1958年には、小津安二郎監督作品「彼岸花」でコミカルな役を演じ、新境地を開拓した、山本富士子(やまもと ふじこ)さんですが、この作品では、小津監督から、余計な動きをしないことや自然体で演じることを学んだといいます。

「山本富士子が若い頃は小津安二郎監督の「彼岸花」にも出演していた!」からの続き

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映画「彼岸花」では小津安二郎監督から余計な動きをしないことを指導されていた

小津安二郎監督といえば、ローアングルのカメラワークが有名なのですが、「彼岸花」では、正座で端正な佇(たたず)まいを表現するシーンが多かったため、小津監督からは、身振り手振りなど余計な動きを一切しないよう指導があったそうで、

山本さん演じる幸子は特に明るくお茶目なキャラクターだったため、ついつい動きたくなってしまったそうですが、そこを抑え、抑制された中で、幸子のような役柄を演じることを学んだそうです。

小津安二郎監督からは「120%、100%でやろうとしなくていい」と指導されていた

そして、ある日の撮影の合間には、小津監督から、

120%、100%やろうとしなくていいんだよ

と、言われたそうで、

山本さんは、120%、100%でやりたいと思っていたため、初めは、小津監督の言葉の意味が分からなかったそうですが、その言葉の意味をよく考え、噛みしめてみると、役柄をしっかりつかんだうえで、自然体で演じることではないかと、自分なりに理解したのだそうです。

小津安二郎監督は構図へのこだわりが強かった

また、小津監督は、構図へのこだわりもとても強く、時にはカメラマンよりも長くカメラを覗いていたこともあったほか、本物志向で、スタジオに置く道具類も、さりげなく、良いものが置かれていたそうですが、

小津監督は、赤い色がとても好きだったそうで、「赤は命の色だから」と言い、「彼岸花」でも、主人公の平山家の居間に、いつもどこかに赤いケトルを置いていたそうです。

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映画「彼岸花」の撮影で印象に残っているシーンとは?

そんな「彼岸花」の撮影では、山本さん演じる佐々木幸子が、個性的な母親(浪花千栄子さん)との日常生活のやり取りなどを主人公の平山渉(佐分利信さん)に話すシーンがあったそうですが、

(幸子と母親は母一人子一人で、京都で旅館を営んでいる設定ながら、その生活ぶりは、劇中、あまり出てこなかったそうです)

山本さんは、台本にはないながら、幸子親子の生活に少し深みが出るのではないかと、明るい中にもほんの少しの葛藤と哀愁を漂わせようと工夫して演じたそうで、そのことがとても印象に残っているそうです。

「山本富士子が語る小津安二郎監督への想いとは?」に続く


「彼岸花」より。(左から)有馬稲子さん、山本さん、久我美子さん。

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