リゾートホテル経営の失敗で23億円もの借金を背負ったうえ、最愛の母親が他界するという不幸が続いた、加山雄三(かやま ゆうぞう)さんですが、そんな中、作詞家の岩谷時子さんが加山さんの力になろうと、一肌脱いだと言います。今回は、岩谷さんから見た当時の加山さんの状況と、お二人の知られざる絆についてご紹介します。

「加山雄三は昔リゾートホテル経営失敗で負債23億円を抱えていた!」からの続き

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作詞家・岩谷時子が加山雄三の母親・小桜葉子の密葬に列席

当時、越路吹雪さんのマネージャーを務めながら、加山さんのヒット曲「君といつまでも」「お嫁においで」「夜空の星」「蒼い星くず」などの作詞を手がけるなど、加山さんと親交があった作詞家の岩谷時子さんの人生を綴った本「ラストダンスは私に 岩谷時子物語」(村岡恵理さん著)によると、

岩谷さんは、1970年5月、「東芝レコード」のプロデューサーで加山さんの担当だった渋谷森久さんから、加山さんのお母さんの小桜葉子さんが亡くなったことを聞き、

とりあえず近親者のみで密葬をするそうです。僕は行きますが岩谷さんはどうなさいますか?

と、尋ねられると、

行きます、渋谷さん、私を連れてって

と、言って、渋谷さんとともにタクシーで茅ヶ崎にある加山さんの自宅に向かったそうです。

すると、密葬だというのに、取材陣がすでに列をなして並んでいたそうで、

そこへ、加山さんが仕事から帰ってきて、ぎりぎり出棺に間に合い、涙で人前に立てない喪主のお父さん(上原謙さん)に代わって挨拶を述べると、加山さんに向かって一斉にマスコミのフラッシュがたかれたそうです。

その後、加山さんが、片隅にいた岩谷さんに気付き、

岩谷先生、お忙しい中、母のためにわざわざお越しくださって本当にありがとうございました。生前はいろいろとご厄介になりました

と、歩み寄って挨拶されたそうですが、

岩谷さんは、まるでかける言葉が見つからなかったそうです。


ラストダンスは私に 岩谷時子物語

岩谷時子が加山雄三の力になりたいと決意していた

こうして、加山さんに気の利いた言葉の一つもかけることができなかったという岩谷さんは、

帰り道、渋谷さんに、

芸能人って可哀想ね

と、言うと、

渋谷さんは、

僕は生まれ変わっても芸能人にはなりたくありませんね

と、言ったそうですが、

ふと、

これで万が一、ホテルが倒産したら、マスコミはもっと大騒ぎするのかしら

と、最愛のお母さんを失った哀しみに加え、もう一つ別の不幸が重なるかもしれない、加山さんの身を案じたそうです。

というのも、少し前から、

(加山さんのホテルとして知られている)「パシフィックホテル茅ヶ崎」が、巨額の負債を抱えて倒産する

という噂がささやかれており、

渋谷さんも、

(マスコミの)格好のネタにされるでしょうね。

(実質的な経営は、加山さんの叔父さん(母・小桜葉子さんの弟・岩倉具憲さん)であるものの)結局、あの家の稼ぎ頭は加山さんですからね。

彼が一生かけて働いて返すことになるんでしょう……、でも、20億なんて金、いくら加山雄三だって一生かかっても返せないですよ。若大将シリーズだって、もう一時の勢いはないし。

と、言うと、

岩谷さんは、

渋ちゃん、加山さんのことで何か聞いたら必ず私に教えて。もし私にできることがあったら協力するから何でも言ってね

と、言い、

渋谷さんも、

わかりました

と、承知し、お二人は、加山さんの力になろうと約束を交わされたのだそうです。

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加山雄三は岩谷時子に2週間で15曲ものレコーディングを依頼していた

それから2ヶ月ほど経ったある日のこと、岩谷さんは、渋谷さんから、加山さんの新アルバムのためのデモテープを受け取ったそうですが、なんと、加山さんは、2週間で15曲もレコーディングをしたいと言っているとのことで、

これを聞いて、岩谷さんは、耳を疑ったそうです。

(1966年、加山さんが人気絶頂の時に作られたアルバム「ハワイの休日」でも、3週間で12曲だったそうです)

なんでも、渋谷さんによると、すでに、加山さんの茅ヶ崎の自宅は6千万円で抵当に入っており、この7月末には、いよいよ「パシフィックホテル」の倒産が明らかになるようで、加山さんは、一家の稼ぎ手として、一生かけて借金を返していく覚悟でいるとのことなのですが、

倒産を発表した後、マスコミや債務者から追い立てられることを予測し、一時的にでも逃れるため、一ヶ月半ほどアメリカに避難する計画を立てているというのです。

そのため、出発前にレコーディングを済ませておきたいとのことで、

渋谷さんは、

加山さんのスケジュールの都合でレコーディングは7月25日です。彼は生きて行くために仕事をしなければなりません。僕らにできることはこれしかないと思うんです。岩谷さん、お願いします。

と、拝むように手を合わせられたそうで、

岩谷さんも、

そうよね、わかってる。やるわ

と、これを了承したのだそうです。

「加山雄三からの無茶な依頼を岩谷時子はノイローゼになりつつ完遂していた!」に続く

加山さんと岩谷時子さん。

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