫はプロレス実況に回されアナウンサーを辞めることも考えていた!」からの続き
ジャイアント馬場がトップロープを跨いで入場したのは一回きりだった
「第5回ワールドリーグ戦前夜祭」で、初めてジャイアント馬場さんを生で見ると、馬場さんが、入場シーンで、左足を軽快に蹴り上げるようにしてリングのトップロープ(リングマットから約125センチの高さ)をまたぐ姿に衝撃を受けたという徳光さんですが、
実は、馬場さんは、派手なことを嫌う人だったそうで、トップロープをまたぐような入場は、後にも先にもこの1戦だけだったそうです。
ジャイアント馬場の体の大きさに誰もが驚いていた
というのも、この「第5回ワールドリーグ戦前夜祭」に限っては、海外修行を終え、凱旋帰国を果たした、馬場さんのお披露目的な試合だったため、馬場さんは、アメリカで得たショーマンシップ的なパフォーマンスを日本のファンにも見せたようですが、なおかつ、自分の体の大きさをアピールするという目的もあったようで、
それまでの日本のプロレスでは、
(徳光さんの実況中継風に言うと)五尺七寸五分の力道山が六尺四寸のマイク・シャープをハンマー投げで攻め立てております
というような、小柄な男がアメリカの大男をなぎ倒す、というのがプロレスの醍醐味であり、面白さだったのですが、
そんな日本のプロレスの風景が、馬場さんのこの帰国第1戦の入場シーンでガラッと変わり、日本プロレス界の一大転換ポイントとなったのだそうです。
(実際、対戦する外国人レスラーも馬場さんがトップロープをまたいでリングインした時には、「おいおい、ウソだろ、日本人レスラーに、こんな巨人のような男がいたのか」と、驚いた様子のジェスチャーをしたそうで、同時に、お客さんも、「こいつ、デカイな、外国人よりガタイがいいじゃねえか」と驚いたのだそうです)
ジャイアント馬場はリング上での自分の見せ方を大事にしていた
また、馬場さんは、リング上では「格」を大きく見せることを意識していたそうで、
レスラーは、試合開始のゴングが鳴ると、すぐにリング中央のポジションを取り、そこから動かず、その周りを対戦相手がグルグルと回るような試合展開にしなければ自分の強さが観客に伝わらない
と、常日頃からよく言っていたそうです。
つまり、初めてプロレスを観戦する人たちにも、一目で自分が強いということを分からせるため、自分が中心にいて、相手がその周りをグルグル回るという構図を作ることが、レスラーとして大事な仕事だと語っていたのだそうです。
(プロレスにおいては、自分が相手をリング上でコントロールしていると見せること、すなわち、自分の方が格上だということを見る者に植え付けることがとても重要なのだそうです)
ジャイアント馬場のことを微笑ましくも思っていた
そんな馬場さんですが、
ある時、徳光さんが、
さあ、2メートル9センチ、140キロ、世界のジャイアント馬場、入場であります
と、試合で言うと、
試合後、
徳さん、俺、2メートル6センチだよ
と、(照れくさそうに)訂正されたことがあったそうで、
何もかもスケールの大きい世界の馬場さんが、たった3センチにこだわっていることが、徳光さんには、微笑ましく思えたそうです(笑)
「徳光和夫は昔ジャイアント馬場を本気で怒らせたことがあった!」に続く
ジャイアント馬場さんにインタビューする徳光さん。