愛のコリーダ」(1976年)、「愛の亡霊」(1978年)と、いずれも性をテーマにした映画を発表すると、「愛の亡霊」が「第31回カンヌ国際映画祭」で、最優秀監督賞を受賞するなど、ヨーロッパを中心に高く評価された、大島渚(おおしま なぎさ)さんですが、次作は、打って変わり、政治色の濃い作品「日本の黒幕」を制作すると発表します。

「大島渚の「愛のコリーダ」裁判での「わいせつなぜ悪い」が大きな話題に!」からの続き

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武田泰淳の「わが子キリスト」の映画化や勝新太郎との企画は実現せず

愛の亡霊」が「カンヌ映画祭最優秀監督賞」を受賞し、名実ともに世界的な監督となった大島さんは、次作として、武田泰淳さん原作の小説「わが子キリスト」の映画化ほか、勝新太郎さんとの企画が浮上したそうですが、どれも実現には至らなかったそうです。


わが子キリスト

東映からの「日本の黒幕」の製作オファーを快諾

そんな中、1979年5月17日、大島さんが所用で京都を訪れた際、「東映」京都撮影所のプロデューサーの日下部五朗さんと佐藤雅夫さんに面会を求められたそうで、会って話を聞いてみると、

日下部さんたちからは、東映の秋の大作として、同年10月27日公開の映画「日本の黒幕」の監督をしないかと持ちかけられたそうで、大島さんは、これを快諾したそうです。

(日下部さんは、東映時代の監督作品「天草四郎時貞」で一緒に仕事をして以来、旧知の仲、佐藤さんも、脚本家の笠原和夫さんが「あゝ決戦航空隊」の監督に大島さんの起用を提案した際、唯一賛成してくれた東映のプロデューサーで(結局、監督は山下耕作さんとなったそうですが)、2人とも、気の合う仲間だったそうです)

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企画が面白く公開日が決まっていたことから「日本の黒幕」のオファーを受けるも・・・

実は、大島さんは、以前、東映から、「やくざ戦争 日本の首領」をオファーされ、断っていたそうですが、今回の「日本の黒幕」は、ロッキード事件をモデルに、フィクサーと少年テロリストが暗躍する姿を描いた企画で、「やくざ戦争 日本の首領」よりも面白く感じたほか、まだ、脚本が完成していないにもかかわらず、公開日が決定していることが、映画人としての大島さんを奮い立たせ、快諾したそうですが・・・

(大島さんが松竹に在籍していた時には、毎週新作が封切られていたことから、常に公開日に追われ、公開日に間に合わせるため、スタッフが走り回るようなバタバタの中で映画を作っていたそうですが、だからこそ躍動感が生まれ、公開日が決まっていて短期間で作らなければならないからこそ、会社が内容に干渉する余裕がなく、「日本の夜と霧」や「日本春歌考」などの異色映画を作ることもできたのだそうです)

「大島渚の幻の映画「日本の黒幕」に三上博史が売り込んでいた!」に続く

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