1984年には、フランス・パリ・シャトレ劇場のオペラ「コックドール(金鶏)」で、歌舞伎の趣向をちりばめた演出をして、見事、成功を収め、海外でも認められるようになっていった、二代目市川猿翁(にだいめ いちかわ えんおう)さんは、1992年にも、ドイツ・バイエルン国立歌劇場のリヒャルト・シュトラウスのオペラ「影のない女」で演出をしています。
「市川猿翁(2代目)は仏パリのオペラ「コックドール」でも演出していた!」からの続き
バイエルン国立歌劇場の総監督ヴォルフガング・サヴァリッシュからオファーを受けていた
猿翁(当時は三代目市川猿之助)さんは、1992年には、バイエルン国立歌劇場によるリヒャルト・シュトラウスのオペラ「影のない女」の演出もしているのですが、
バイエルン国立歌劇場の総監督だったヴォルフガング・サヴァリッシュさんに、「東洋と西洋の融合による創造を」と、演出を頼まれたそうで、猿翁さんは、これに感激し、オファーを引き受けたそうです。
バイエルン国立歌劇場のオペラ「影のない女」の演出を担当
そんな猿翁(当時は三代目市川猿之助)さんは、本場ドイツでオペラを上演するため、台本や曲の意味、論理、解釈を正確なものにしようと、皇帝はブルー、皇后はピンクなど、役のカラーを決め、726番ある音楽番号を塗り分けるという工夫をしたそうで、
カラフルな楽譜を見ながら何度も聴いているうちに、音符が読めなくても、今はここを歌っていると分かるようになったそうです。
(このオペラ「影のない女」は、影を持たない皇后が影を得る物語なのですが、舞台を見ると、影がないはずの時にも影が出てしまっていたところ、照明の吉井澄雄さんが光る床を考案し、影が出ないようにすることに成功したそうです)
歌手一同から感謝状が届いていた
すると、稽古の最終日には、歌手一同から総監督のサヴァリッシュさんを通して、
素晴らしい演出家と一緒に仕事をする機会を与えられ、感謝している
と、感謝状が届いたそうで、
猿翁さんは、
私が演出を引き受ける際のたったひとつの判断基準は、歌舞伎の手法が生かせるか。オペラの演出から歌舞伎の神髄を学んだ。
と、語っています。
(「影のない女」は1992年に愛知県芸術劇場とMHKホール、翌年1993年7月にバイエルン国立歌劇場で上演されています)
「市川猿翁(2代目)の出演歌舞伎ドラマ映画と受賞歴は?」に続く