１９８６年に「ドラゴンボール」の主人公・孫悟空役に起用されると、以降４０年近くもの長きに渡り、孫悟空を演じている、野沢雅子（のざわ まさこ）さんは、同時に、一人で、孫悟飯役、孫悟天役も演じているのですが、なんと、孫悟空、孫悟飯、孫悟天の３役を意識して演じ分けたことがないといいます。
「野沢雅子の孫悟空(ドラゴンボール)は鳥山明の一声で決まっていた！」からの続き
孫悟空・孫悟飯・孫悟天の3役を演じるようになった経緯
野沢さんは、「ドラゴンボール」シリーズでは、一人で、孫悟空、孫悟飯、孫悟天と３役を演じているのですが、
３役も演じられるのは、役者としては最高ですね。悟空は主役で、悟飯は準主役みたいなものじゃないですか。だから悟飯の役は絶対に私ではないと思っていたんです。
ちょうど悟飯が登場する頃、『ドラゴンボール』のメンバーで屋形船に乗ったんですよ。その時にプロデューサーから「今度、悟空の子どもの悟飯が登場します」って発表があって、メンバーがみんな「僕、悟飯です」って悟飯の声を演じてオーディションみたいな雰囲気になって。
でも私は主役をやらせてもらっているから、やったら失礼だと思って参加しなかったんです。それでいよいよ悟飯が登場した時に台本を見たら、声優のところに名前がないんですよ。それでプロデューサーに「悟飯は誰がやるんですか」って聞いたら「台本に書いてあるでしょう」って言うんです。
よく見たら、いつも孫悟空の真下に野沢雅子って書いてあるのが、ちょっとズレて孫悟飯寄りに私の名前が書いてあって。「えっ、私？」って、ビックリしました。もう最高の気分でしたね。役者をやっていてよかったと思いました。
と、明かしています。
孫悟空・孫悟飯・孫悟天の3役の演じ分けを意識したことがなかった
ちなみに、野沢さんは、孫悟空、孫悟飯、孫悟天と３役を意識して演じ分けたことはなく、悟空の絵があればすぐに悟空、悟飯の絵があればすぐに悟飯になれるそうで、
ああしよう、こうしようなど、組み立てや工夫は全くしておらず、役にすっと入り込み、自然とそのキャラクターの声が出るのだそうです。
（幼少期と青年期の声の演じ分けについても、同じ理由で、野沢さん自身、演じるということを意識したことがなく、役の中にすっと入っていけ、そのキャラクターそのものになることができるのだそうです）
そういうこともあり、最初の頃は、３役の収録を一緒に録っていたそうですが、「マコ（野沢）さんがやっちゃうと、みんなもできると思われるから、やめてください」と、後輩に怒られたそうで、以来、別々に録るようになったそうで、孫悟空はほかの声優たちと一緒に録り、孫悟飯と孫悟天はそれぞれ後から録るようになったのだそうです。
「ドラゴンボール」の中で一番好きなキャラクターは孫悟空
そんな野沢さんですが、「ドラゴンボールシリーズ」の中で一番好きなキャラクターは、孫悟空だそうで、
様々なインタビューで、孫悟空の魅力について、
悟空の魅力はどんな相手でも悪く見ないというところです。やっぱり人間って、嫌なものに対しては嫌な態度になるじゃないですか。でも悟空は素直に素直に生きていて、嫌なものなんて無いと思うんです。そういうところが偉いですよね。見習わなきゃと思います。
（悟空の）あの生き方がいいです。世の中の人がみんな悟空のようだったら、とってもいい世の中になると思います。ヤンチャすぎるけど、平和で良い世の中になると思うんですよね。
（クリリンがフリーザにやられたシーンで）悟空が「クリリンのことか――――――――っ!!!!!」ってすっごく怒るところ。親友の結びつきが感じられて、良いシーンですよね。
私たちもみんな悟空のように“誰かのため”という気持ちを持てたらいいと思うんですよ。そういう気持ちがないから、いろいろな問題が起きてしまう。だからみんなも悟空のようになってほしいと思いますね。
悟空は大人になっても子供の頃と変わらないんですよね。絶対に上辺だけで人を判断しませんし、差別しない。常識はずれなところもありますけど、子供のままの心を持った本当にピュアな人です。
悟空はたくさんの敵と戦ってきましたが、どの相手のことも“悪”だとは思っていないんですよね。だから、悟空みたいな人がたくさん世の中にいたらいいのにと思っています。
現実社会の私たちは子供の頃は悟空と同じ気持ちでも、大人になって現実を知れば知るほど純粋なままではいられなくなってしまいますから。
などと、語っています。
「ゲゲゲの鬼太郎」で鬼太郎役を戸田恵子に引き継いだことで「ドラゴンボール」へ出演することができていた
ところで、野沢さんは、「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎役を第２シリーズまで演じ、その後、第３シリーズ（1985～1988年）は戸田恵子さん、第４シリーズ（1996～1998年）は松岡洋子さん、第５シリーズ（2007～2009年）は高山みなみさん、第６シリーズ（2018～2020年）は沢城みゆきさんと変わっているのですが、
第３シリーズの際、戸田さんに引き継いだことで、野沢さんの最大のヒット作となる「ドラゴンボール」に出演することができたのだといいます。
というのも、当時、フジテレビには主役をやれるのは１作品だけというルールがあったそうで、もし、「ゲゲゲの鬼太郎」の第３シリーズでも鬼太郎役を継続していたら、「ドラゴンボール」のオーディションすら受けることができなかったのだそうです。
ちなみに、その後、何かの機会で、第３シリーズで鬼太郎役を演じた戸田さんに会った際、戸田さんはものすごく恐縮していたそうですが、野沢さんとしては、逆に、「あなたのおかげで悟空役になれたのよ」という気持ちだったのだそうです。
（ただ、戸田さんから「私たちにとって、鬼太郎と言えばマコ（野沢）さんなんです」と言われた時は、ありがたく、感謝の気持ちでいっぱいになり、鬼太郎を演じてきた声優が、野沢さんの演じた鬼太郎を大事に思ってくれていることを知り、うれしく思ったそうです）
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