1963年、黒澤明監督作品「天国と地獄」で、金網につかまり泣き叫ぶ誘拐犯役をアドリブで演じると、エキストラにまでダメ出しするほど細部に渡って演技指導する黒澤監督に絶賛され、一躍脚光を浴びた、山崎努(やまざき つとむ)さんは、その後も、強烈なキャラクターで存在感を放ち続けます。
「山崎努の若い頃は「天国と地獄」で黒澤明監督にラストを変更させていた!」からの続き
「天国と地獄」の演技で仕事が殺到するも充電期間
1963年、黒澤明監督作品「天国と地獄」の犯人役で一躍脚光を浴びた山崎さんは、仕事が殺到したそうですが、
なんと、当の山崎さんはというと、
この世界、一発当たると仕事がわんさかくるんです。でも、売れた原因は僕の実力じゃない。黒澤監督がうまく撮ってくれたからで、僕の芝居は“からっ下手”。
僕自身にはなんの力もないんで、と全部の仕事を断ったんです。充電期間にしよう、とね。とはいえ、食うための最低の仕事はしたんですがね
と、しばらく仕事をセーブされていたそうです。
「必殺仕置人」の「念仏の鉄」役で人気を博す
そんなマイペースな山崎さんですが、テレビドラマにも、
松本清張シリーズ「顔」(1966年)
「幻の女」(1966年)
NHK大河ドラマ「三姉妹」(1967年)
「われら弁護士」(1968年)
「赤西蠣太」(1968年)
「写楽はどこへ行った」(1968年)
と出演されると、
1973年には、「必殺仕置人」で演じた「念仏の鉄」役が、主人公の中村主水(藤田まことさん)、棺桶の錠(沖雅也さん)と並び、たちまち人気を博し、
山崎さん本人も、
当時は「必殺仕置人」の撮影で、京都まで週に3日くらい通ってたのかな。あのとき僕が演じた“念仏の鉄”が評判よくて、人気あるんだよ。実は今でも鉄はパチンコのキャラクターになったり(笑)
と、語っておられます。
「必殺仕置人」より。(左から)山崎さん、沖雅也さん、藤田まことさん
「新・必殺仕置人」では当初「念仏の鉄」役を拒んでいた
そして、1977年には、「新・必殺仕置人」で再び「念仏の鉄」を演じられているのですが、実は、当初、山崎さんは、
同じ役は演じたくない
と、拒み、スタッフの必死の説得でやむなく出演していたそうで、
後に山崎さんは、
「仕置人」の撮影自体は楽しかったんだけどね。同じ役と付き合っていくのが苦手で、飽きちゃうんですよ。だから途中で足を引きずってみたり、髪型変えたりしてね、キャラクターをいろいろ変えて、退屈を紛らわせてたんです(笑)。
でも今も、事あるごとに鉄の名前を挙げていただくんですよ。いろいろ映像の仕事やってきたけど、みなさんからそこまでおっしゃっていただくと、念仏の鉄が僕の演じた役の中で、代表作なんじゃないかなって。何かそう思えてきちゃいますよね
と、明かされています。
「八つ墓村」では殺人鬼の役で強烈な存在感
また、1977年には、金田一耕助シリーズである、映画「八つ墓村」で、日本刀と猟銃を手に、次々と村人を惨殺していく殺人鬼・多治見要蔵役を演じられると、その怪演ぶりが話題となり、映画も大ヒットを記録。
劇中、山崎さんは、頭に2本の懐中電灯を鬼の角のように巻きつけて着物の裾を乱しながら猛スピードで走り、村人を殺害して回るのですが、ミステリーの枠を超えた、強烈なキャラクターを演じ存在感を示したのでした。
「八つ墓村」より。