高卒で阪神タイガースに入団すると、1年目から、12勝13敗、防御率2.74、225奪三振(奪三振王)という成績を残すも、まだまだ荒削りだったという、江夏豊(えなつ ゆたか)さんですが、プロ2年目となる1968年には、林義一投手コーチから適切な指導を受け、足りなかったものを、授けてもらったといいます。
「江夏豊は長嶋茂雄に内角高めのストレートを芯で捕らえられていた!」からの続き
1年目から225奪三振で奪三振王も88四球と荒削りだった
江夏さんは、入団1年目、いきなり225個の三振を奪って奪三振王になっているのですが、与四球も88とトップで、被本塁打も27本とかなり多かったそうです。
というのも、この時、江夏さんには、まだアウトコースへの制球力はなく、武器はというと、右バッターの内角へのクロスファイアだけで、カーブも曲がらず、少し目先を変える程度の効果しかなかったそうで、組み立てというものがなく、まるでピッチングになっていなかったのだそうです。
(右バッターの内角へのクロスファイアは、少し甘くなると、ホームランを打たれたそうです)
林義一投手コーチによりゴムまりを天井に向かって投げる練習を課される
そんな中、2年目の1968年のキャンプでは、林義一さんが投手コーチに就任し、基本から鍛え直してくれたそうで、まずは、球の回転を意識するため、ゴムまりを天井に向かって投げるという練習を課されたそうです。
そして、林さんには、
ボールっちゅうもんは丸いものだから、自分もボールに対して丸くなり、素直になることが大事だよ。考え方が偏ったり、フォームのバランスがゆがんだりすると駄目だよ
とも、言われたそうで、
丸いもの同士が合わさるからきれいに回転するということを、キャッチボールから実践するよう指導されたのだそうです。
キャッチボールは単なる準備運動や肩慣らしではない
また、林さんは、
キャッチボールは単なる準備運動や肩慣らしではない。自分の肩さえぬくもれば、それでいいんだと思ったら大間違いだよ
とも、言ったそうで、
江夏さんは、これを聞き、
キャッチボールには相手があり、その相手が受けやすいようにするためにも、正しい回転のボールを投げなければならない、でも、正しい回転の球を投げるためにはどうすればいいのか。 どこに投げれば相手は受けやすいのか・・・
と、キャッチボール一つとっても、考えることが次から次へと出てきたのだそうです。
(江夏さんは、球の回転など、それまで考えたこともなかったそうですが、林さんの指導をきっかけに、きれいな回転のボールを投げるにはどうすればいいかを考えるようになったほか、108の縫い目のあるボールをきれいに回転させることがどれほど大事で難しいことかも分かったそうです)
林義一投手コーチからは「キャッチボールが一番大事」と教えてもらっていた
そんな林さんからは、様々なことを教わったそうですが、結局は、投手の基本は一つで、キャッチボールが一番大事ということだったそうで、拍子抜けするほど簡単な話だったそうですが、その簡単なことを教えてくれる人がこれまでいなかったそうで、
江夏さんは、著書「燃えよ左腕 江夏豊という人生(日本経済新聞出版)」で、
プロの選手たるものが、なんでキャッチボールという「イロハ」からやらなくてはいけないのか、そんな簡単なこともできんのか、と読者の方は思われるかもしれない。
実はそのレベルが低いと思われることが一番難しく、一番大切なのだ。それを林さんは教えてくれたわけだ。そういうことを教わって、改めて周りを見てみると、一流といわれる投手ほど、キャッチボールを大切にしていることがわかってきた。
と、綴っています。
ボールの回転を意識して投げているうちに制球力がついていった
そんな江夏さんは、ボールの回転を意識しながら投げているうちに、自分でも制球力がついてくるのが分かったそうで、特に、右打者のアウトローへの制球が良くなり、投球の軸となったそうで、
それまで、右打者の膝元へのクロスファイア一辺倒だったのが、投球の幅が格段に広がり、手応を感じたのだそうです。
「江夏豊は王貞治から354奪三振の新記録を達成したと勘違いしていた!」に続く