恋人のアストリッド・キルヒャーさんと婚約し、「ビートルズ」も脱退して画家として生きていこうとしていた矢先、21歳の若さで死去した、スチュアート・サトクリフ(Stuart Sutcliffe)さんですが、婚約者のアストリッドさんはもちろんのこと、「ビートルズ」のメンバーも深い悲しみに打ちひしがれたといいます。

「スチュアート・サトクリフは21歳で死去!その死因とは?」からの続き

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アストリッド・キルヒャーと「ビートルズ」は偶然ハンブルク空港で遭遇していた

スチュアートさんが亡くなった翌日の4月11日、婚約者のアストリッド・キルヒャー(Astrid Kirchherr)さんと友人のクラウス・フォアマンさんは、スチュアートさんのお母さんのミリーさんを、ハンブルク空港に迎えに行ったそうですが、

(スチュアートさんの死を知り、アストリッドさんのもとに駆けつけたクラウスさんが、アストリッドさんに代わって、(スチュアートさんの実家には電話がなかったことから)ミリーさんに電報を打ったそうです)

そこで、偶然、「ビートルズ」のメンバーの、ジョン・レノンさん、ポール・マッカートニーさん、ピート・ベストさんの3人と遭遇します。

「ビートルズ」はスチュアート・サトクリフの死をまだ知らなかった

実は、3人は、「ビートルズ」3度目の独ハンブルク巡業のため、前日にドイツに到着しており、この日は、風邪をひいて1日遅れでマネージャーのブライアン・エプスタインさんと一緒に到着予定の、ジョージ・ハリスンさんを迎えに来ていたのですが、

まだ、スチュアートさんの死を知らされていなかったジョンさんとポールさんは、アストリッドさんとクラウスさんを見つけると、奇声を上げ、ふざけながら駆け寄ったそうで、

ジョンさんは、

よく俺達がここにいるって分かったね。俺達3人は昨日来ていたんだよ。今日はジョージを迎えに来たんだ。みんなでここにいたらジョージのヤツ、きっと驚くぜ

と、言ったそうですが・・・

そこで、スチュアートさんがいないことに気づき、

アストリッド、スチュはどこなんだよ

と、尋ねると、その瞬間、アストリッドさんが泣き崩れたそうで、

クラウスさんからスチュアートさんの死を聞いたジョンさんは、あまりのショックに引きつった笑いが止まらなかったといいます。

アストリッド・キルヒャーはジョン・レノンの叱咤で立ち直っていた

そんな中、ジョージさんとミリーさんが一緒に到着するのですが、偶然二人は同じ飛行機で、飛行機の中でミリーさんからスチュアートさんの死を聞いたジョージさんは泣きじゃくり、ミリーさんもまた、すすり泣いていたそうで、

それを見たジョンさんは、スチュアートさんが死んでしまった今、アストリッドさんを立ち直らせることができるのは自分しかいないと、感情のすべてを押し殺し、

いいか、スチュはもう死んでこの世にはいないんだ。君は決めなくちゃいけない、スチュを追いかけて死ぬか、ここで立ち上がって生きていくのか。君には中間は許されない

アストリッド、誰も君を助けることはできないんだよ。もう自分の力で立ち上がるしかないんだ

と、アストリッドさんを、厳しく叱咤したそうです。

すると、アストリッドさんは、ジョンさんのこの言葉に正気を取り戻し、悲しいのは自分だけではないことに気づいたそうで、

後にアストリッドさんは、

私を救ってくれたのはジョンでした。彼はまるでハートがないようなふりをしましたが、彼の言ったひとことは、彼の心から出ていることを知っています

と、語っています。

(アストリッドさんによると、スチュアートさんの死で、悲しむアストリッドさんを優しくいたわってくれる人はいても、ジョンさんのように厳しく叱ってくれる人はほかに誰もいなかったそうです)

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スチュアート・サトクリフの死に「ビートルズ」は深い悲しみに陥っていた

ちなみに、4月13日に行われた「ビートルズ」のステージは、それは異様なものだったそうで、ジョンさんとポールさんは、奇声や大声を上げるほか、アンプやマイクスタンドを蹴り倒すなど、手がつけられないほど大はしゃぎしたといいます。

また、アストリッドさんは、同日、ジョンさんとジョージさんの写真を撮影しているのですが、二人の呆然とする姿を目の当たりし、メンバーの深い悲しみとスチュアートさんへの深い友情を知ったのだそうです。

(「ビートルズ」がレコードデビューを果たすのは、それから半年後の1962年10月のことです)

「スチュアート・サトクリフの死後アストリッドは写真家を辞めていた!」に続く


スチュアートさんの死の3日後の1962年4月13日、スチュアートさんのアトリエでアストリッド・キルヒャーさんによって撮影されたジョン・レノンさん(左)とジョージ・ハリスンさん(右)。

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