1956年、テレビ初の洋画吹き替え放送で少年役として声優デビューすると、以降、西部劇全盛期だったこともあり、ほとんど全ての少年役が回ってきて、声優としての仕事が忙しくなったという、野沢雅子(のざわ まさこ)さんは、1963年には、日本初のテレビアニメ「鉄腕アトム」のゲストの少年役で、アニメで初めて少年を演じると、1968年には、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」で主演(鬼太郎役)に抜擢されたといいます。
「野沢雅子が声優デビューしたのは所属劇団の経営資金を稼ぐためだった!」からの続き
日本初のテレビアニメ「鉄腕アトム」でゲストの少年の声
野沢さんは、1963年には、日本初のテレビアニメ「鉄腕アトム」のゲストの少年役の声優を演じているのですが、収録時には、毎回ではなかったものの、しばしば、原作者の手塚治虫さんが現場に見に来ていたそうで、とても緊張したそうです。
(実際には、アニメ声優デビューは、「狼少年ケン」だそうですが、「鉄腕アトム」の方が「狼少年ケン」よりも放送開始日が早かったそうです)
ちなみに、手塚さんとは、直接、話をする機会はなかったそうですが、手塚さんを見ていると、「ああ、この人はこの作品をとても愛していらっしゃるんだなぁ」というのが伝わってきたそうで、優しげな顔で、何度も頷きながら映像を見ている姿がとても印象に残っているそうです。
(洋画の吹き替えは生収録だったそうですが、さすがにテレビアニメを生本番でやるのは厳しいということで、アニメは事前収録だったそうです)
テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎役は原作者・水木しげるの強い推薦だった
そんな野沢さんは、「鉄腕アトム」出演後は、1965年には「オバケのQ太郎」、1966年には「魔法使いサリー」、1967年には「かみなり坊やピッカリ・ビー」など、次々にアニメ作品で声優を務めると、1968年には、「ゲゲゲの鬼太郎」で主人公(鬼太郎役)に抜擢されているのですが、
実は、東京俳優生活協同組合(俳協)のマネージャーをしていた久保進さんが、(別の劇団にもかかわらず)野沢さんを主役に売り込んでくれ、久保さんと東映のプロデューサーの推薦でオーディションに参加するも、
オーディションでは、最後に残ったもう1人の候補者が、テレビ局のプロデューサーによる推薦だったことから、野沢さんは、諦めきっていたのだそうです。
ただ、マネージャーたちに説得されて自分なりに最後まで頑張ってみたところ、見事、合格となったそうで、実は、原作者の水木しげるさんが強く推してくれていたそうで、野沢さんは、後に、そのことを知り、とてもうれしかったそうです。
「ゲゲゲの鬼太郎」では同じ劇団「東芸」のメンバーが主要キャストで楽しくできていた
ちなみに、野沢さんは、当初、声優という仕事に対し、自分のお芝居ができないことにストレスを抱えていたといいます。
というのも、自分なら、ここでブレス(息継ぎ)をするだろうというところで、しゃべり続けないといけなかったり、逆に、不自然にセリフを区切らないといけないなど気持ち悪く感じ、そのくせ、(映画の吹き替えの場合は生放送だったため)ミスをするとそれが全国放送されてしまうというプレッシャーがあったのだそうです。
ただ、「ゲゲゲの鬼太郎」の収録現場では、目玉おやじ役を演じた田の中勇さん、ねずみ男役の大塚周夫さんら、主要3キャラクターが、同じ劇団「東芸」出身の先輩で、演技が合わせやすく、映像に合わせて演技をするコツみたいなものがだんだん分かってきたそうで、
何より、気心の知れたメンバーと一緒だったことで、和気あいあいとした雰囲気の中、リラックスして演じることができてすごく楽しく、声優という仕事が自分に合っているな、と思うようになったのだそうです。
(テストの映像に演技を合わせる際、役者は台本を見ているため、キャラクターの口がどういう動きをしているのか見えないそうですが、それを手の空いている役者がサポートするという協力体制ができていたそうで、一番下っ端だった野沢さんは、ずっと先輩たちのお手伝いをしていたのだそうです)
「ゲゲゲの鬼太郎」はアニメで初めて主演(鬼太郎役)に抜擢された作品だった
そんな「ゲゲゲの鬼太郎」では、アニメで初めて主演(鬼太郎役)に抜擢された作品だったことから、鬼太郎役にはとても思い入れがあるそうで、
野沢さんは、
鬼太郎君というのは私のなかでは正義感の強い、ごく普通のかわいい少年です。その親しみやすさが、みんなに愛されるんじゃないかと思います。
と、語っています。
(野沢さんは、第1期(1968.1.3~1969.3.30)、第2期(1971.10.7~1972.9.28)で、鬼太郎役を演じています)
「ゲゲゲの鬼太郎」の第6期では目玉おやじ役
また、野沢さんは、2018年、「ゲゲゲの鬼太郎」の第6期(2018.4.1~2020.3.29)では、鬼太郎のお父さんである目玉おやじ役を演じているのですが、
野沢さんは、そのことについて、
(これまでは目玉おやじを)田の中勇さんがやっていたのですが、引きずることはやめようと。今回の目玉おやじは、“鬼太郎が大きくなって息子ができて、お父さんになった”というつもりでやっているんです
親子を出来るなんて最高に幸せ
と、喜びを語っています。
「野沢雅子は若い頃「銀河鉄道999」で星野鉄郎役を松本零士に抜擢されていた!」に続く