１９５９年には、映画「ギターを持った渡り鳥」で主演を務め、たちまちブレイクすると、以降、「渡り鳥シリーズ」や「旋風児シリーズ」で、映画スターとしての地位を不動のものにした、小林旭（こばやし あきら）さんですが、同期で４歳年上だった石原裕次郎さんからは、弟のように可愛がられたといいます。
「小林旭のデビューからの出演ドラマ映画を画像で！」からの続き
石原裕次郎は最初から映画スターだった
小林さんと石原裕次郎さんは、ともに、１９５６年にデビューされているのですが（いわゆる同期）、エキストラ経験を経て、「日活」に入社し、大部屋時代の３年間、先輩俳優や若手スタッフからすさまじいイジメを受けながらも、それに耐えて頭角を現し、１９５９年、映画「南国土佐を後にして」で、ようやくブレイクした小林さんに対し、
石原さんは、大学在学中に「東宝」のオーディションを受け、不合格になるも、兄・石原慎太郎さんの「芥川賞」受賞作品を映画化した「太陽の季節」でセンセーショナルなデビューを飾ると、同年、映画「狂った果実」で一躍スターダムにのし上がり、その後も、「俺は待ってるぜ」(1957)「嵐を呼ぶ男」(1957)と、次々とヒットを飛ばすなど、当初からスター街道を進んでいました。
（お二人は、「幕末太陽傳」(1957)「錆びたナイフ」(1958)で共演されているのですが、石原さんが、「幕末太陽傳」でメインキャスト、「錆びたナイフ」で主演だったのに対し、小林さんはいずれも脇役でした）
「錆びたナイフ」より。石原裕次郎さん（左）と小林さん（右）。
石原裕次郎は「スター」、小林旭は「大部屋上がりの子飼い」という扱い
そして、その後、小林さんが、「渡り鳥シリーズ」「流れ者シリーズ」「暴れん坊シリーズ」「旋風児シリーズ」などでヒットを連発し、「日活」の看板俳優となり、１９６０年と１９６１年には、興行成績、人気ともに、石原さんを超えるほどの活躍をするのですが、
それでも、カレンダーの１月を飾るのも、お正月に公開される映画も、常に石原さんだったほか、制作費も石原さんは別格、海外ロケも石原さんだけの特権だったうえ、
ギャラも石原さんの方が上（別格）だったことから、小林さんは、上層部にギャラの交渉を掛け合ったそうですが、
裕次郎はスターだけど旭は大部屋上がりの子飼いだ
と、どんなに人気が上がって、興行成績をあげようとも、小林さんはいつも二番手だったそうです。
「日活」が石原裕次郎を特別扱いした理由は？
ところで、なぜ、石原さんがそれほどまでに別格扱いだったかというと、石原さんの日本人離れしたプロポーションやナチュラルなオーラは、それまでの俳優にはないほど魅力的だったうえ、
（プロデューサーの水の江瀧子さんが、自宅に居候させるほどだったとか）
石原さんは、「日活」の猛プッシュで一躍スターに押し上げられて、赤字続きだった「日活」を、たった１人で黒字に転換したからだったそうですが、
小林さんも、
裕次郎のピークが過ぎた時期にたまたま子飼いの自分が稼ぎ出して、出がらしになるまで使っちゃえってさ
行き当たりばったりで作ったら結構いい結果を出しちゃった、みたいなのが俺の作品
と、自身の「日活」からの扱いを冷静に分析しつつ、
ある意味で俺も裕次郎のファンだったのかもしれない
とも語っておられ、石原さんはやはり魅力的だったようです。
石原裕次郎から弟のように可愛がられていた
ちなみに、当の石原さんは、（石原さんの方が小林さんより４歳年上だったこともあり）小林さんを（ライバルではなく）かわいい弟分として、よく一緒に飲みに連れて行っていたほか、
その後、お二人が、「日活」の二枚看板スターになり、スタッフが気を遣って、「裕次郎一家」と「渡り鳥一家」に分かれて、旅行や宴会など、鉢合わせにならないようにしている中でも、偶然、お二人が出会えば、「よう」と言って、一緒に遊びに行くほど、良い関係を築かれていたようです。
豪快過ぎるエピソード
それでは最後に、「日活」の二枚看板スター・小林さんと石原さんの豪快過ぎるエピソードをご紹介しましょう。
- 「日活」が熱海で新年会を開くにあたり、石原組は「海」、小林組は「山」で開かれたそうですが、予算が足りなくなり、「日活」本社に電話すると、アタッシュケースで現金が補給され、遊び続けたとか。
- 小林さんと石原さんは、いい車を買うと、「どっちが速いか」という話になり、銀座の公道でレースすることになったそうですが、なんと、警察官が交通整理をするなど協力してくれたそうで、銀座中のホステスが応援に出てきていたとか。
- 撮影の空き時間、突然、石原さんが「京都に行こう」と言いだし、小林さんの運転で京都へ行くと、京都では、萬屋錦之介さんや勝新太郎さんらと合流して芸者総揚げで遊んだそうで、乗ってきた車は市中に乗り捨てて、新幹線で帰京。乗り捨てられた車は、翌日、映画会社の人が東京から取りに行ったとか。
などなど、今では考えられないことばかりで、年配の元スターが「昔は良かった」というのも分かりますね。
「小林旭は｢仁義なき戦い｣で主演を務めるはずだった！」に続く
石原裕次郎さん（左）と小林さん（右）。
